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2010年10月1日(金)

【電撃攻略本・座談会】ゲーム攻略本の過去・現在・未来Vol.3-1

文:電撃オンライン

『電撃ゲームス』

 9月24日発売『電撃ゲームス Vol.13』(アスキー・メディアワークス刊)に掲載されている座談会を、電撃オンラインで2回に分けてお届け。攻略本についての“ぶっちゃけトーク”も飛び出す!?

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 今回の攻略本座談会も、前回(2-1/2-2)からの続きとなります。最速本・中間本・完全本の話からスタートし、各所に話題が飛びつつ、たどり着いた結論が“ゲームを終わらせない”攻略本。普通に考えると、攻略本って“ゲームを終わらせる”ためのものですよね?

【座談会 参加者紹介】

電撃攻略本編集部/デスク
多田羅洋平
攻略本編集部のキーマンで、いつもフル回転で働く男。そろそろ制作がスタートするビッグプロジェクトの攻略本に関して、日々深く悩んでいる。

電撃攻略本編集部
木原大輔
攻略本編集部・現場編集者の代表として参加。現在は『ファイアーエムブレム』の20周年記念本のほか、『ゼノブレイド』の究極設定本を制作中。

元・電撃攻略本編集部/副編集長
野村一真
本記事のライターで、電撃ゲームスの副編集長も務める(一応)。最近、多田羅が取り仕切るビッグプロジェクトの攻略本に携わることが決定した。

元・電撃攻略本編集部/編集長
倉西誠一
元・電撃PlayStation&電撃攻略本編集部の編集長で、現在は「狩られ道さん」と呼ばれるブロガーとして活躍。iPhoneアプリにハマり中。


野村 今回は、最速本・中間本・完全本の区分けに関する話題からスタートしたいと思います。

多田羅 実は最近、完全本以外が大きく減りました。

野村 情報が全部載っていないことを理解しているユーザーが増えたのと、あとはネットの情報量と早さが影響しているよね。

多田羅 あと、完全本が出るまでの期間が短くなっているのも1つの理由かと。

倉西 最近の完全本って、どのぐらいの期間を経て発売されるの?

多田羅 ソフトの発売日から1カ月後が基本ですね。ソフトの寿命が長くないんで、早く出さないと、みんなが別のゲームに行ったりして、プレイしなくなってしまうんです。

野村 厳密にいうと、別のゲームだけじゃなくて、エンターテイメント全般かな。

倉西 俺もそう思った。多田羅が言ってることが完全に本当なら、もっとソフトが売れていてもおかしくないはず(笑)。最近、厳しいからね。

多田羅 失礼しました(笑)。

倉西 ということは、1本買ってきて1カ月ぐらい遊んでいたら攻略本が出て、本が出たからもう少しプレイして、1カ月半ぐらい遊んだら、次に別のゲームがあればやるかもしれないけど、なければ他のエンターテイメントに行っちゃうと。

野村 今どきは、たぶんそんな感じだと思います。

倉西 そうなのかな。

野村 で、攻略本の発売日が2カ月後でもいいのは、ゲームの性質が『モンハン』系のものだと思います。何カ月も遊びたくなるゲーム性のもの。それ以外だと、世界観が独自ですごくて、ストーリーもキャラクターも魅力的で、さらに膨大な数のファン、もしくは超コアなファンがついているようなタイトルじゃないと、基本的に厳しいですね。

倉西 クリアするための攻略本の必要性が薄れて、攻略という側面が一番強いであろう完全攻略本が、もはやソフトの発売日から1カ月後だと。

多田羅 そのあとだと、世界観的なものを総決算するファンアイテムのようなものであれば、ときに売れますが、それ以外だと厳しいですね。

倉西 それってさ、しっかりゲームをやり込んだうえで作るという、かつての俺達の攻略本の作り方から考えるとおかしいよね。この記事を読んでる人は知らないと思うけど、『モンハン』の攻略本を作るのは、実は半年がかりの仕事。まずゲームをやってやってやり倒して、攻略の要点の目星をつけて、さらにゲームのすべてを理解する。そのうえで、メーカーさんからもらった資料を1つ1つちゃんと確かめて記事を作っていくと、当たり前に半年はかかる。だから、発売は3カ月後ぐらいになるというのが理想の攻略本。でも今は、もう違うんだよね?

