2010年10月1日(金)
本連載は『GEルネッサンス』の美しいコスチュームと景色に全力でスポットを当てた、新大陸グラナド・エスパダを舞台に、主人公・電撃子による妄想ストーリー『衣服を巡る冒険』を全4回でお届けする。
【前回までのあらすじ】 |
コインブラ唯一の洋品店“ぐらな堂”の主人クラウドボネは、店を愛娘の“電撃子”に継がせて悠々自適の老後を送る予定だった。だが、こともあろうに電撃子は父親のファッションセンスを「昭和の香り」と酷評し、親子の間には深い溝が生まれてしまった。父を納得させるために、電撃子は新大陸No.1デザイナー“アンドレ・ジャンジール”をたずね、リボルドウェの街へとやってきた。 |
◇◆◇◆
▲電撃子の衣装が前回と違うのは、「どうせなら色んな洋服を着せ替えたい」と筆者が想っているから……ではなく、乙女らしく彼女が着替えたからなんです。アンドレ先生、白いしね。 |
「これがアンドレ・ジャンジール先生のご自宅かぁ」
遠路はるばるコインブラからリボルドウェに到着した電撃子。さすがに新大陸の有名人、アンドレ先生の居場所はすぐに見つかった。さっそく扉をノックしかけると……。
「Oh! 誰ですか順番を守らないヤボな御仁は。私に会いたければ列にならんで下さい」
「え、これ全部アンドレ先生の面会待ちなの?」
いきなりアンドレ本人とのご対面は嬉しいが、振り返ると電撃子の後ろには、ながーい行列が出来ている。聞けば誰もがアンドレ先生に面会をお願いし、弟子入りやらオートクチュールのドレスをオーダーしようとたくらんでいるのだ。
▲アーティスト魂全開のアンドレ先生はとっても気まぐれ。今日明日にでもすぐ面会できるわけではない。 | ▲(旧大陸の)女王陛下のドレスもデザインした実績の持ち主、アンドレ先生。新大陸にきてインスピレーションがスパークしてるそうです。 |
(じょ、ジョーダンじゃないわよ! 真面目に並んで待っていたらコインブラに帰れるのは、いつになるかわかったもんじゃないわ)
リボルドウェにさえくれば何とかなると思っていた、究極の楽観主義者 電撃子も、これはさすがに予想外の展開だったようだ。しかし、転んでもただでは起きない、立ってるものは親でも使えがモットーの彼女は、奥の手をいきなり使うことにした。
「アンドレ・ジャンジール先生、お初におめもじいたします。ワタクシの名は電撃子。コインブラは“ぐらな堂”の跡継ぎにして、アンドレ先生の幼馴染クラウドボネの娘にございます」
「なんと、あなたがボネの娘……」
▲折伏(しゃくぶく)する電撃子に「まぁまぁ、顔をおあげなさい」と声をかけるアンドレ先生。見た目はアレでも紳士なんですよ。変態という名の紳士なんです。 |
親の七光りとはちょっと違うが、コネという最強の切り札をあっさり出した電撃子。その図々しさはボネそっくりと思ったかどうかは知らないが、アンドレは黙って電撃子を自宅へと招き入れた。もちろん後ろの行列からは大ブーイングである。あ、あと養女クレアからも「娘は私よ!」とのクレームが来ているが、彼女はオーシュにいるので残念ながら声は届かない。
◇◆◇◆
▲自宅に招かれ、客間で事情を説明する電撃子。2人とも真っ白な衣装のせいで、景色に溶け込みすぎてどこにいるのかよく分からない。 |
「フーム、話はわかったわ。で、私の力を借りたいというわけね?」
「はい。裁縫の腕前には自信があります。どうか先生の弟子として、ワンダホーでトレビアンな衣装デザインのセンスを勉強させてくださいっ」
アンドレは一瞬、どこか遠くを見つめるような目をしたあと、今度はいたずらっこのような表情をして電撃子に話しかけた。
「今度わたくし、お友達と3人で内輪だけのコンサートを開くんですの」
「は。コンサート……ですか?」
「そう、新大陸に来てから芸術面の才能が開花しちゃって、開いちゃって。毎月1回この美声をリボルドウェのハイセンスな市民にお届けしているワケ。そ・こ・で、あなたに試験を出すワ(ハァト)」
なんだかご機嫌のアンドレ。その猫なで声に電撃子の背中がぞくりと震えた。
「コンサートには毎度、ドレスコードを決めているの。でもイブニングドレスや仮面舞踏会、花を一輪つけてくることなんて、ありきたりのドレスコードにはもう飽き飽き。今までにないエポックメイキング(画期的)で、マーヴェラス(素晴らしい)で、インクレディブル(信じられない)ドレスコードと、それに合うコスチュームをあなた自身が作ってちょうだい」
「後半何しゃべってんだか意味わかりませんが、了解しました。とにかくエポックメイキングでマーヴェラスでインクレディブルなコスチュームを、招待客用に作ればいいんですね」
▲リボルドウェの掲示板。左端に何かいつもと違うポスターが貼られているような……。 | ▲今回も“ポスター風のなにか”を3分で(適当に)作ってみた。この3人組、思ったよりかっこいい。 |
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またもや脊髄(せきずい)反射で安請け合いしてしまった電撃子。どうしてこの娘は懲りないのだろうか。今までに存在しないまったく新しいドレスコードと、それにあうコスチュームについてウンウン悩む電撃子は放置して、簡単にドレスコードについて説明しておこう。
