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2010年6月4日(金)

【CBT最速レポ第35回】『M2~神甲綺譚~』CBTプレイレポート

文:電撃オンライン

 始まりがあれば終りが訪れるのは世の常で、それはゲームの世界においても同様のことだ……。と、いきなりヘビーな話題から始まったが、今回レポートする『M2~神甲綺譚~』は一度サービス終了を迎えた『M2~神甲演義~(以下、前作)』が、プレイヤー主導の署名活動により復活した作品である。プレイヤーの要望からオンラインゲームが復活するケースは、SeedCの『アッピーオンライン2』などいくつか過去の事例があるものの、やはり稀有なタイトルと言える。

 そういった意味で前作のプレイヤーはもとより、オンラインゲームのファンとしても見逃せないタイトルになりそうだ。帰って来た『M2』の魅力とは!? いつものように5つのキーワードに沿って紹介していくことにしよう。

袋こ~じの気になるキーワード5段階評価 ※★…1点、☆…0.5点
ごった煮の世界観 ★★★☆
ゲームの安定度 ★★★
キャラの可愛さ ★★☆
プレイヤー層の幅広さ ★★★☆
運営のやる気度 ★★★★


『M2~神甲綺譚~』 『M2~神甲綺譚~』 『M2~神甲綺譚~』

■この星は狙われている!? 古代中国風世界+ファンタジー+SF=『M2』

 『M2』はもともと台湾産まれのMMORPG。そのため、世界観のベースになっているのが、日本人にはなじみの薄い『山海経』と呼ばれる中国最古の地理書なのだ。神々や妖怪が登場する、どちらかというと伝奇的な側面を持つ書物のようだが。そんな山海経に登場する妖怪・魔物たちが跳梁跋扈するゲームの舞台、中原大陸には、韓・趙・魏の3つの国があり、世はまさに戦国時代か! ……と思わせておいて、『M2』のメインストーリーは国取り合戦ではなく、大陸の住人たちにとって共通の敵となる“花星人族”と呼ばれる未知の種族(異星人?)との戦いにある。

 住人は、花星人からの侵略に対抗すべく“神甲兵”と呼ばれる人型のロボット兵器を開発。プレイヤーもまた、神甲兵を操って花星人たちのロボット軍団と戦うことに……って。え、ロボット? ちょっと唐突過ぎない? と感じたアナタ。大丈夫、筆者もあまりの荒唐無稽さに驚いたクチだ。ともあれ、古代中国の世界には妖怪や法術と同時に、ロボットテクノロジーまでもが存在。それらが三位一体となって入り乱れるという、アニメやラノベのメインディッシュだけを並べたような贅沢な世界観を『M2』は持っている。

 余談ではあるが、ファンタジー+ロボットというノリに筆者は、なんとなく往年の名作テーブルトークRPG『ワー〇ブレイド』を思い出してしまった。どこかオンラインゲーム化してくれないものだろうか。

『M2~神甲綺譚~』 『M2~神甲綺譚~』 『M2~神甲綺譚~』
『M2~神甲綺譚~』 『M2~神甲綺譚~』 『M2~神甲綺譚~』
▲背景も基本的には中国風。その中に立つデフォルメキャラとリアルロボットという取り合わせは、ある意味シュールな絵面にも感じる。

■アルファテストながら、すでに完成の域に達しているゲームシステム

 次に『M2』の基本的なゲームシステムを紹介しよう。キャラクターは3頭身の3Dグラフィック。戦闘はフィールドでモンスターを指定してクリックし、あとはオートアタック。スキルやアイテムを使うときに適宜クリックやキーボードを押すという形だ。このあたりは前作の時点で完成されていたシステムで、サービスが提供されていた2004年の頃には、MMORPGとしてもっともスタンダードなスタイルだったはずだ。

 プレイヤーが選べる職業には、近接職、法術職、生産職の3系統があり、スタート時点では平民(基本職)だが、レベル10になると各系統の基本職である門下生(近接)、求仙者(法術)、学徒(生産)に就ける。また、レベル30になればさらに特化した中級職への転職も可能。その先にも上位ランクの職業は存在するらしいが、アルファテストはレベルキャップが40ゆえに未実装となっていた。

 今回のアルファテスト期間中は、サーバーが終日オープンしていたことや、前作の経験者でレベル上げのノウハウを持ったプレイヤーも多かったらしく、短いテスト期間ながら中級職に転職しているキャラクターも数多く見られた。筆者は近接職である門下生のコースを選択したので、プレイの感想とあわせて各職の解説をしておこう。