野村 そこまでする必要性のあるゲームが少ないというのも影響していると思います。

倉西 うん。それも含めてね。『モンハン』ほどのゲームはそうそうないし、そもそもそんな悠長なことをしている余裕もないと。

多田羅 そうなんですけど、ゲームのボリューム自体が大きくなっているとも思います。

倉西 大きくなってるのかな?

野村 いや、あくまでも私見ですが、必要度の低いデータだけが増えているような気がします。

倉西 俺もそう思ってた。

多田羅 そうなのかもしれませんが、ゲームを長く遊んでほしいという考えは、どのメーカーさんもお持ちなわけじゃないですか。やり込みとかのためにデータをたくさん用意しているんだと思います。

倉西 そういえばさ、『電撃FPS』って発売中だよね。

野村 ええ。

倉西 何を思ったかというと、最近のゲームでこれは素晴らしいと思ったのが、『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア2』なんだよね。物語は短いんだけど。俺はヘタだから別として、普通にアクションゲームができる人だったら、10時間ぐらいでキャンペーンのモードが終わってしまう。オンラインではとにかくやることが大量にあって、キャンペーンもそうだけど、タイムアタックとかもある。ただ、ゲームのボリュームとしては、実はそれほどでもない。でも、ものすごい演出が満載で、やり込もうと思えばいくらでもできますよと。データが必須かというと、実はそんなにいらないとして、腕が上がればどんどん楽しくなる基礎的な仕掛けがとても充実している。だから、これは本当にすごいなと思った。で、全世界で2,000万本以上売れているけど、国内では残念ながら数十万本というところで、ウチの本が出た。これらを踏まえると、『電撃FPS』はすごく楽しみなんだよね。FPSの攻略本って、日本でまともなものが出たことがないわけだし。

多田羅 そうですね。攻略記事の切り口とか、攻略法を伝えるのが難しいジャンルですから。

倉西 それが今回、世の中に出ていったことで、なんだか、宣伝的になっちゃってアレなんだけど、売り上げとかじゃなくて、個人的にすごく楽しみにしている。FPSの攻略本を本気で作ったのは、ウチとしては初めてだと思うし、俺の評価の中ではゲーム自体が世界最高峰なんで。

野村 そういうゲームは、長く遊べる本質を備えているからこそ、遅いタイミングで発売される攻略本でも成立するんだと思います。長く遊びたくなる本質を備えているゲームということで考えると、最近だと『ゼノブレイド』がそうなのでは?

木原 『ゼノブレイド』は『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア2』とかとは違って、ストーリーに沿って楽しむゲームです。そのあともできることはたくさんありますし、素晴らしいRPGだと思います。チュートリアルもすごく細かくて、ある意味、誰でもクリアできるような作りになっています。だから攻略本では、システム解説を端折って、テクニック解説に重点を置きました。あと、これは攻略本制作担当者としての私見ですが、ストーリーが終わったあと、ほかにどんなことがあるのかを、攻略本で確認できれば満足してしまうユーザーが多いと思います。個人的にはやり込んでほしいけど。さらにいうと、ストーリーを楽しんでクリアするまでの期間は、ソフトの発売日から考えると長くて1カ月ぐらいかと。そのため、完全本でも1カ月後には出さないと、そういうユーザーに乗り遅れて、攻略本が売れなくなってしまうんです。

倉西 言い換えれば、ゲームを終わらせるための本だともいえるよね。でも、そういうゲームの攻略本よりも、終わらないゲームの攻略本のほうが売れる時代になってきた気がする。別角度から考えると、ゲームを終わらせないための攻略本のほうが必要なんじゃない? クリアできなくする攻略本とか(笑)。

(10月4日掲載 Vol.3-2へ続く)


『電撃ゲームス』

この記事が掲載されている『電撃ゲームス Vol.13』は、全国の書店で定価650円(税込)で好評発売中です。


データ

▼『電撃ゲームス Vol.13』
■発行:アスキー・メディアワークス
■発売日:2010年9月24日
■価格:650円(税込)
 
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