日本でドレスコードを気にする場面は冠婚葬祭ぐらいだろうが、欧米では日常の中にドレスコードが普通に存在している。ごくごく一般的なサラリーマン家庭でも、昼と夜の服装は別という意識が強く、家族で夕食に出かけるまえにシャワーを浴びて、ちょいとお洒落な服に着替える。なんてことも珍しくないのだ。
『グラナド・エスパダ ルネッサンス』がモチーフとする中世~近代ヨーロッパの貴族階級では、このドレスコードは絶対的なもの。多い時は時間帯にあわせて1日5~6回着替えることもあり、さらには厳格なルールが決まっていた。
女性のドレスと言えば肌の露出が多いものを想像しがちだが、午後のティータイム前後から夕方にかけての外出。またはお客様の訪問がある場合、女性のドレスコードは肩まわりの肌を露出しないのがマナー。ドレスの色調は明るく軽いものがよしとされた。ティードレスとは特に腰まわりをコルセットなどでガチガチに締め上げない、ゆったりとリラックスしたデザインのこと。ちなみに帽子は洋服の一部という扱いなので、室内に入っても脱がなくてよい。
イブニングドレスは夜のシーンにおける正装。胸元や肩、背中をぐっと露出するロングドレスに、きらびやかな宝石をドーンと身に着ける。ひじまで覆う長手袋は必須だ。写真の女ウォーロックは白いドレスだが、実際には光沢のある素材で黒や深い紫、緑などダークな色調が好まれる。夜は帽子ではなく、ヘアアクセサリ(とはいえゴージャス)がメイン。
ドレスコードではないが、女ウォーロックのドレスに必須のコルセットについて。胸を押し上げ、腰をくびれさせるコルセットは当時の女性のファッションにとって欠かせなかった。古い映画でなにかと言えば女性が「フゥ……」と気絶するシーンを見るが、あれは
1.当時はすぐ気絶しちゃうようなか弱い女が好まれた。
2.腰は細ければ細いほど“美”であり、コルセットを締め上げすぎて呼吸が浅かった。
という2つの理由があったようだ。
名文学作品『風とともに去りぬ』で主人公スカーレット・オハラが、女中にコルセットのヒモを“ウエストが17インチになるまで”締めさせる場面も。17インチって、約43センチ(ありえない!!)。ちなみにスーパーモデル、ナオミ・キャンベルのウエストサイズは公称61センチである。
◇◆◇◆
リサイタル当日がいよいよやってきた。
「招待客の皆様は控え室にお揃いよ、電撃子。まずはあなたが考えた新ドレスコードのコンセプトを聞こうかしら?」
「はい、アンドレ先生。まずグラナド・エスパダ大陸のファッションは旧大陸の貴族社会のルールを引きずっています。貧しい漁村の娘が盲目になるまで編み続けた、贅沢極まりないレース。荒っぽい開拓地に似合わない帽子や手袋、すそを引きずるロングドレス。女性らしさを強制するコルセット……。私はこれらの窮屈きわまりないファッションから、人々を解放したいのです」
「そう、今回のコンセプトはズバリ“解放”と“無礼講”です!」
▲贅沢なレースも高価なシルクも使わない。使わないどころか布地面積を極限まで削減! | ▲内臓を締め付け、男目線の美を強制したコルセット撤廃。別の意味で男の目を釘付けに! |
アンドレ・ジャンジールの目から、ウロコがはらはらと何枚も落ちた。
「既成概念を打ち破りながらも、“美”の追求は決して忘れない新コンセプト。これこそ私が長年追い求めていたもの。今年のリサイタルは大成功間違いなしね!」
「あぁ、アンドレ先生……ありがとうございます。で、先生リサイタルの会場はどちらで?」
「氷魔塔前よ(ニッコリ)」
「え?」
▲無礼講にもほどがある招待客たち。それにしてもホセは男性にモテモテだな、おい! |
こうして新大陸三大テノールが集結したリサイタルは、アンドレ好みの白銀の世界で開催された。電撃子が徹夜で仕上げたビーチウェアは、「見たこともない斬新なデザイン」として招待客にも大うけ。そしてリサイタル終了翌日、招待客の全員が高熱にうなされたのは言うまでもない。
リサイタル終了から2日後。
「先日の試練、わたしは無事にパスできたのでしょうか。もしそうならば、私を先生の一番弟子にしてください」
「そうねぇ、あのビーチウェアとやらは素晴らしい仕上がりだったし。さすがボネの娘だけあっていいセンスしてるワ。今日から私の弟子に……」
「その弟子入り、ちょっと待ったー!」
トントン拍子に話がすすんでいた電撃子の前に、突然立ちはだかった男は一体何者なのか? なぜ電撃子のアンドレ弟子入りを邪魔するのか? 続きは次週!
▲連載記事を書いていたら、ビーチウェアが無性にほしくなってお財布と相談中の筆者。個人的にはファイター(女)のビーチウェアが一番カワイイと思っている。 |
→“ディグニットシリーズ”製作の過程を見たい人は3ページへ!
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Published by Hanbit Ubiquitous Entertainment Inc.