News

2011年1月26日(水)

『戦場のヴァルキュリア3』で味わう――戦場に身を投じる指揮官と兵士の目線

文:電撃オンライン

前へ 1 2

■2章――『戦場のヴァルキュリア3』で描いているもの

 『戦場のヴァルキュリア』では、歴史の一幕を切り取ったかのような戦場ドラマを楽しめるのもポイントです。『3』で描かれるのは、“正史で語られることのない戦い”。じゃあ正史っていうのは何なのさ? というのは当然の疑問で、これはシリーズ1作目『戦場のヴァルキュリア』で描かれています。冒頭にも書いた“大戦”の中で起きた帝国のガリア侵攻にスポットを当てたストーリーになっていて、民間人の志願兵から構成される義勇軍、中でも第3中隊第7小隊の戦いを追体験することができました。PS3の作品ですが、ぜひ遊んでほしいゲームです。

『戦場のヴァルキュリア3』 『戦場のヴァルキュリア3』
『戦場のヴァルキュリア3』 『戦場のヴァルキュリア3』
▲そして『1』『2』をプレイした人にとってうれしいのが、シリーズのオールキャスト集結ともいえるようなエピソードの数々。『1』や『2』でメインどころだった敵味方のキャラクターが物語の随所で顔を出し、プレイヤーの率いる部隊との絡みを見せてくれます。

 話を『3』に戻せば、今作は『1』と同じ“帝国のガリア侵攻”の中で戦った、軍の書類上には存在しない名無しの部隊――ネームレスの物語が描かれています。主人公は、士官学校を主席で卒業したクルト・アーヴィング少尉。1章では、新米士官ながらも非凡さを見せ付ける彼が、国家反逆罪の濡れ衣を着せられてネームレスへと落とされる経緯が描かれ、ストーリーが始まります。

『戦場のヴァルキュリア3』 『戦場のヴァルキュリア3』
▲懲罰部隊として割りばしのような使い捨ての扱いを受けるネームレスにあっても、「どうして最高の結果を求めようとしない? 逃げて、何が生まれるんだ?」と言い、現実を変える意志と行動力を持ち合わせたクルト。自分にも結果にも妥協しない彼の姿と、極限状態における隊員たちのドラマは、個人的にはシリーズ最高だと思っています。

 また、キャラクター配置も見どころが多く、世界観の根幹にかかわる“ヴァルキュリア人”と“ダルクス人”それぞれを象徴するヒロインのリエラとイムカ、ライバルとして登場するダハウなど、練り込まれたキャラクターが多いです。リエラとイムカの対比、クルトとダハウの対比は、ストーリーや“戦場”という舞台と混ざり合って、非常に物語をおもしろくしています。しかも以前の話やキャラクターも絡んでくるような部分は、『3』でも繰り返し、あるいは別の角度から描写されているので、『1』や『2』を遊んでいなくても楽しめるでしょう。

『戦場のヴァルキュリア3』
▲性格やバックボーンなど、対照的なダブルヒロインのリエラ(右)とイムカ(左)。2人についての物語は、最終的にどちらか1人を選ぶことになります。
『戦場のヴァルキュリア3』 『戦場のヴァルキュリア3』
▲互いに、軍の外様に位置する部隊を率いるクルトとダハウ。2人の設定は、公式サイトなどを見るだけでも似ている部分が多いです。詳しくはネタバレになるので書けませんが、現実を変えるために行動をやめない2人のドラマは熱いですよ!

 あと個人的には、物語やキャラクターを支える世界観、世界設定の作り込みが一番すごいと感じていて、『1』と同じ戦争を題材に別の話を描けること自体が、その証明でもあると思います。『3』ではゲーム内で見られる設定のボリュームも充実していて、設定資料である“博物総覧”の項目が豊富な上、ゲーム内の出来事を客観的に描く“新聞”も2種類用意されているほどです。たまにこれらを覗いてみると、歴史を楽しむ感覚でゲームの世界観を楽しめると思います。

●断章――個性豊かなネームレスの隊員たち

 キャラクターやストーリーの魅力に触れたついでに、ネームレスの隊員たち、中でも彼らのエクストラエピソード“断章”についても書いておきたいと思います。今さらの説明ですが、『戦場のヴァルキュリア3』は、進軍マップというマップ上でミッションやエピソードを選択しながら、ゲームを進めていくことになります。さらに大きなくくりとして“ガリア全域マップ”があり、ここでメインストーリーと断章を切り替えられるんですね。

『戦場のヴァルキュリア3』
▲これが進軍マップ。エピソードはいつでも振り返ることが可能です。

 断章では、ネームレス隊員のそれぞれについて深く掘り下げたエピソードと、それに付随するミッションを選択可能。懲罰部隊らしい重くて濃い話が多めですが、会話に軽妙洒脱(けいみょうしゃだつ)な味もあって、本編とは違ったおもしろさがあります。プレイしなくてもクリアはできますが、部隊強化の意味合いからも断章が出現したらすぐにやった方がいいと思います。ミッション自体の報酬が役立つのはもちろん、キャラクター自身が大事な経験を積むことにより“いいこと”が起きますから。

