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2010年9月1日(水)

【CEDEC 2010】『ポケモン』と『ドラクエ』のキーパーソンが“プロデュース”を語る

文:電撃オンライン

■“ルイーダの酒場”に学んだこと

 続いては、ゲームを開発するプラットフォームの話題。ポケモンは、任天堂のハードで開発を続けているのに対し、スクウェア・エニックスはさまざまなプラットフォームで展開するメーカー。石原氏は「マルチプラットフォームになることにより、ゲームの作り方は変わってくるのではないですか?」と質問する。吉田氏と市村氏はそれぞれ、「『ドラクエ』は昔から普遍的なところがあり、ハードによって変わることはないです」「その時に一番普及しているハードで出すのが、『ドラゴンクエスト』のシンプルな考え方です」と、ハードによる違いはないことを説明していた。

 石原氏は、「僕は古い人間なので、ドット単位で画面の大きさなどが気になるんです。メニュー画面をあと1ドット詰められないか、なんてことを考えるじゃないですか。なので、画面の大きさが異なるマルチプラットフォームでよく開発できるなと感心するんです」とコメント。吉田氏も、「作り方を変えないと、それぞれのハードのパフォーマンスを引き出せないので、1つのハードに集約するのは開発としてはうれしい」と素直な気持ちを述べていた。

 また、ここで市村氏が「制限があった方が物作りは洗練されていく」という考え方を披露。「『ドラゴンクエスト』は、すぎやま先生が限られた音数の中で、堀さんが限られたテキストの中で、試行錯誤を重ねて生まれたものですし、『VIII』や『IX』の時の開発現場を見ていてそう思いました」と話すと、石原氏からは「昔は容量が少なく苦労しましたが、今も同じような容量の悩みはありますか?」といった質問が。「容量が増えると原価が上がってしまうので、限度をどこかで設けないといけないとは思います」と市村氏は返答し、吉田氏も「容量が上がると値段も上がり、結果的にお客さんに跳ね返ってしまう」と、容量の意識は欠かせないと語った。

CEDEC 2010

 ここで石原氏が話題に上げたのは、ダウンロードコンテンツと容量の関係。「データの転送量の問題もあるので、むしろ昔のゲーム作りに近いですね。(ポケモンさんは)ネットでの展開も考えているのでしょうか?」と吉田氏が尋ねると、「細かいところは日本人の得意とするところなので、そういうニーズはないものかと思っています。サイズが小さくなれば、MiiをWiiリモコンに1,000人入れて持ち運ぶこともできるようになるでしょうし、『ポケモン』も待たされるのはイヤなのでデータは小さくなるようにしています」と、容量への考え方を説明。市村氏も「コンパクトにすることで、データの追加もしやすくなります。コンパクトにクオリティの高いものを目指すのは常に大事なことだと思っています」と同意していた。

 続いて「あまり話したくなかった」と苦笑交じりに石原氏が切り出したのは、『ドラゴンクエストIX』で大成功を収めた“すれ違い通信”について。『nintendogs』で初めて実装されたこのすれ違い通信。「ポケモンも『ポケモン不思議のダンジョン』で取り入れていたのですが、ルイーダの酒場にはおよばずでした」と非常に悔しそうに語っていた。この成功の秘訣を、石原氏は次のように分析。「1つは、同時期に遊んでいた人が多かったこと。もう1つは、声の大きいプレイヤーが多かったことです。『ポケモン』は、同じゲームを同時期に遊ぶ環境を作ってきませんでした。また、『ドラクエ』は年齢層が高いので、ネット上に情報を書き込んだりする人が多かったのも要因としてあると思います」。これを踏まえ石原氏は、「『ポケモン』に足りなかったものがつかめたと思うので、次はどう攻めようか考えているところです」と、すれ違い通信への取り組みをほのめかしていた。

 これを受け市村氏は、「20代~30代ぐらいの人は行動範囲も広いので、見知らぬ人と交流しやすいということはあったと思いますね。「どこまで行った?」「レベルはいくつ?」といったような会話をソフトの中でやりたいと思い、すれ違い通信に取り入れることにしたんです。あとは開発の段階で、mixiのように誰かに見てもらったらアクセスカウンターが増えていくとおもしろいよねと話していました。そのあたりの感覚が、今の人たちに受け入れられたのではないかなと思います」と、『ドラゴンクエストIX』におけるすれ違い通信のヒットの要因を分析していた。

CEDEC 2010

 逆に市村氏からは、「クエストを追加配信したりして、『ドラゴンクエストIX』を長く売れるソフトにしたかったんです。シリーズ全体から見れば非常にロングセラーになりましたが、やはり『ポケモン』ほどではありません」と、“長く売れる秘訣”についての質問が飛び出した。石原氏が「TVアニメや映画、カードゲーム、そして過去の遊びとの連係ですね。イベントや仕掛けを作り続けていくことが大切です」と答えると、市村氏も「イベントなどで無償でピカチュウがソフトにやってくると、子どもたちの胸に刺さるのだと思います。それが、“向こうのネズミより黄色いネズミ”といった具合に潜在意識に効いているのだと思います。『ドラクエ』はそれがなかなかできていないんです」と同意。「会社としても、そうしてイベントなどを提供し続けることに効果があるのかと疑問を抱くこともあります」とロングヒットへの難しさを語った。

→アニメの『ポケモン』も『ドラクエ』と関係が?(3ページ目へ)

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