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2010年6月8日(火)

【洋鯨亭 第14回】洋ゲーの日本語ローカライズ、忠実な翻訳もいいけれど……

文:電撃オンライン

【洋鯨亭 第14回】洋ゲーの日本語ローカライズ、忠実な翻訳もいいけれど……

 こんにちは。マイペース洋ゲー紹介所“洋鯨亭”亭主のRonです。

 映画館で観た洋画がDVDやBlu-rayで発売される時、日本語の吹き替えを誰が担当しているのかって、気になりますよね? 「あぁ、この声優さんで、こんな雰囲気の主人公にしたんだ」とか、「この俳優さんの声は意外と合うなぁ」とか、いろいろな発見があります。

 一方で、DVDやBlu-rayでも“英語音声・日本語字幕”で観るという方もいるでしょう。私はこのタイプなんです。別に日本の声優や俳優が嫌いなのではなくて、まずは原作に近い状態で楽しみたいと思っているからなんですよね。

 ローカライズされた洋ゲーでも、オプションで英語音声・日本語字幕が遊べるものは、あえてこの状態で遊ぶことが多いです。

 連載第7回の読者様の投稿に対するコメント部分でも触れましたけど、やっぱり字幕を読みながら洋画の物語を追うような楽しみ方が好きなんですね。これは単なる好みなので、日本語音声と字幕のどちらがいいかというようなことではありません。個人的には字幕のオン・オフと、日本語・英語がオプションで自由に選べると2回楽しめていいなぁと思っています。

■初心者を意識した場合やゲーム内容によっては、日本語化がベスト?

 日本でも大ヒットしたミリタリーFPS『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア2』の日本語版には、英語音声がありません(日本語音声に、日本語字幕のオン・オフが選べました)。

 このタイトルが日本で発売されると決まった際、海外版の販売元・アクティビジョン・ブリザード側からスクウェア・エニックス側に、日本語音声を入れたいと要望があったそうです。

 これは、FPS初心者に向けて間口を広げる狙いがあったかと思われます。発売前から話題になっていたタイトルですし、CEROのD区分(17歳以上推奨)に属するゲームですから、高校生もプレイする可能性が十分にあります。そういった背景を考えると、英語+日本語字幕よりは、日本語ですべて語られるほうがわかりやすいことは間違いありません。

 日本語音声のみにしたのには、もう1つ狙いがあようです。それは、ゲーム中に飛び交う戦場での指示を音声で確認してもらうためです。FPSは、常に周囲を警戒しながら進めるゲーム。もし画面の下なり右なりに字幕による指示が出た場合、視線が一度そちらに外れることになります。これを嫌って音声で状況を把握してもらえるようにした、というわけですね。

 FPSをプレイし慣れた人には、字幕は視界の隅あたりでチラリと見ればいいと言われてしまうかもしれません。実際そうすることは可能です(私もそうしています)。ただ、FPSに不慣れな初心者の方、あるいは前作(『コール オブ デューティー4 モダン・ウォーフェア』)ぐらいしかやったことがないという人のことを考えれば、日本語音声以上のローカライズはないわけですね。

 日本語で理解できるということは、洋画を吹き替え版で放送する金曜ロードショーや日曜洋画劇場を観るような間口の広さがあります。ゲーム自体がおもしろかったことはもちろんですが、日本でヒットした理由の1つは、このローカライズにあったのかもしれません。

■たまにはこんなローカライズも見てみたい

 字幕であれ音声であれ、ローカライズとは原作のセリフやテキストを忠実に(あるいは意訳を含んで)日本語化することです。したがって、英語版・日本語版で物語が大きく変わったり、登場キャラクターのセリフのほとんどが大きく変わったりといったことはありません。変わったとしても、セリフの一部が意訳の過程で変化するとか、表現を日本向けにするとか、バイオレンス表現をマイルドにするとか、そんな程度でしょう。

 ところが、こういった小さな変更ではなくリメイクに近い大規模なローカライズを行ったタイトルがあったんです。それは、PS2で発売された洋ゲーアクションアドベンチャー『デストロイ オール ヒューマンズ!』。海外版はTHQが販売しましたが(2009年に廉価版がTHQジャパンより発売)、日本ではローカライズ・販売ともにセガが行いました。そしてこの作品は、セガにしか作れない素晴らしいバカゲーだったのです(本気でほめております)。

 原作はエイリアンが人間を虐殺しまくるバイオレンスゲームです。このままでは日本で発売できないばかりか、内容的に日本では受けないと判断したセガのスタッフは、SF作家の山本弘さんを脚本・監修に起用。バイオレンスをギャグとして成立させるために、セリフやシナリオにギャグとSFとアニメと特撮ネタをふんだんに盛り込み、強烈な濃度のおバカゲーに仕上げてしまいました(重ねて申しますが、本気でほめております)。

 主人公の火星人“クリプト137”の関西弁による楽しい会話、SFやアニメのパロディになっている各話のタイトル名、声優の配役を生かしたギャグなど、本作はとにかく見どころが満載です。洋ゲーのローカライズというよりも日本で作られた新作と言ってもいいほどの変更っぷりで、ここまで印象を変えた洋ゲーは珍しいです。