『戦場のヴァルキュリア3』
▲ネームレスの隊員たち。ゲームでは、キャラクターの性格を会話で描写するだけでなく、“ポテンシャル”という能力設定で表現しているのも特徴。ゲームシステムとキャラクターの性格が密接に絡んでいるのも、本作のいいところではないでしょうか。

■3章――“選べる”『戦場のヴァルキュリア3』

 BLiTZのおもしろさについては、最初に話した通りです。ユニットの性能だけで敵を押し切るのは難しく、勝敗はプレイヤーの戦術にゆだねられる。けれど『3』では、自由な兵種変更とマスターテーブルによって、キャラクターを自分好みに強化していくことも可能です。

 マスターテーブルは、アクションモード中に覚えるバトルポテンシャル(一定条件で発動する特殊効果)を管理するシステムで、直接育成を行うシステムではありません。けれど、異なる兵種のバトルポテンシャル同士がマスターテーブル上で1ライン上につながると、ハイポテンシャルという高い効果のバトルポテンシャルを習得できるので、ユニットの兵種を選ぶ際の参考になります。

『戦場のヴァルキュリア3』 『戦場のヴァルキュリア3』
▲どのユニットでも自由に行えるようになった兵種変更と、新要素のマスターテーブルはワンセットのシステム。マスターテーブル上で兵種変更ができるとよかったのですが……。ちなみに兵種は『2』より整理され、特徴をつかみやすくなりました。
『戦場のヴァルキュリア3』 『戦場のヴァルキュリア3』
▲戦車についても多様なカスタマイズが行えます。対戦車兵の攻撃を除き、歩兵の攻撃をものともしない戦車は、部隊戦力の中核にもなってくれます。

 また『3』では、育成要素以外にもプレイヤーの“選べる”場面が増えています。たとえばミッションの勝利条件が2つあるケースもあり、どちらでクリアしたかによって、その後の展開に若干の差異が生じる局面もありました。

『戦場のヴァルキュリア3』 『戦場のヴァルキュリア3』
▲勝利条件の2つあるケースは、体験版のミッションにも収録されていました。体験版では勝ち方によってその後のイベントが変わりましたが、製品版ではそれだけに留まりません。

 進軍マップ上でも、クリアすることで特定ミッションへの支援砲撃が止んだり、2つの進軍ルート(ミッション)から1つを選択する分岐があったり、ゲーム中のさまざまな場面で“選べる”ことが増えています。さらにミッション中以外は、いつでも難易度を“選べる”ので、クリアできないミッションが出てきたら難易度を下げてみるといいと思います。

●断章――新たな切り札“特殊化”について

 『3』の新要素として“特殊化”というものもあります。これは、主にクルト、リエラ、イムカが使える必殺技のようなもので、特にリエラの“ヴァルキュリア”とイムカの“武装開放”は、中盤にならないと使えないだけに超強力です。倒された敵が「ユニットの性能のおかげ」と負け惜しみを言ってもいいくらい。その代わり、CPの他に“SP”という専用ポイントを消費するので、使えるのは1ミッション中に最多で3回。切り札ってやつですね。

『戦場のヴァルキュリア3』 『戦場のヴァルキュリア3』
▲クルト、リエラ、イムカの特殊化の中では、画面内の敵すべてを攻撃するイムカの“武装開放”がオススメ。『3』は敵の数も多いので、敵が集まってきたタイミングで使うと、かなりのCP節約になります。

 ちなみにこの特殊化、あまりにも強力なので、これまでのシリーズをプレイした人は特殊化を使わない“縛りプレイ”などもアリかもしれません。ボス戦などは使わないとつらいかもしれませんが……。


■4章――誰がための『戦場のヴァルキュリア3』

『戦場のヴァルキュリア3』

 さて、まとめです。ここまで紹介してきた『戦場のヴァルキュリア3』ですが、システム的には新要素が追加されたり、兵種が見直されたりしていますが、『2』をプレイした人であれば同じ感覚で遊びながら、すぐになじめると思います。お馴染みのマップも登場するので、『2』で培ったノウハウがかなり使えるはずです。

 『1』をプレイした人にとっては、やっぱりストーリーはかなりの見どころかと。同じ時期に起きた別の戦いということで楽しめると思いますし、やっぱり戦争をテーマにした作品、しかもそこに人種迫害などの話も加わると、陰のある設定や現実を見据えた男たちの対立といった物語は合うと思います。

 まだシリーズをプレイしたことのない人であれば、歴史やSLGの好きな人にオススメできます。正直、SLGに慣れていないと難しく感じると思うので、その場合は最初からイージーでプレイするといいかもしれません。

 ちなみに、今春にはOVA『戦場のヴァルキュリア3 誰がための銃瘡』も始動します。全2話の構成で、ゲームの中盤以降から切り取られた話のようです。詳しくはOVA公式サイトで確認してください。インタビューも掲載されていますので!


(C)SEGA

データ

▼『戦場のヴァルキュリア3』ダウンロード版
■メーカー:セガ
■対応機種:PSP
■ジャンル:S・RPG
■発売日:2011年1月27日
■価格:5,600円(税込)

関連サイト

前へ 1 2