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2011年7月20日(水)

『アーマード・コア V』の徹底したこだわりとは? 鍋島プロデューサーに聞く

文:電撃オンライン

■1つずつテクニックを覚えていく

『アーマード・コア V』

――アクションの部分についても伺いたいと思います。アクション部分も、全般にわたって変わりましたよね。普通のブーストも、ON/OFF切り替え式になりましたし。

 これも武器の話と同じで、複数要件が絡み合って生まれているので、単純にはいえないのですが……。1つは、動きの自由度を維持しながら操作を簡単にしたい、ということです。そのすごく大きな要素がブーストアクション。以前にもお話した通り、今まではあれで指が1本必ず制限されていたので、常に同時押しをしているのが、やはり操作の難易度を引き上げている要因になっていたと思います。だから『ACV』は、この問題の解決に取り組みました。

 それから、スピード感のある戦闘をさせたいというのが『AC』の1つの命題です。エネルギーゲージは、とにかくハイスピードに動き回ろうと思ったら、スピード感を阻害する要因にもなり得るので、「どうして必要なのか?」という話が毎回出てくるんです。今回も必要だという判断をしましたが、何に使うのかについては、ちょっと変えています。

――どのような点で変わったのですか?

 今までの『AC』、特にPS2以前の作品は、ブーストするとエネルギーゲージが減るゲームだったと思います。これはエネルギーゲージが、ゲームの“速さ”に直結している分、奥深さと同時にわかりにくさも生んでいました。

 どういうことかを話すと、初めてプレイする人は特に、機体の耐久値であるAPに目がいってしまうと思うんですよ。APはゼロになったら負けるので大事ですが、突き詰めていくと、実際に勝つためには、動きの方が意味が大きかったんです。その源がエネルギーゲージになっている。

 いかに自分のエネルギーゲージを使わず、相手のエネルギーゲージを使わせるか、エネルギーゲージの削り合いみたいな立ち回りが重要だったわけです。いわゆる“エネルギー管理”がうまい方が勝つ、という。

 けれどエネルギーゲージは、ゲームの基本的な移動法であるブースト移動をするだけで、当たり前に消費するものですし、ゲームを始めた段階だと、どうしてもわかりやすい分、APのほうに目がいってしまう。エネルギーゲージの重要性については、どうしても隠れてしまいがちだったんです。

――すると、ブーストするとエネルギーゲージが減る、というゲームではなくなるのでしょうか?

 基本的にはそうです。ゲームデザインを考え直した時、普通にブーストできる高速アクションのゲームという前提があった上で、わかりやすくもしたい。さらに奥深さも残したい。その全部を考えた時に、普通のブーストは無条件に行えてもいいんじゃないか、と考えています。

『アーマード・コア V』

――それは、普通のブーストではエネルギーゲージがほとんど減らないということですか?

 ON/OFFで切り替える普通のブーストに関しては、今はまったく減らないですね。じゃあ歩くことに何の意味があるの、という話になると思うんですが、そこは今回、地形を生かして戦うことがかかわってきます。

 市街地とか、相当入り組んだところで戦うゲームになっているので、ブーストするとぶつかるんですよ。ブーストを使うと、かえって動きにくいみたいな状況もある。そういうところでマメにON/OFFを切り替える、といった必要性はかなりあると思います。

――これまで、そこまで大きく地形が戦いに影響することはなかったですよね。

 そうですね。特に『4』のシリーズは、完全に背景になっていたと思います。あれは超高速戦闘がテーマだったのでやむをえないですが。入り組んだ場所をマッハで飛べるワケないですから。だから地形は、コンセプトに対して一番犠牲になっているところだったんですね。そこをきちんと作れば、全然違う『AC』ができあがるんじゃないか、と考えて『ACV』を作ってきました。そこに適合した仕組みという意味でブーストのON/OFFとか、エネルギーゲージが減らない仕様とかを採り入れています。

『アーマード・コア V』

――すると『ACV』では、エネルギーゲージはどのような役割を果たすのでしょうか?

 先ほど話したTE武器を使う時と、グライドブーストやハイブーストなど、特殊なアクションを使う時に消費します。だから、単純に初めて触った人が動かす分には、あまりエネルギーゲージは意識しなくていいですが、うまい人の動きをマネしようとすると、とたんにゲージの意味が出てくる作りです。

 ちょっと矛盾した話になりますが、上手になればなるほど、難易度が上がってくる。逆にわかりにくくなってる、とも言えるんです。結局は、エネルギーゲージをうまく使わないと勝てないというところに落ち着くので。普通にブーストしているだけだと、避けられないというのも当然あります。うまい人同士の戦いだと、グライドやドライブ、ハイブーストというアクションを相当駆使した戦いになると思いますし。そこで、今までのようなエネルギーゲージの奪い合いが生まれるでしょうね。

――段階的にテクニックを覚えられるわけですね。

 そうですね。一番目立つのは、RPGや他のACTでもそうですけど、体力、『AC』でいうとAPという値が重要なんだ、というのはわかりやすいですよね。この値がなくなったら死ぬっていうのは、すごく大事じゃないですか。入口はそれでいいと思うんです。普通に動かして、弾を撃って、APを見ていれば遊べるようになっています。

『アーマード・コア V』

――それと今回、ジャンプの概念もかなり変わりましたよね。ブーストで飛べないのには衝撃を受けました。

 基本的に、垂直方向へブーストの力のみで上昇することは、できないようにしています。そうとう迷ったんですが、地形を生かしたアクションをやる上では、今までの“ボタンを押しているだけで飛べる”仕組みだと成立しないだろうと結論付けているんですね。

 ただ、空中戦みたいなことが一切できない、という風にするのも『AC』じゃない。単純にボタン押しで飛んじゃうと地形の意味がなくて『4』と同じだし、それでも飛び合いをするためには? と考えた結果、1段プロセスを設けることにしました。それがブーストドライブですね。高い建物とかオブジェクトとかがあって、それを利用して高いところまで行って飛ぶと、高く飛ぶことができる仕組みにしています。

――個人的には、ブーストドライブはかなりテクニックの磨きどころだなと思いました。

 そうですね。するとタンクの立場は、となりますが。

――でも、タンクについてもいろいろと話を伺えましたよ。

 なぜか、僕はタンクが好きっていうことになっているんですよ。何ででしょうね(笑)。

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