2011年3月25日(金)
2月3日~4月28日にかけて、トヨタマーケティングジャパンが作品を募集しているソーシャルアプリのコンテスト“TOYOTA SOCIAL APP AWARD”。そのコンテストについて、マーケティング部マーケティングディレクター・喜馬克治氏にお話を伺った。
“TOYOTA SOCIAL APP AWARD”は、車への関心を高めるソーシャルアプリのアイデアを募集するもので、PC、スマートフォン、ケータイの3部門があり、最優秀企画賞には100万円が贈られる。実際のアプリを作らずに企画だけで応募できるという手軽さも特徴となっている。
しかし、車のトップメーカーであるトヨタが、なぜアプリのアワードを開催することになったのか? そういった疑問を喜馬氏にぶつけてみたので、コンテストに興味がある人や、これからアイデアを練ろうとしている人はぜひご覧いただきたい。
▲トヨタマーケティングジャパン マーケティング部マーケティングディレクター・喜馬克治氏 |
――なぜ、トヨタがソーシャルアプリのアイデアを募集するのですか?
今、車に対する関心が若い人を中心に下がってきています。アワードを開催し、車の関心を高めるアプリのアイデアをいただくことで、その状況を変えたいという思いがあります。“若者の車離れ”について、私たち自身が選択肢を狭めていった結果、起こったことだと感じています。車は決まった目的地を往復するだけ。いかに低燃費で、手軽に乗れるかが重要。そこに焦点を定めた製品ばかりリリースして、趣向性の高い車は減らしてきた。だから“車は楽しいものじゃない”というイメージが付いてしまったのかもしれません。
潜在的には車の楽しさに期待する人もいるけれど、そうした経緯の中で関心が低くなってしまいました。「これは相当概念を変えて、車ではない別のステージからアプローチしないと気持ちを取り戻せないのではないか?」と考えて、ソーシャルアプリという舞台を選びました。
――自社でアプリを作るという選択肢はなかったのでしょうか。
我々から車の楽しさを限定的に提供するよりも、みんなと一緒に楽しさを作っていくスタイルの方が現代的だと感じたんです。
――ご自身でもソーシャルアプリを使われていますか?
もちろん社内でも広まっています。ソーシャルサービスでは、単なるWeb調査では吸い上げにくい本音が聞ける。仕事だけでなく、日常生活で使っていますよ。たとえばゴルフ好きの人は、自分のスコアを登録して履歴を残しています。そうしておけば、ゴルフ仲間にメールを送らなくても自然と自分のアクションを伝えられる。同じことはリアルの世界でずっとやっていたかもしれませんが、それがソーシャルに移ったことで、見え方が変わって“ゴルフっておもしろいかも”と思わせる瞬間が出てくる。そんな魅力がソーシャルアプリにはあるんじゃないかと実感しています。
――プログラムができなくても、アイデアだけで応募できるようにした意図は何ですか?
アプリのアワードというと、結局のところ技術と資金を持っているところが勝ってしまうことが多いですよね。でも今回はプロアマや車業界の内外を問わず、いいアプリを募集したかったんです。そのために“アイデアで勝負できる”という部分にこだわりました。
――協賛企業にはモバゲーやGREE、mixiといった、普段はライバルのプラットフォームが名前を連ねていますよね。これは、かなりめずらしいことだと思いますが。
最初は審査員を探していたんです。車のアプリを評価するとなると、自動車評論家の方が思い付きます。しかし今回のアワードでは、もっとソーシャルの楽しさを追求されている方々のほうが合っていると考えました。そうした流れの中で各社様にお話をさせていただいたら、審査員だけでなく、アイデアをアプリ化する際にも協力したいという話が出てきたので、後援企業とさせていただいています。
――なぜここまで多くのソーシャルサービスが協力してくれたのでしょうか。
このアワードには“日本の新しい才能を発掘する”という志があって、そこに共感していただけたんだと思います。実はひと口に“ソーシャル”といっても、その定義は各社様で違っています。各社様ともきちんと概念では住みわけがなされているんです。これに対し僕らトヨタが指す“ソーシャル”という言葉の意味はかなり広く、だからここに集まる意義を感じていただけているのかと思います。
――アプリを作る方々のためにお聞きしたいんですが、トヨタにとっての“今の車観”というのはありますか?
車は“小空間”ですので、スタンドアローンで楽しむものでした。今の車ユーザーで若い人を見ると、車のファン同士がコミュニティを持つという楽しみが生まれています。オフ会も意外多くて、車のチューンナップ好きだけでなくて、痛車のオーナーさんも参加していたりと幅が広い。40代以上の車ファンだと“俺たちのカラーはコレ”と閉鎖的になりがちですが、今は“これもアリだよね。それもアリだよね”とフラットに認めてしまう。そこがソーシャルをいかした車の楽しさなんだなと思います。
――ソーシャルアプリというと、真っ先にゲームを連想してしまいますが、それ以外のジャンルでもよいのでしょうか?
もちろん車の新しい魅力を訴えてくれれば、コミュニケーション系のアプリもありです。
――今回、PC、スマートフォン、ケータイの3部門があります。各部門をまたぐアプリでもかまわないのですか?
賞の都合上で分けていますが、もちろんアリです。複数分野をまたがるアプリが最優秀賞に選ばれた場合、どこかに分類します。
──優秀賞をもらったアイデアは、各社がアプリ化するのでしょうか。
いいと認められるアイデアが出てきた場合、応募した人が配信プラットフォームを選べます。特定プラットフォームにするか、オープンにするかも自由です。
――最後に、時代を抜きにして、トヨタの皆さんは車のどこが魅力だと思っていますか?
“いつでもどこでも思い描いたところに行けるところ”ですね。電車や飛行機と異なり、移動しているすべての瞬間がターミナルになるので、未知の場所を発見しやすい。人間が移動する際に最も合理的なツールだし、その移動がもたらしてくれる価値が大きい。移動することで人生が豊かになる、新しい発見がある。そこが車の貢献できるところじゃないかと。僕らがそんなことを脈々と考えてきています。ただ、考えが限定されてしまうと困るので、この話に“当て”にこなくてもいいです(笑)。
車自体は物心つく前の子どもはまったく否定しないし、基本的に男の子なら大好きなんです。でも、後天的に情報を得たり、生活環境が変わったり、子どものころの“わくわく感”に答えられる車種がないことで、離れていってしまう。そうした後天的情報に左右される前の人々のアイデアも聞いてみたいです。小学生からプロの会社に勤めてる方まで、皆さんふるってご応募ください。
(テキスト:広田稔)
■ソーシャルアプリアウォード“TOYOTA SOCIAL APP AWARD”
【募集期間】2011年2月3日~4月28日
【テーマ】日本の新しい才能が、クルマをもっと楽しくする!
【応募条件】PC、モバイル、スマートフォンなどマルチデバイスで動作するアプリであること
(※スタンドアロン型およびコンソールゲームはエントリー不可)
【賞金】総額300万円(※PC、モバイル、スマートフォンの分野ごとに100万円)