『M2~神甲綺譚~』 『M2~神甲綺譚~』

●門下生(近接)

 各種武器を使って物理攻撃を行う。攻撃間隔が早いスタンダードな剣(短剣・長剣)、威力が高めだが攻撃間隔が遅めの槌、遠距離攻撃が可能な弓の3系統が確認できた。なかでも弓が強く、うまく立ち回れば上位の敵とも安全に戦える。ただし、矢と弾を消費するので、まったくの初心者にはお金の面で負担が大きいかもしれない。技能には、防御力や攻撃力が上昇するパッシブ系を始めとして連続攻撃をする乱打、敵を引き付ける嘲笑など、攻撃役にも盾役にもスイッチできるオールラウンドな職業だろう。

『M2~神甲綺譚~』 『M2~神甲綺譚~』
▲とにかく弓の使い勝手がよすぎた。飛距離内であれば、高低差無視で攻撃できるため、段差を利用すれば格上相手もノーダメージで狩れる。

●求仙者(法術)

『M2~神甲綺譚~』

 火土風水金の5属性の攻撃の法術と、他プレイヤーのHPを回復できる祈祷などの技能が扱える。5属性には互いに三すくみと同様の関係があり、敵の弱点を付けばより大きなダメージを与えられる。ただ、法術はMPを消費するので、長時間の戦闘や連戦は厳しいかもしれない。法術による攻撃は、神甲兵に搭乗した状態でも使用できる。

●学徒(生産)

『M2~神甲綺譚~』

 戦闘はあまり得意ではないが、NPCからの買い物や修理を安くあげたり、回復、修復アイテムなどを作れる職業。育て方によっては、より高度なアイテムの作成、さらには神甲兵のエキスパート、優秀なパイロット兼整備士として活躍の場は出てくるはず。また、アルファテストの時点では、武器や防具を修理できるのが生産系の職業のみだったため、街でプレイヤーが修理屋を営むなど、ロールプレイとしてものすごく微笑ましい光景が見られた。

 平民から一度転職してしまうと、別系統への転職はできない。今後のサービスでどうなるかは分からないが、キャラクタースロットが3つあるのは、”それぞれの系統でキャラクターを作ってお楽しみ下さい”ということなのだろう。

 各職業は一定レベルに達すると新技能を覚えられる状態になり、戦闘によって得られるAPを消費して習得できる。技能によってはレベルが数段階あり、そのレベルアップにもすべてAPが必要だ。アルファテスト序盤のバランスでは、レベル上げのための狩りをするだけで潤沢にAPが得られたため、レベルは上がったけれど技能が覚えられないという状況は発生しなかった。また、一度習得しても不必要になった技能は忘れることでAPを取り戻せる。高レベルになると技能の取捨選択で、プレイヤーの個性が出てくるかもしれない。他にも、レベルアップ時にキャラクターのステータス(力/体力/敏捷/器用/知力/知性)にボーナスポイントを割り振れるが、こちらは基本的に一度限りで、やり直しはきかない。

『M2~神甲綺譚~』 『M2~神甲綺譚~』
▲チュートリアル終了時に所属国を決めるが、公式的には魏なら門下生、韓なら求仙者、趙なら学徒と目指す職業でオススメの国を教えてくれた。▲装備すると特定の技能が使えるようになる武器もある。近接職が、物理攻撃が効きにくい敵と戦うときなどに便利かも?

 職業とは別に『M2』でもう一つ特徴的なのが、上でもチラリと登場した“神甲兵”のシステムだ。神甲兵はプレイヤーが搭乗できるロボットのような外見をしたもので、フィールドの一部が搭乗可能エリアとなっている。もちろん、神甲兵に乗ったまま移動や戦闘もできるし、花星人側の神甲兵も出現する。通常モードと搭乗モードの切り替えはワンボタンででき、ロボットアニメのようなベタベタな演出が(誉めてます)。

 神甲兵には専用のスキルに加えて、一部の通常モードのスキルも使える。ただし、神甲兵のHPとEP(MPのようなもの)は自然回復しない。修理や補給は専用のアイテムを使うか、各街にある工房で行う。神甲兵が使用できる技能は、武器の種類に依存しており、武器の切り替えも、この工房でしかできない。

 実は戦闘時に得られる経験値はその時プレイしているモードにしか入らない。感覚的には通常キャラと、神甲兵の2キャラクターを育てているようで、少々めんどくさいなあと思っていたのだが、新生『M2』から導入された要素として、クエストクリアで得られる経験値はキャラクター&神甲兵の両方に入ることが判明。同じ様に感じているプレイヤーは多かったのだろう。

