2011年6月14日(火)
セガから6月9日に発売されたPS3用ソフト『龍が如く OF THE END』。本作とフィッツコーポレーションのコラボで生まれた男性用香水『ドラマティック パルファム ブラックドラゴン』の開発スタッフに、インタビューを行った。
『龍が如く OF THE END』は、セガの人気A・AVG『龍が如く』シリーズの最新作。舞台となる巨大歓楽街・神室町は、今作ではゾンビであふれかえる街へと変ぼうする。バトルも、大量のゾンビを銃で撃つ“ガンショットバトル”がメインとなり、新たな切り口で描かれているタイトルだ。
『龍が如く』シリーズとフィッツコーポレーションのコラボは、前作『龍が如く4 伝説を継ぐもの(以下、龍が如く4)』に続いて2度目となる。今回のコラボで生まれた香水『ブラックドラゴン』は、シリーズを手掛ける名越稔洋監督とともに開発したオリジナルのもの。今年の2月より一部店舗で先行発売されているだけでなく、ゲーム中のアイテムとしても登場しており、使用すると香りで女性キャラクターに影響を与える。
今回のインタビューでは、フィッツコーポレーションのマーケティング部A&Pの桜井孝さんと、フレグランス プロダクトマネージャーの奥村玲生さんに話を伺った。香水の話から、共同開発を行った名越監督にまつわるエピソードまで、さまざまな開発秘話が飛び出したのでご覧いただきたい。(インタビュー中の名前は敬称略)
▲左が奥村さんで、右が桜井さん。ゲームとのコラボから生まれた香水について、語ってくれた。 |
――まずは、フィッツコーポレーションという会社について教えていただけますか?
桜井:弊社は香水と化粧品をメインで取り扱っており、あとは一部アルコール飲料を扱っています。香水や化粧品には、オリジナルで作っている商品と、海外ブランドと契約して輸入しているものがあります。
――お2人は、普段どういった仕事をされているのでしょう?
奥村:私は国内で製造しているオリジナル香水の商品開発です。入社して以来、男性用の香水をメインで開発してきました。
桜井:僕は商品をプロモーションする立場です。
――ゲーム業界は、開発や編集を含めて男性スタッフが多いのですが、化粧品業界はやはり女性比率が高いのですか?
奥村:女性が多く、比率だと7対3くらいです。なので男性用の香水も、女性が作っています。
桜井:男性のほとんどは営業ですね。商品企画やPR、販促は女性が占めている業界です。
――ちなみに、お2人はどういう香りが好きですか?
奥村:男性も女性も使えるようなユニセックスなもので、フルーティフローラルな甘めの香りが好きです。
桜井:弊社の『ライジングウェーブ』というシリーズに、元プロ野球選手の新庄剛志さんと一緒に作った『ライジングウェーブ フリー(ライトブルー)』があります。新庄さんも香水が好きで、「もっと日本人は香水を使うべきだ」という啓蒙活動をしているのでコラボしたんですが、この商品の香りがすごく好みで、普段から使っています。
奥村:この『ライジングウェーブ フリー(ライトブルー)』は、ヒット商品として昨年フレグランス大賞を受賞しました。新庄さんに加えて『ライジングウェーブ エターナル』をプロデュースしているパンツェッタ・ジローラモさんとも商品を作っていた実績があり、弊社は、コラボレーションを得意としています。今回、短い期間でしたがしっかりとした商品ができあがった理由には、そういう背景があったのかなと思います。
――そもそもの話になりますが、『龍が如く OF THE END』とコラボすることになったきっかけを教えてください。
桜井:前作『龍が如く4』でパッケージコラボをやらせていただきました。その時は、『ドラマティック パルファム オム 1(龍が如くver.)』という、既存の商品の限定パッケージデザインを発売しました。ソフトが発売されてしばらくしてから、セガ様から新作がリリースされることを教えていただいた際に、「今度はもう少し踏み込んで、オリジナル商品の開発をやらせていただきたい」という提案をさせていただきました。
奥村:弊社が扱っている『ドラマティック パルファム』というブランドは“夜”、“男”、“黒”をコンセプトにしたブランドなんです。前作のゲーム中では、キャバ嬢と会う時に使っておくと好感度が上がる"もてアイテム"として登場していました。香水はコンセプトストーリーが重要なので、ゲームのストーリー性を軸にした商品を開発できると考えたんです。打ち合わせをしていく中で、名越監督が香水に詳しいということを伺ったので、「一緒に開発できないでしょうか?」という流れになりました。
――商品化を提案したのはいつごろの話だったのでしょうか?
