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2010年7月6日(火)

【洋鯨亭 第18回】洋ゲー販売の現場に迫るインタビュー(前編)

文:電撃オンライン

 こんにちは。“洋ゲー”と呼ばれる海外ゲームを紹介するコーナー“洋鯨亭”亭主のRonです。

 ここ何回かの連載で、海外ゲームの購入に関する話題に触れました。日本で発売されていない海外ゲームを購入するには、通販か海外ゲームを販売しているリアル店舗を利用しましょう、というお話でしたね。具体的には、関東なら東京の秋葉原、関西なら大阪の日本橋に海外ゲームを扱うリアル店舗が何軒かあります。

 説明するまでもなく、国内のゲームショップ(またはゲーム売り場)で海外ゲームを扱うところは圧倒的に少ないですから、徒歩でお店をハシゴしながらショッピングができるという点で、この2つの街は貴重な場所ですね。

 今回は秋葉原にある海外ゲームを扱っているお店の1つ、アソビットシティさんにお邪魔して、海外ゲーム販売の現場についていろいろとお伺いしてきました。あ、一応ご存知ない方のために説明しておくと、アソビットシティはラオックス株式会社が運営する、ゲームやホビー商品を中心に扱っているお店です。国内・海外のゲーム、プラモデル、フィギュア、エアガンなどの関連商品がタワーのような店舗にギュッと詰まった、私を含むいわゆるオタクに優しい&便利なお店になっています。

 お店の場所やフロア情報などは、アソビットシティさんのホームページを参照してください。

【洋鯨亭 第18回】洋ゲー販売の現場に迫るインタビュー(前編)
▲これがアソビットシティの外観です。上階には、エアガン用のシューティングレンジ(銃の試し撃ちができる場所)があります。

 インタビューにお答えいただいたのは、アソビットシティで海外ゲームの仕入れを担当されている、田中さんです。いろいろと楽しいお話が聞けたために文章が長くなってしまいましたので、インタビューの内容は今週と来週の2回に分けてお届けします。

■PC用から始まった海外ゲームの販売

──早速お伺いします。海外ゲームを扱い始めたのは、いつごろからでしょうか?

 もともとアソビットシティの前身にあたる“ラオックス ゲーム館”という店舗がありまして、18年前に出店した当初から販売していたようです。出店時はまだ私も入社していませんでしたから、これは当時を知る社員に聞いた話になるのですが。そのころは、海外のゲームはPCとMac用のみを扱っていたそうです。

──ずいぶん前ですね。まだWindows95もないころからですか……。

 はい。PCは“Windows PC”ではなく“IBM PC”と呼ばれていましたし、Macも“マッキントッシュ”と呼ばれていたような時代ですね。

──では、家庭用ゲーム機向けの海外ソフトを扱うようになったのはいつごろですか?

 6年ほど前ですね。ゲーム館はその後、移転や改名をして今のアソビットシティになったのですが、6年ほど前からは家庭用ゲーム機向けの海外ゲームも販売しています。

──そもそも海外ゲームを扱うようになったきっかけはなんだったのでしょうか?

 日本で発売されていない楽しいゲーム、珍しいゲームがたくさんありましたので、それをお客さんに遊んでほしいと考えたのがきっかけのようですね。それと、当時は日本製のPC用ゲームが少なかったから、ということもあるようです。そのころはMac用のパズルアドベンチャー『MYST(ミスト)』なんかがよく売れた時代ですから。ただ、PC用の海外ゲームということで、お客さんにとっての敷居は今よりも高かったようですね。

■海外ゲームの仕入れに関するアレコレ

──海外ゲームの仕入れの際に、参考にする情報はなんでしょうか?

 実はお客さんとあまり変わらないと思うんですけど、インターネットの情報ですね。公式サイトにあるソフトの紹介ですとか、海外のレビューサイトの記事ですとか。あとは、海外を含めいろいろな掲示板の感想なども参考にさせてもらっています。

──国内のゲームと比べて、情報収集の点で苦労はありますか?

 そうですね。国内のゲームですと、メーカーの営業の方がご来店くださるということもあって、未公開の情報も含めて収集には苦労しないのですが……。海外のゲームはメーカーさんと直接取引きをしていない分、やはり苦労しますね。どうしても、一般に流れている情報と同じレベルでしか話題が入ってきませんので。

──商品を仕入れるための判断材料として、国内のゲームよりも情報が少なくなると。

 そうですね。

──では仕入れに関しては、ある種、賭けみたいな部分があるということですか?

 ありますね。体験版やベータテスト版が配布されているゲームを実際にプレイしたスタッフがいれば、感想を仕入れの参考にしますね。

──ちなみに、スタッフの方が今注目しているタイトルはありますか?

 『Nauty Bear(ノーティ ベア)』というゲームですね。これがどういう売れ方をするのか気になっています。内容的にはクマがクマを襲うという、シュールなバイオレンスゲームなんですけど、外見がかわいらしいのにアクションがエグイんです(笑)。グロテスクとまではいかないんですけど、日本にもいるグ○ーミーというキャラクターに近いですかね。

──こちらが、アソビットシティさんのイチオシなんですね(笑)。

 はい(笑)。特に大作というわけではないんですけどね。スタッフの感覚を信じつつ、仕入れる予定です。

──なるほど。ちなみに海外版ソフトはどういうルートで仕入れているのですか?

