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2011年10月7日(金)

【Spot the 電撃文庫】事件を解決するのは“おいしい料理”!? グルメラブコメ『白奈さん、おいしくいただいちゃいます』の似鳥航一先生インタビュー

文:電撃オンライン

 電撃文庫の作家陣によるメールインタビューをお届けしていく“Spot the 電撃文庫”。第8回となる今回は、『白奈さん、おいしくいただいちゃいます』の作者・似鳥航一先生のインタビューをお届けする。

『人見知り部は健全です』
▲瑠奈璃亜先生が描く『白奈さん、おいしくいただいちゃいます』の表紙イラスト。

 本作は、天才的な料理のウデを誇る少年・本間玄人(ほんま くろと)と、スーパーモデル並みの外見なのに、“天才バカ”と恐れられる少女・城之内白奈(じょうのうち しろな)の2人が、料理でさまざまな事件を解決していくグルメラブコメ。

 白奈に見込まれたせいで、“料理事件部”なるクラブで活動することになった玄人。玄人は白奈の奇行に戸惑いつつも、持ち込まれてくる事件を料理で解決していくが……?

 料理をメインにした一風変わったラブコメディとなっている本作。執筆に至った経緯や、書く上で悩んだ点などを似鳥先生に伺った。すでに本作を読んだ人もこれから読もうという人も、ぜひご覧いただきたい。

――この作品を書いたキッカケを教えてください。

 グルメマンガを読むのが好きなので、小説で書いたらどうなるか興味がありました。主人公が料理を食べる小説は知っていましたが、主人公が料理を作る話はあまり見かけないので、ぜひそちらに挑戦したいと考えました。

 そして書くならやはりカワイイヒロインとのラブコメと、謎めいた要素も入れたいところ。というワケで何個か案を考え、担当さんに助言をいただき、叩き台の短編を書きました。それを元に改稿していき、最終的には自分でもちょっと読んだことがないタイプの、変わったムードがただようグルメラブコメができあがりました。

――作品の特徴やウリはどこですか?

 グルメラブコメですので、まずはなんといっても“ラブ”です。カワイイ女の子キャラを書くのが好きなので、楽しみながら書きました。キュートな変人ヒロインが大勢出てきます。もちろん、感情や心の動きはちゃんと考えて作ったので、変ながらも魅力的なキャラになっていると思います。また、玄人の幼なじみである未百合(みゆり)というキャラは、瑠奈璃亜さんの素晴らしいイラストとの相乗効果で、ものすごくカワイイです。自分でもすっかり気に入ってしまいました。

 もう1つは、“怪しい事件とそれを解決する料理”です。この物語では“吸血鬼事件”や“宇宙人事件”といった奇々怪々の変事が起こるのですが、それらをすべて料理で解決します。料理でどうやって解決? と、自問しつつ作ったので、破綻のない現実的に納得のいく話になっています。スーパーナチュラルな要素はありません。だからもしかすると明日にでも似たような事件が起こるかも……というのはさすがに言い過ぎですが。

――料理で事件を解決するという、一風変わった設定の本作ですが、執筆する際に悩んだところは?

 料理でどうやって謎を解くのか? なぜそれを食べると解決するのか? といった理由付けです。研究のためにさまざまなグルメマンガを読み直しました。今までそういう点に着目して読んでこなかったので、目からウロコの新発見が多々あり、おかげでより深くグルメマンガを楽しめるようになりました。

――執筆にかかった期間はどれくらいでしたか?

 書くのに2カ月、改稿などに2カ月で、合計4カ月くらいです。

――特にお気に入りのシーンはどこでしょうか?

 冒頭のシーンが気に入っています。ヒロインを拉致した不良集団に、“ある料理”を食べさせて倒すのですが、見本誌を読んだ時に自分でもぷっと吹き出してしまいました。はたから見ると妙なことを大マジメにやっているのがおかしくて楽しいです。

――主人公やヒロインがどういうキャラクターか聞かせてください。

 主人公は本間玄人という高校生で、卓越した料理のウデと知識を持っています。そんな彼の相方がタイトルにもなっている白奈さんで、玄人とはまた違うタイプの料理人です。お嬢様育ちの残念系変人娘で、とてもフリーダムな生き方をしています。食べてはいけないものを食べようとしたり……。

 玄人はそんな白奈に半ばあきれつつも、助けられた恩があるので協力しないワケにいかず、相棒としてともに変な事件の調査に乗り出していきます。

――今後はどういう展開を予定しているんでしょうか? 可能な範囲で教えてください。

 第2巻では“魔術師事件”“時間跳躍者事件”といった珍騒動が起こります。登場する料理はカレーやステーキなど。主人公の過去が少しわかったり、“料理心理学”という奇妙な学問についての設定も多少明かされます。

――ゲームで熱中しているものがあれば教えてください

 『STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)』をやっています。まだクリアしていませんが、ストーリーが非常におもしろくて、オススメです。主役の鳳凰院凶真というキャラクターのおかげで厨二病が好きになりました。

――小説を書く時、特にこだわっているポイントは?