桜井:去年の8月くらいから打ち合わせを始めて、11月ごろだったと思います。商品化がギリギリ間に合うということで、動き出しました。
奥村:普段の商品化は長いもので10カ月くらいかけるので、今回はかなり急ピッチでの進行でした。
――社内ではどんな反応がありましたか?
奥村:ゲームとコラボしたのは、前回が初のこと。そのため予想が付かなかったのですが、『龍が如く』という人気シリーズとのコラボということで、すごく反響があり大盛況でした。そのために、社内は乗り気で「ぜひ進めていこう」という形でした。
――香水を購入していたのは、男性だったのでしょうか?
桜井:ゲームのファン層を考えるとおそらく男性のお客様が多かったと思われます。売り場のイメージも、黒を基調とした無骨な男らしいイメージにしていたので。
奥村:売り場に加えて、香りもマスキュリン(男性的)なタイプで、男性を意識した商品として作っていました。
――香水にはストーリー性が重要ということでしたが、『ブラックドラゴン』という名称にした理由は?
奥村:『龍が如く』の“龍”に、夜をイメージした色の“黒”を合わせて『ブラックドラゴン』にしました。単純なんですが、イメージしやすい名前ということでこれに決めました。
――先ほどから、商品名やイメージの中に色が出てきているのですが、色と匂いというのは密接な関係があるのですか?
奥村:香水という商品は、売り場に着いた時に見た目で入るんです。これを手に取りたいか、いい匂いがしそうかどうかというのは、たいてい色やデザインで判断されます。たとえば、墨汁のような真っ黒の溶液が入っていたら、匂いをかぎたくなくなる。逆に透明感があり、キレイな色であれば、手に取ろうという思考になる。もちろんそれだけでの要素ではないんですが、ビジュアルは大事ですね。売れている香水は、見た目がやさしく、手に取りやすいものだと思います。
――なるほど。商品を開発する上で、名越さんはどういったかかわり方をしたのでしょう?
桜井:香りの選定ですね。
奥村:いくつか持っていった香りサンプルの中から、名越監督に直感で判断してもらいました。名越監督もかなり香水がお好きということで、「これはあの商品の香りに似ているね」とか「何系統の香りだね」とかコメントをいただいたり、好きな香りの系統をお聞きしたりしながらの選定でした。
――香水を作っている方が「かなり好き」というくらいに、名越監督は香水に詳しかったのですか?
奥村:実は、持参した香水について説明をしようと思ったところ「説明を聞くと、先入観で匂いをかいでしまうので知りたくない」とおっしゃり、説明を受けずにかいだ印象だけで、選んでいました。ここから、かなり香りについてこだわりがあると感じましたね。
――ちなみに説明は、どういうものを用意していたのでしょう?
奥村:香水は、トップ、ミドル、ラストという3つの要素、通称“香りのピラミッド”と呼ばれるものから成り立っています。香料が長く残るものと、すぐに消えていくものでは成分が異なるので、その成分が書かれたものを用意していました。さらに、香りの持続性を段階的に表したものを説明しようとしていました。
――3つの要素は、食べ物でいうと“口に入れた瞬間”と“噛んでいる時”、そして“後味”という感じでしょうか?
奥村:そんなイメージです(笑)。キャンディに、途中で味が変化するものがありますよね? ああいう感じです。
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