 海外メーカーから海外の卸業者、そして国内の卸業者などを経て仕入れています。

──国内での仕入れよりも、中間に挟む業者が増える感じですね。

 はい。その分の流通コストが末端の価格に跳ね返らないよう、いろいろと頑張っていまして、なんとか販売価格を安めにできています。

【洋鯨亭 第18回】洋ゲー販売の現場に迫るインタビュー(前編)
▲売り場には、Xbox 360、PS3、DS、Windows PC用の海外ゲームがあります。全体的に海外版のほうが国内版よりも安いですね

■どんなお客さんが来店をするのか?

──お店にいらっしゃるお客さんは、どんな方が多いですか?

 20代~30代の男性の方が中心ですね。

──20代の方も多いんですか?

 はい。ときどき10代の方や年配の方もいらっしゃるので、お客さんの幅としては広いですね。

──ということは、ゲームについて質問されることもありますか?

 ありますね。よくある質問は、海外版でもアジア版と北米版の違いについてです。

──たしかに、海外版といっても地域ごとに言語の違いなどがありますしね。では、ゲームの内容に関する質問などはありますか?

 内容については、たまに聞かれるぐらいで、質問はあまり多くないですね。内容を十分にわかっている方が購入されていくという印象です。

──そもそも、お店に来る前に十分下調べを済ませているということですね。

 はい。そういうお客さんが多いようです。

──そうでもなければ、海外版にまで手を出さないということなんでしょうね。

 そうだと思います。実際、一番多いのは「この前○○地域で発売された“あのタイトル”の入荷時期はいつなのか?」というピンポイントな質問ですから(笑)。

──では、日本版と間違えて購入される方もほとんどいないと。

 はい。購入時にも、レジで海外版ですというご説明をしていますので、そういう方は少ないです。

──場所が秋葉原ということで、海外からの観光客も来店するのでは?

 そうですね。そういった方が購入されていくケースもあります。あと、結構日本に住んでいる海外の方が来店されますよ。やはり母国語といいますか、英語圏の人は英語でないとゲーム内容がわからないということで、わざわざ買いに来てくださいますね。他にも“とある国”の大使館にお勤めの常連さんですとか、PCのゲームに限って言えば、フィリピン人の常連さんもいますね。その方は日本に住んでいるわけではなくて、日本とフィリピンをしょっちゅう行ったり来たりしている中で、こちらに立ち寄ってくださるようです。

──お客さんの違いみたいなものはありますか?

 国籍からくる違いというよりは、ユーザーさんの違いといいますか、所有しているハードによるお客さんの違いはありますね。たとえば、Xbox 360を持っているお客さんは、他の機種のお客さんよりも海外ゲームを購入される方が多いですね。同じ海外ゲームのタイトルを仕入れても、売り上げはXbox 360版の方が他機種よりも多いです。海外で先行販売され、国内販売が決まっているタイトルでも、Xbox 360のユーザーさんは国内販売を待たずに海外版を購入されていきますが、PS3のユーザーさんは海外版の購入を控えることが多いようです。

──なるほど。ハードごとのユーザーさんの傾向もわかるのですね。そういったお客さんの違いも含めて、長年海外ゲームを扱っている中で市場の変化のようなものは感じられますか?

 先ほどもお話したように、当初はPC用の海外ゲームを中心に扱っていたんですけれど、だんだん家庭用ゲーム機向けのソフトが増えてきて、今では完全に逆転してしまいましたね。タイトルの開発も、家庭用ゲーム機向けが中心になってきましたし。

──そうですね。まだまだPCで海外ゲームを遊んでいる方もいるわけですが、数で言えば以前より減っていますよね。

 はい。ウチのお客さんの中にも、以前PCで海外ゲームを遊んでいた方がいらっしゃるのですが、最近はハードにかけるコストのことを考えて、家庭用ゲーム機に乗り換える方が増えました。PC版のために最新のグラフィックボードやCPUを追いかけて投資しても、得られるパフォーマンスに劇的な変化がないということなんでしょうね。Xbox 360だと2万円程度でHD画質が楽しめるので。それ以上のグラフィックを求めた時にかかるコストを考えると、その分ゲームを買うお金に回したほうがいいということのようです。海外のメーカーだけでなく、お客さん自体が家庭用ゲーム機の方へ流れていっていますね。

──最新のグラフィックボードの表現力や解像感には惹かれるものがありますが、その値段を考えると導入に躊躇(ちゅうちょ)しますよね。その値段なら、家庭用ゲーム機を買ってお釣りがきますから。

 そうですね。価格の問題はあると思います。ディスプレイにしても値段がこなれてきて、家庭用ゲーム機でHD画質を楽しむのも比較的簡単になりましたし。

――家庭用ゲーム機で高画質を楽しむための環境も整ってきましたしね。それでは、次回は海外ゲームの人気タイトルなどについてお聞かせいただけると幸いです。

 ということで、今週はアソビットシティさんでの海外ゲームの売れ行きや、ユーザー層についてお話を伺いました。次回は、人気タイトルなどについても触れていきますので、来週もお楽しみに。

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店舗データ

▼アソビットシティ
■営業時間:10:00~21:00(年中無休)
■住所:東京都千代田区外神田1-15-18
■フロア情報:海外&国内ゲームは1階にて取り扱い中!

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