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2010年10月19日(火)

【洋鯨亭 第31回】戦場のリアルさを追求したFPS『メダル オブ オナー』レビュー

文:電撃オンライン

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■アフガニスタンという戦地と美しい背景

 本作の主人公3人は皆アフガニスタンに派遣されているので、作戦はすべてアフガニスタン国内で展開されます。国内のみとはいっても山岳地帯、砂漠地帯、廃墟、洞窟、村の中など、戦いの舞台にはさまざまな場所が用意されています。

 いずれも激しく銃弾が飛び交う危険な場所なんですけど、たとえば山岳地帯の雪をかぶった山が見える場所などは本当にキレイで、ついつい目を奪われてしまい……ちょっとした観光気分に浸れます。

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▲戦いが行われていなければ、足を止めてじっくり見ていたいと思うほどキレイな風景です。

 こういった場所で行われる戦闘では、攻撃ヘリの対地攻撃や戦闘機による航空支援の要請など、銃撃戦以外にもさまざまな戦い方が楽しめます。しかし、やはり中心は生身の銃撃戦。その中でいいなと思ったのが、仲間から弾薬をもらえることです。

 特定の場所で入手するスナイパーライフルや敵の銃など、特殊な銃の弾をもらうことはできませんが、仲間の装備と同じ銃に関しては何度でももらえます。一般的なFPSは同じ種類の銃をみつけたりして弾を補充することが多いので、これは親切かつ便利だと思いました。

 もっとも、これは本作がリアル路線を重視したからかもしれませんね(敵の銃の弾は同じ銃を拾うことで補充されます)。ただ、リロードと弾薬をもらうボタンが同じなのがちょっとだけ気になりました。なぜなら、持ち弾が十分にある状態でリロードしようと思ったら、近くに仲間がいたために弾を要求してしまったことになり「まだ十分にあるだろ」と怒られることが何度もあったからです。これは仲間との距離に気をつければいいことなんですが、危ない局面で焦っていたりすると意外とやってしまうんですよね。あぁ……また怒られたみたいな(笑)。

 それから、もう1ついいなと思ったのが、薄い壁なら弾丸を貫通させられる点です。これを利用すれば、隠れた敵を壁越しに倒すことができるんですね。ただし、これは自分が隠れている場合も同様です。そのため敵の弾丸が壁を貫通してきたり、隠れていた石の壁が弾丸で少しずつ崩れたりするわけですが、これはリアルかつ怖い演出だと思いました。

 同じエレクトロニック・アーツのPS3/Xbox 360『バトルフィールド バッドカンパニー2(以下、BFBC2)』も建物の破壊表現が素晴らしく、こちらの作品では自分の隠れる場所がなくなってしまうという恐怖感を味わえました。しかし本作では『BFBC2』のように隠れた家が戦車の砲撃で破壊されてしまうような激しい展開はないので、自分のキャラクターの周囲ではそれほどの破壊描写はありません。

 それでも敵に対しては派手な爆撃や機銃掃射が行えますし、何より前述の演出により敵の銃弾の怖さが非常によくわかるようになっています。敵にヘッドショットを決めた時だけアイコンが表示されるのも、本作が銃撃戦を重視していることの表れなのでしょう。

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▲敵の銃弾により、少しずつ崩れていく壁。物陰に隠れていれば必ずしも安全というわけではありません。
【洋鯨亭 第31回】戦場のリアルさを追求したFPS『メダル オブ オナー』レビュー
▲主に敵の施設を破壊する際に見られる派手な爆発の演出。

■抑え目でリアルな演出

 現代戦(近代戦)のFPSというと、最近では『CoD MW』シリーズのことが思い浮かぶと思います。『CoD MW』シリーズが主人公がヒーロー的な活躍をして国の平和を守るという勧善懲悪のハリウッド映画的な展開だとすれば、本作は展開や演出が抑え目のリアルタッチで、その点ではドキュメンタリー映画っぽいと言えるかもしれません(以前はどちらかというと逆だったのですけど)。Tier 1という実在の兵士の取材をもとに構成したゲームですから、それは当然かもしれません。

 ミッション内容がヒーロー的な活躍を期待されるものではないですし、詳しくは書けませんが、エンディングからは現実に横たわっている問題はいまだ解決していないというメッセージが伝わってきました。そういう点からすると、本作の展開にはやや地味な点はあるかもしれません。それでも私は、このリアルタッチの物語もいいなぁと思っています。

 弾切れと敵の増援で孤立しそうになったり、不意打ちをくらってしまったり、将軍と大佐の状況判断能力の違いから兵士が危険な目にあったりと、彼らの周囲には本当にこんなことがあったのかもしれないな、と思わせてくれるだけでも十分楽しめました。

 今回は発売前にプレイしたためマルチプレイを体験することはできなかったのですが、チーム戦を中心に5つのルールで遊べるようなので、いずれ挑戦してみたいと思います。

 以上、本作の魅力を駆け足でご紹介してきました。今回は作品のテーマが現代戦になったこともあって、いったんシリーズをリセットしたいという制作側の意図があるようです。それは、サブタイトルが付いていないタイトル名にも表れていますよね。

 今後『メダル オブ オナー』シリーズが現代戦(近代戦)だけをテーマにするのかどうかはわかりません。しかし、これまで第2次世界大戦をテーマにしたFPSがいろいろと発売されてきましたから、今後のメジャータイトルは現代戦(近代戦)をテーマの中心に据えるのかもしれませんね。このPS3/Xbox 360『メダル オブ オナー』が新生してどう変わったのか、皆さんの目で確かめてみてください。



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