 その辺の詳細については山本弘さんのホームページ内で解説されていますので、ぜひご覧ください(山本弘さんの公式サイト:山本弘のSF秘密基地)

■『デストロイ オール ヒューマンズ!』のゲーム内容を、ちょっと見てみましょう

 それでは、『デストロイ オール ヒューマンズ!』がどんなゲームなのか、ステージ2“人間標本5、6人”を例に紹介しましょう。このステージでは、母船である大型UFOにいる指令役のポックス博士(火星人)から、主人公のクリプト137(火星人)にこんな指令が出されます。関西弁で。

ポックス博士「ロックウェルちゅう、ちょっとはにぎやかな町や。前の方で光っとるの、あれ、祭ちゃうか? 祭なら人間もぎょうさん集まっとるはずや。人間のこともっと調べにゃあかん。祭に忍び込んで人間1人捕まえてきてや」

 ステージ2の舞台・ロックウェルの町は、お祭の真っ最中。出店があったりミスコンテストが行われていたりと、会場はかなりにぎわっている様子です。そこに潜入して人間のことを調べつつ、誰でもいいからサンプルを1人さらってこい、というわけです。では、実際にゲームの流れを写真で見てみましょう。

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▲祭の会場近くに着陸し、徒歩で潜入を試みるクリプト。このままでは目立ちそうですが……。▲クリプトたちの目的の1つには、エンドルフィン(脳内麻薬とも呼ばれる物質)の収集があります。人間を倒せば、死体から抽出できます(恐ろしい)。▲火星人の姿のままでは人の多い会場では目立ちすぎるため、人間の姿に変身。近寄って脳波スキャンを使うと人間の考えを知ることができます。この女性が何を考えているのかを探ると……。
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▲そうでしたか……覚えておきます。ここはロックウェルですけれど。▲この人はこんなことを考えていました。懐かしいです。アレです。あのSFアニメです。

 会場の人はほとんどがこんな調子なのですが、中にはミスコンに輝いた“ミス・ロックウェル”のことを考えて大量のエンドルフィンを放出している人が2~3人いました。その1人は会場で演説を行っていた市長。クリプトはこの男をさらおうと考えます。ところがポックス博士は、ミス・ロックウェルをさらえと言います。

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▲お祭のコンテスト会場でマリリン・モンローのようなミス・ロックウェルを発見。彼女に催眠術をかけて、UFOまで走って行ってもらうことにしましょう。▲催眠術が成功。「みーんなー! 私がミス・ロックウェルよー! 選んでくれてありがとうねー!」、「どーいてー! 世界一の美人が通るのよー!」、「聚楽(じゅらく)よー!」などと大声で話しながらUFOへとダッシュする女性。聚楽ネタは古すぎてツボでした。
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▲ミス・ロックウェルとともにUFOに乗り込むと次なる指令が。これはひどい(笑)。▲UFOの武器の1つ“熱線砲”で祭の会場を焼き尽くすクリプト。建物を全部破壊したあと、母船に戻ればミッション終了です。
【洋鯨亭 第14回】洋ゲーの日本語ローカライズ、忠実な翻訳もいいけれど……
▲翌日の新聞。クリプトによる大破壊が、竜巻のしわざということになっています。

 いかがでしたか? このゲームのノリがなんとなくわかっていただけたでしょうか。本作には、最初から日本で開発されたんじゃないかと思うようなネタがてんこ盛りです。また、変なところにも凝っていて、映像特典(?)には『ガメラ』の短い映像や『宇宙から来たティーンエイジャー』というスーパーB級映画がまるごと1本収録されています。

 この『宇宙から来たティーンエイジャー』は約60年ぐらい前の作品。内容は……内容はー……ウーン……という感じです(笑)。私は観ながら2~3回睡魔に襲われました。この映画の中でも巨大ザリガニが現れるシーンは見せ場の1つのハズなのですが……眠気に勝てませんでした……。

 まぁ、ゲーム内容はいい意味でのバカゲーなので、前述の解説でなんとなくピーンと来た人は挑戦してみてください。

■はじけたローカライズ大歓迎

 ということで、ローカライズの極端な例を見ていただきましたが、個人的にはこのぐらいアレンジした内容でも大歓迎です。まさか『コール オブ デューティ』シリーズでやるわけにはいきませんが(というか、やってはダメ・笑)、コミカルな作品に関してはこういったアレンジを加えて、日本のユーザーにどんどんアピールしてほしいです。ということで、また来週!

 今週は本文が長かったのでロゴ募集告知は手短に。いつも通り、洋鯨亭ロゴを募集しているのでよろしくお願いします! ご意見ご要望などもお寄せください!




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データ

▼『デストロイ オール ヒューマンズ!』
■メーカー:セガ
■対応機種:PS2
■ジャンル:ACT
■発売日:2007年2月22日
■価格:7,140円(税込)
 
■『デストロイ オール ヒューマンズ!』の購入はこちら
Amazon
▼『THQ Collection デストロイ オール ヒューマンズ!』
■メーカー:THQジャパン
■対応機種:PS2
■ジャンル:ACT
■発売日:2009年1月22日
■価格:3,129円(税込)
 
■『THQ Collection デストロイ オール ヒューマンズ!』の購入はこちら
Amazon

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