2010年3月25日(木)
――商品となる『黒マー油とんこつラーメン』ですが、前回の『濃厚豚骨ラーメン』に黒マー油を加えていますね。どういった経緯でこのラーメンが生まれたのですか?
※黒マー油……ニンニクを炒めた油で作るマー油に対して、より強くローストすることで香ばしさと深みが増した黒い色調が濃い油。熊本ラーメンに多く見られる。
植田:夜の街・神室町に店を構えるとしたら、“大人”、“精力的”というイメージが浮かぶのでは、と考えました。そして、九州一番星は豚骨ラーメンの店。この店には「頑なに九州の味を守り続ける」という設定があるんですけれども、そこで学んだ弟子が自分のオリジナリティを加えて作るラーメンであれば「黒マー油を足すことで、神室町のイメージとオリジナリティを出せるのでは?」と思いつきました。
――マー油を使う際に意識したことは何ですか?
中野:前回のスープをベースに、そこに黒マー油をあわせるところから企画が始まったんですが、やはりあわせるだけではおいしさはうまくマッチしないんですね。ただ、他のカップめんとの違いも出しつつ、『龍が如く4』でキーワードになっている“力強さ”や“絆”を、この黒マー油で表現したかった。そこで、前のスープのおいしさを生かしつつ、黒マー油とあわせた時に、もっとおいしさが引き立つようなバランスを意識しました。
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▲商品に入れるマー油の量を調整する作業。コンセプトを話しあった後は、そこに向かって調整する日々が続いたとか。 |
――具体的には?
中野:マー油自体は深みや香りをプラスしますが、量を増やしすぎると苦味やえぐみにつながってしまう。すると豚骨スープのおいしさが阻害されてしまう。だから、その相反するところに表現しようと思って、通常の黒マー油だけでなく、油の甘さ、うまさをうまくあわせて、黒マー油を増やしつつ、豚骨スープとマッチングするところのバランスを意識して設計しました。調合に時間をかけていますし、作品のイメージを意識して量を増やしています。
植田:ゲーム中では、九州一番星の大将が納得する味じゃないと認めてもらえないので、もととなる個性を生かしつつ、自分のオリジナルをどこまで出すかというバランス。そこには苦労しましたね。
中野:キーワードは聞いていたので、大将と弟子の師弟関係を意識しながら、スープとマー油の調合を行いました。
――ゲーム中のキャラクター・松山が苦労しているところを、現実で植田さんと中野さんが考えて、商品化している感じですね。
中野:私が松山になったつもりで作りこみました。単に作品をイメージした商品にするのではなく、おいしさが止まらない商品にする。それとゲームのファン、カップめんのファン、エースコックのファン、皆さんの気持ちを満たせるような落としどころを見つけるところ、そして自分の中で納得できる味にするところは苦労しました。
植田:ご当店カップめんをリリースする時は、企画担当の私とスープ担当の中野が一緒にお店に行き、交渉したり味の監修をしたりしてもらうんです。やり取りの中では「こんなんでは、うちの看板は出せない」というのが本当に起こりますので、そこを頭の中で浮かべながら、セガさんとエースコック、そして九州一番星の大将を納得させるために真剣に議論して、作り上げていきました。
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▲カップめんを作る中野さん。おいしいカップめんを作るポイントは、沸騰したお湯を使うこと、スープをしっかり入れてムラなく溶かすことだそう。ハシを使い、液体スープをしっかり出している。なお、写真の『黒マー油とんこつラーメン』は試作品。 |
――前回は、セガさんにアンケートを実施したということですが、今回も行ったのでしょうか?
植田:試作品ができあがり次第、セガさんに監修を受けながら作っていったのは前回同様です。最終的には私と中野が自信を持てる味になった時に、直接セガさんの方に持っていきまして、菊池プロデューサーとスタッフの方に食べていただきました。満場一致で「この味だ!」とご返答いただき、この味に決まりました。
――途中ではどんな意見がありましたか?
植田:前回もそうだったんですが、他のカップめんをよく知っている方が多いので、厳しい意見は多々ありました。「めんがイマイチですね」とか「具が少なくないですか?」などの意見から、「コクはあるけど、のどに残る」というのが出たと思えば、次の時には「今度はスープが薄い」など、細かな指摘まで(笑)。
松山:ヘビーユーザー視点で、かなり的確なんですよ。我々の中でも疑問に感じていたところをズバリ指摘していただくと「やはりそうか」という確認ができました。
――価格の231円(税込)は、どうやって決まったのでしょうか?
植田:この大きさの形は、少し高いタイプになるんですよ。このタイプだと200円から300円に近いものがある。250円を超えてしまうと、いかに魅力的な商品にしても手を出しにくくなってしまう。より多くの方に届けたかったので、この値段にしています。
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▲今回のインタビュー時に、改めて試食する3人。何度も食べているそうだが、やはりおいしかったようで思わず笑みがこぼれていた。 |
――今後取り組んでみたいことは?
植田:ゲームとの取り組みでいえば、架空のものを商品としてお届けしているので、ユーザーさんから見て利点のある商品を売っていけたらと考えています。たとえば、ゲーム中に出てくる味が店頭で買えて、食べられる。食べた後で、もう一度ゲームの方に反映されるような仕組みがあってもいいのかなと思います。
松山:宣伝の立場からすると、『龍が如く』はプロモーションが秀逸ですごいと思います。バーチャルなんですが、リアリティがあるじゃないですか? もしやれるとしたら、バーチャルが現実になるような企画をやってみたいですね。期間限定で体験型の神室町が出現するとか。もちろんハードルはかなり高いとは思いますが、新しい仕組みになりますし、夢があるじゃないですか!
中野:こだわってしまう性格の私に、存分にこだわれるテーマをいただいたので、やりがいを感じて満足しています。ファンの気持ち、ゲームを作られるスタッフの思い入れを満たした形で商品を作れたのは刺激的でした。自分のこだわりが発揮できるようなこういう企画には、また挑戦してみたいです。
――発売を楽しみにしていた人へメッセージをお願いします。
植田:大の男たちが熱く議論して取り組んだ商品になっています。この一杯にかける思いは、『龍が如く』の開発スタッフの方々にも負けないと思います。ぜひ、前回の『濃厚豚骨ラーメン』を食べられた方もそうでない方も、『龍が如く4』をプレイされた方もされてない方も、ぜひ皆さんに召し上がっていただきたいです。
松山:少しおこがましいかもしれませんが、『龍が如く4』やカップめんを通して、そこに込められた思いや背景を読み取ってもらい、自分のやりたいことをみつけて進んでもらいたいです。日本男児よ、立ち上がれ!と(笑)。
中野:このサイドストーリーにある大将と松山の関係、互いにぶつかるがそこには絆(きずな)がある――という背景は、カップめんを開発した我々スタッフの間にも重なるものを感じます。召し上がる際には、頭の隅に少しでも置いていただき、味を楽しんでいただけたら幸いです。
植田:中野なんですが、スープ開発チームの中でも屈指の肉体を持っていますし、どことなく桐生一馬に似ているんですよ。合気道をやっていて、腕っぷしも強い。なので、桐生と植田と松山というゲームの中の3人が、エースコック社内でも熱いドラマを繰り広げていました。
松山:どこが似てるねん(笑)。……そんな男たちがかかわった『黒マー油とんこつラーメン』。ぜひ店頭でお手にとって、ご賞味ください!
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▲開発スタッフのさまざまな思いのつまった『九州一番星 濃厚黒マー油とんこつラーメン』を持つ3人。全国のコンビニエンスストア、ならびにスーパーマーケットなどで発売されている。 |
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