『M2~神甲綺譚~』 『M2~神甲綺譚~』
▲神甲兵のデザインは、なかなか秀逸。普通にカッコイイ機体なので、メカ好きの食指は動くかもしれない。
『M2~神甲綺譚~』 『M2~神甲綺譚~』
▲レベルアップ時には、通常モードと同じようにHPとEPが全快。うれしいけれど、設定的にそれはどうなんだろうか(苦笑)。
『M2~神甲綺譚~』
▲グラフィックが美しく、数々の斬新なシステムを組みめばゲームが必ずおもしろくなるわけではない。オンラインゲームの原点『UO』も基本部分は1997年から変わってはいない。安定したシステムも、ウリの一つにはなると思うが……。

 とにかく『M2』は細かく説明するとキリがないほど、ゲームとしての完成度は非常に高い。これに関しては、すでに一度正式サービスを迎えている作品であるから当たり前といえば当たり前の話。クライアント自体は、オリジナルの中国語版を新要素を交えて再構築しているようなので、不安定で落ちやすかったり、文章のローカライズが追いついてない部分もあるが、これはアルファテストということで許容範囲内だ。

 さて……問題は、やはり前作がそもそも2004年と6年も前の作品だということだ。重ねて言うが、筆者個人としては良くできた作品だと思うし、未実装な部分が多いα版でも感覚的にプレイできるテンポの良い戦闘などは正直楽しく感じられた。ただ、PCの標準スペックは1年単位でアップし、オンラインゲームの主流も刻一刻と変化していく中で、前作のプレイヤーではない新規ユーザーを獲得するには、やはり古臭さが障害になってしまうと感じた。ビジネス的に考えれば、既存プレイヤーだけが帰ってきてくれればいい、というわけでもないだろうし、少し厳しい意見になるが、このあたりをうまく消化して昇華していかないと、現在のオンラインゲーム市場を生き抜くのは難しいかもしれない。

■ほどよくディフォルメされたキャラクターたち

 神甲兵以外のキャラクターは、敵味方含めてデフォルメされた姿だ。イメージイラストも、日本市場を意識したようなキャラクターで“萌え”にはちょっとうるさい筆者も、普通にカワイイと思う。実際のゲーム内キャラクターは、微妙に日本人のセンスとはずれている気もするが……。

 また、これは完全に好みの問題になってしまうのだが、古代中国風のエッセンスがバリバリのコスチュームは、筆者には今イチだった。世界観を壊すほど何でもアリ! にする必要はないが、もう少しデザインに幅が欲しい。コスチュームは全体的に派手で奇抜なものが多く、防具用の塗料なども店で売られていたので、オリジナルのコーディネイトなども作りやすそう。その意味では、非常にアバター性が高い作品だ。

 新生『M2』からの要素として、防具とは異なるオシャレ装備スロットが追加された。アルファテスト中に発見できなかったが(正確には、どれがオシャレ装備なのかの判別が不能だった)、カワイイorカッコイイ格好をするか性能を取るかという、MMORPGに付き物の悩みが解消される点はうれしい。また、前作には家を持つなどの要素もあったようなので、今後は自慢のマイハウス作りなどの面でもプレイヤーの個性が出せていけそうだ。

『M2~神甲綺譚~』 『M2~神甲綺譚~』
▲蛍光色が多くフィーチャーされた装備が多く、デザインも派手なものが多い。好みは分かれるところかもしれないが、この解像度のキャラクターとしてはそれぞれの装備の違いが分かるほどの描き分けは素直にスゴイと思う。
『M2~神甲綺譚~』
▲モンスターも、基本はカワイイ系が多め? なんとなく、マスコットキャラクター的な扱いをされてるように感じる”たまうさ”。うん、カワイイ。と、和んでいたら超巨大な”たまうさ”に遭遇! あ、いや、やっぱりカワイイ。

■ライトなノリと思わせて、ディープにハマれる要素も完備!

