2011年8月4日(木)
――全体的にアーティスティックな雰囲気が漂っていると感じたのですが、独特の空気感は上杉忠弘さんをビジュアルアートに起用したことで生まれたのでしょうか?
まさにそうですね。もちろん、こちらからリクエストはしていますが、それを集約してクリエイトしているのは上杉さん。上杉さんでなければ、こういうテイストのものには仕上がらなかったので、お願いしてよかったと、すごく思っています。
――上杉さんを起用することになった経緯は?
私は、途中からディレクターに専念したんですが、最初にこのゲームを立ち上げた時はプロデューサーも兼任していたんです。その立ち上げ時に「ゲームを売る時に話題性が欲しい」と、プロデューサー目線で思っていたことがありました。その時に、上杉さんがアニメ映画『コララインとボタンの魔女 3D』で、第37回アニー賞の最優秀美術賞を日本人で初めて取られたことを聞き、この方にお願いできれば話題になると思ったんですね。もちろん映画自体も大好きです。
上杉さんの絵なら、ヘンテコであったりおどろおどろしくもあったりする『謎惑館』の雰囲気にマッチして、さらに万人に幅広く受け入れられるのではないか。今までに見たことがないような世界をクリエイトしていただけるのでは? と思ったのが、起用した理由ですね。
――ちなみに中井さんは、なぜディレクターの専念になったのでしょう?
単純にキャパオーバーだったからです(苦笑)。最初は、このゲームをつくりながら別のタイトルもつくっていたんです。ところが両方受け持つのは大変になってきたので、別のタイトルのチームからは抜け、さらに新妻(良太)プロデューサーを迎え入れて、ディレクターに専念しました。新妻プロデューサーが入ってきたのは、試作品が完成した時ぐらいでしたね。北島さんや上杉さんには、私が「こんな人と作りたい!」と彼に伝えて、ルートを見つけてきてもらい、2人でお願いしに行きました。
――グラフィック、演出面でこだわった点はどこですか?
“よそにはない独特のもの”と“洗練されたハイセンスなもの”ですね。あとは“わかりやすくて楽しいこと”にこだわりました。ネタについてOKかどうかは、私の脳みそに聞くと、だいたい答えてくれます。便利な脳ですね(笑)……脳がOKならば問題ないし、引っかかったら再考する。だから開発チームは、ゲームについてはほぼ理解していますが、「最終的には中井さんに聞かないとわからないよね」って話しています(笑)。とはいえ、私も自分の脳みそに聞かないとわからないです(笑)。
――OKが出るまで、リテイクするのでしょうか?
そうですね。引っかかった時は何かが間違っていて、突き詰めたらその答えも出ます。ですので今、ゲームに入っているものは“間違いのないもの”ばかりだと思います。
――プレイしていて、下画面に描写されるモヤモヤが気になったのですが……。
そこに気付きましたか! そこはこだわりポイントなんですよ。これを作るのに、1カ月半……2カ月かな、それくらいかかっているので。「かかりすぎやろ!」と思うんですけどね(笑)。
――なぜ、この描写を出そうと思ったのですか?
2画面あるので、とりあえずいつも何か出しておきたいと思ったんです。Windows Media Playerのように、音の強弱で模様が変化するのが欲しいと思い、さらに画面をタッチすることによっても動きがあるようにしたいと思いました。そこで「下画面に、謎らしさをかもし出している画面を作ってほしい」というオーダーを出したのですが、「どうやってプログラムしたらいいか、まったくわかりません」と言われて……。あれは、プログラマーとデザイナーに色々と頑張ってもらいました。ただ途中で処理を食いすぎて、ゲームが動かなくなったこともありました(笑)。
――え!? とりあえず出している画面のせいで、ゲームが動かなくなってしまったんですか?
私もよくわかっていないんですが、かなり複雑なことをやっているらしいんですね。画像をリアルタイムで変形させているので、演算処理によって負荷がかかるために、動かなくなったようです。最終的には高速化を図ったので、だいぶ軽くなりましたけど。
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