 やはりキャラクターです。書いていて感情移入できるかどうか、なおかつ自分を投影しないように注意しています。「この人はこれこれこういう風に生きてきたから、こういう属性を持っていたのか!」みたいなことに気付くのは、書いていてうれしくなる瞬間です。

 もう1つは、その物語にあったテイストを作ること。使う単語のセレクトや言い回しや文体、漢字の開き具合などでコントロールできます。なんだかんだでムードや雰囲気はとても大事だと思っています。

――執筆中のおもしろエピソードなどがありましたら教えてください。

 グルメラブコメということで、おいしいものを食べようと思い立ち、男友だちと女友だちを誘って、3人でネパール料理店に行った時の出来事です。メニュー片手にいざ注文しようとすると男友だちが、「こっちのセットだとタンドリーチキンも付いてて安いぞ!」と言い出しました。いやそれ、カップルセットなんですが……。ところがネパール人の店員さんは「ああ、問題ないです」と笑顔を向けてきます。問題ないんだ、と思いました。

 というワケで、僕と彼でそれを頼もうとしたのですが、不意に女友だちがこんなことを言い出します。「すみません、カップルって3人でもいけます?」それはすでにカップルとは言わないような。しかしながら、どこまでも親切なネパール人の店員さんは微笑んで、「いけますよ」。……こうしてめでたく3人でカップルセットを食べました。

――アイデアを出す(または集中力を高める)ためにやっていることは?

 リラックスしてぼーっとすることです。でもそれが意外と難しかったりするので、よく仮眠を取ります。1時間の目覚ましタイマーをかけて寝ます。起床直後は、思考と言語のバッファがほどよくリセットされているので、アイデアが浮かびやすいです。自分の場合は寝起きのぼーっとした状態でコーヒーを飲んだりしている間に考えが決まることが多いです。

 また、仮眠を取る時は部屋の明かりを付けたままにしておくのがオススメです。暗くしているとなかなか起きられません(※個人的経験則)。ですので、部屋を明るくしたままアイマスクをして寝るといいかもしれません。蒸しタオル(電子レンジで簡単に作れます)を目のあたりに乗せて休むのも有効です。ただ、火傷をしないようご注意ください。

――現在注目している作家や作品はありますか?

 最近ハマっているのは高田郁さんの『みをつくし料理帖』シリーズで、全巻読んでいます。ものすごくうまいです。おもしろくて、感動があり、元気が出ます。主人公の料理人・澪の姿勢を見習わないと……と思わされることしきりです。

 また、アニメも好きでよく見ます。澪という言葉で思い出したワケではないですが、一番のお気に入りはやはり『けいおん!』です。

――高校生くらいのころに影響を受けた人物・作品は?

 高校生のころはゲームマニアで、ひたすら遊んでいました。『ドラゴンクエスト』『ファイナルファンタジー』『ゼルダの伝説』『女神転生』『ロマンシング サ・ガ』など、どのシリーズも鬼のようにやり込みました。

 また、『女神転生』シリーズの金子一馬さんのキャラデザインが好きで、影響を受けやすい多感な時期だったこともあり、「僕は将来、悪魔絵師になる!」と公言したりしていました(一部の友だちにだけ)。オリジナル悪魔を描いて得意げに見せてみたり。そういえばFAXで友人宅に送りつけたこともあります。……こうして書いていたら体がカユくなってきました。過去の自分を遠くの物陰から観察したいです。

 オチとしては、ゲーム業界に入って初めて開発を担当したソフトが悪魔ならぬモンスター……『ポケットモンスター』関連だったこと。

――今熱中しているものはありますか?

 小説以外はあまりないですが、ボランティア活動など。Yahoo!のマッチングサービスは便利なのでよく使います。

――それでは最後に、読者へメッセージをお願いします。

 ヒロインたちがカワイイ……と自分で読んでいても思ったので、ラブコメ好きの方には気に入っていただけると思います。また、登場する料理は実在の物なので、作り方の記述などは本物です。世間の多くのグルメマンガと同様、読んだ後にちょっとだけ食について詳しくなれますので、そういった知識が好きな方もぜひ。料理もできるだけおいしそうに思えるよう書いたので、きっと幸せな気分になっていただけるはずです。よろしくお願いします!

(C)2011 ASCII MEDIA WORKS 表紙イラスト/ 瑠奈璃亜

データ

▼『白奈さん、おいしくいただいちゃいます』
■発行:アスキー・メディアワークス
■発売日:2011年9月10日
■定価:620円(税込)
 
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Amazon.co.jp

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