News

2011年2月14日(月)

電撃大賞銀賞受賞作『はたらく魔王さま!』和ヶ原聡司先生インタビュー!

文:電撃オンライン

前へ 1 2 3

■気になるカバーのデキは?

――イラストについてお聞きします。まず、ご覧になった率直な感想を聞かせてください。

 実際に上がってきたキャラクターデザインの絵を見て「負けた!」と思いました。「俺はこの絵が見えてなかった!」と。特に千穂については、こんなにかわいいキャラクターを想定していませんでした。他の3人については、細かく指定をしたのである程度思っていた通りだったのですが、やはり僕の頭では思い浮かばないようなデザインになっていましたね。魔王がものすごくカッコよくて、「もっとカッコ悪くしてください」と、普通で考えたらあまりないであろうお願いをしました。あとは、着ているものも安っぽくしてくださいと。彼らは庶民派なので(笑)。

――カバーイラストについてはどうですか。

 完璧以上ですね。最初にラフをもらった時に「スゲーのきた!」と驚きました。

――すでに挿絵の作業は進んでいるとは思うのですが、先生がイラスト化してほしいシーンはどこですか?

 大家さんをイラスト化してほしいんですよ。他のキャラクターは、ある程度カッコよかったりかわいかったりと想像がつくんですが、俺以外の人が大家さんを描いたらどうなるんだろうという興味があります。

――執筆している時点で、キャラクターのデザインは頭の中にあったんですか?

 魔王以外はありました。魔王は、無個性な人間にしようと考えていたので。主人公ということもあったので、親しみやすさを考えてとことん地味に書こうと思いました。いそうなんだけれど、明日になったら忘れてもいいかなというような。魔王だけは最後まで自分の中に絵がありませんでした。“ユニシロ(作中に登場する衣類店)の服を着ている、中肉中背の20代の若者”ぐらいのビジョンがあっただけです。

――作中で、好きなキャラクターを教えてもらってもいいですか?

 作者なので全員好きなのですが……強いて挙げるならアルシエルですね。全員の中で、コイツが一番理想と現実の狭間で苦しんでいると思うんです。申し訳ないとは思いつつも、それを書くのがものすごく楽しいんです(笑)。勇者もその枠にあてはまると思うんですが、理想と現実の狭間で苦悩しながら生きている人って、とても魅力的なんです。自分で書く意味でも、アルシエルとエミリアは好きなキャラクターです。

――モデルになったキャラクターはいるんですか?

 唯一、アルシエルにだけ現実のモデルがいます。芝居仲間なのですが、本当にいい芝居をするんですよ。書いていて困った時には、彼ならどうするかなと考えました。アルシエルの身長が高いのも彼の影響なんですよ。生真面目なんですけど、冗談がわからないタイプではなく、すごく器用なんです。

――そのままですね(笑)。

 そうなんです(笑)。あとはモデルになった人はいないですね……。大家さんに、『ハウルの動く城』の荒れ地の魔女のようなイメージはありましたが。ゴージャスで、明らかに趣味が悪いんだけど、なぜか気品が漂うような。

――影響を受けた作品があれば教えてもらえますか?

 浅田次郎さんの『シェエラザード』です。もともと浅田次郎さんが好きだったのですが、この本を読んだ時にどんでん返しとキャラの配置が神がかってるなと思ったんです。何かを作る時には、まず浅田次郎さんの本を読んで自分を奮起します。『蒼穹の昴』や『日輪の遺産』も好きですね。固いものもコメディタッチのものも、1人称のものも3人称のものも作風も豊富なんです。元自衛官の方なので、エッセイ本もかなり派手でおもしろいです。

――最初に浅田次郎さんの本を読んだのはいつごろだったんですか?

 高校2~3年生か大学生ぐらいのころでしょうか。本当に衝撃的でした。

――他に影響を受けた作品はありますか?

 『ナルニア国物語』ですね。母が好きで、初版本を持っているんです。それを小学生ぐらいのころに読んで、ファンタジーの下地ができたかなと思います。今思えばかなり影響を受けましたね。必ずしも正義の味方が悪いやつを倒すだけでないというのを、『ナルニア国物語』で初めて知りました。

 あとは、『鋼の錬金術師』です。世界観の作り込みが半端ないなと思うんです。たとえば、コマに描かれてはいないんだけれど、その後ろにはきっと汽車が走っていて、その汽車を作った人間が作者の中に存在しているんだろうなと。この建物を建てた建築士はどういう学校に通っていたのかとか、その学校はどんな制度なのかとか。ファンタジー世界でありながら車があったり、錬金術が発達していたり。それがすごいなと思いますね。

――電撃文庫を知ったのはどんな作品からですか?

 祭紀りゅーじさんの『テイルズオブデスティニー ルーティのルール』で電撃文庫を知りました。その後に友だちから勧められて『キノの旅』を買って読んだんです。あとは『狼と香辛料』もとても好きな作品です。やっぱりファンタジーが好きなんだと思います。

――それでは最後に、読者へのメッセージをお願いします。

 読者の皆さんの人生から、少しだけお時間を頂戴(ちょうだい)します。アルバイト暮らしの魔王たちが、それに見合う何かをお返しできれば幸いです。

(C)2011 ASCII MEDIA WORKS All rights reserved.

データ

▼『はたらく魔王さま!』
■発行:アスキー・メディアワークス
■発売日:2011年2月10日
■定価:620円(税込)
 
■『はたらく魔王さま!』の購入はこちら
Amazon.co.jp

関連サイト

前へ 1 2 3