『M2~神甲綺譚~』
▲前作プレイヤーからの支持の高さが、そのまま継続して遊びたいと思わせるゲームであったことの、何よりの証拠になっているはず。

 その見た目からも、ライトなノリを前面に押し出している『M2』。実際、特に難しいプレイヤースキルを要求されることもなく、なんとなく遊べる敷居の低さはライトゲーマーには嬉しいポイントだ。異星人に攻め込まれた世界という設定のわりには、それほど悲壮感や絶望感が漂うこともなく、敵がカワイイせいもあるが全体的なムードもほのぼのしている。女性のMMORPGプレイヤー層も増えてきている昨今、女性を意識した作りなのは間違いないだろう。

 では、『M2』が手軽な代わりに底の浅いゲームなのかというと、それは違うようだ。あくまで前作の話だが、先述の通り上位職への転職が4段階用意されていたり、強力なボスモンスターが出現したりなど、やりこみ派プレイヤーの冒険心をくすぐる要素も数多く用意されていた。アルファテストでも、前作のプレイヤーらしい人たちが「ネームド(ボス)モンスターがいない……」などと残念そうに会話をしているところを見かけたりもした。まぁ、何かと前作に比べてしまう気持ちはわからないでもないが、アルファテストの状況では少々気の早すぎる話だろう。『M2』の復活を待ち望んでいた経験者も、「前はこーだった、あーだった」と言うよりは、新規プレイヤーとともにこれからの『M2』の世界を楽しんでほしい。

■偉大なる第一歩は踏み出せた! あとは運営側のがんばり次第

 アルファテスト初日にログインして一番最初に感じたのは、同窓会的なムードだ。残念ながら筆者は『神甲綺譚』からスタートした新規組ではあるが、そこかしこで交わされる「久しぶり!」という復帰組たちの挨拶を、正直うらやましいと思いながらプレイしていた。オンラインゲームの楽しさの一つは他プレイヤーとの交流にあり、復帰組は過去に直接の知り合いではなくても、かつて同じゲームをプレイしていたというだけで深い絆で結ばれているのだ。一度終了したオンラインゲームが復活するというのは、言葉で言うほど簡単なことではないだけに、再開の喜びもひとしおであっただろう。

 と、同時にそんなファン全員からかかる期待に対して、運営元であるSankandoはよくがんばっていたなと思う。テスト初日の5月21日は、サーバー機器のメンテナンスに手間取り、実質テストの開始が1日ズレこむこととなった。しかし公式サイト上で、1時間ごとに進捗状況の報告がなされていた。過去に色々なベータテストに参加している筆者は、初日の混乱というものは、オンラインゲームの風物詩とすら思っているが、そんなときプレイヤーが欲しいのは「ダメならダメ」という、最新の情報なのだ。しかし、多くのオンラインゲームでキチンと情報開示をしてくれるケースは残念ながら少ない。この辺は、ユーザー手動で動き出したプロジェクトだけのことはあって、視点がユーザーに近いなと感じた。また、不具合にはすぐメンテナンスで対応するなど素早い対応をしてくれた点は、きちんと評価したい。

 無事(?)にアルファテストも終り、この技能はこうしてほしい! 正式サービスはいつなのか!? 日本語化をカンペキにしてほしい! ……など、Sankandoのところにはすでに色々な意見・要望が集まっているだろう。アルファ版の段階でも、先に紹介したファッション装備などのように、ユーザーインターフェイスを見やすく、使いやすく改良していたり、毎日変わるシステムイベントを実装したりなど前作のクライアントプログラムから大きく改良がされていた。また、パーティを組むと経験値ボーナスがもらえたり、職業間のバランス調整などもなされていたようである。だが、プレイヤーとはワガママなもの。こちらのインタビュー記事でもお伝えしている通り、現在『M2』は開発も国内で行っているため、正式サービスに向けてプレイヤーのニーズを的確に汲み取り、しかも迅速に対応できるかどうかが今後の注目点となるだろう。

 Sankandoの戦いはまだまだ始まったばかりである……と熱血系のマンガ風のシメの言葉を残して、今回のレポートを終わりたいと思う。

『M2~神甲綺譚~』 『M2~神甲綺譚~』 『M2~神甲綺譚~』
▲前作を未プレイなので比較できないのが残念だが、インタフェース分かりにくいということはあまり感じなかった。▲1つ不満があるとすれば、場所指定クリックで移動する際、間違えて格上の敵をクリックして殴りかかってしまう(そして負ける)ことが非常に多かった。▲最終日の風景。支えてくれる人たちがいる、だからこそおもしろいゲームを作る、だからこそ遊びたくなる……そんなプラス方向のスパイラルに期待していきたい。
【袋こ~じ/ライター】
 某シリーズ作品の最新作をプレイするのに忙しくて、しばし音信不通となっていた袋こ~じ氏。あちら側の世界に行ったまま、帰ってこないのではと心配するので、担当編集としてはたまに連絡がほしかったりする。

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データ

▼『M2~神甲綺譚~』
■運営:Sankando
■対応機種:PC
■ジャンル:RPG(オンライン専用)
■サービス開始日:未定
■プレイ料金:無料(アイテム課金)

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