2012年1月7日(土)
電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。第19回となる今回は、『探偵失格 愛ト謂ウ病悪ノ罹患、故ニ我々ハ人ヲ殺ス』の作者・中維先生のインタビューを掲載する。
▲ぜろきち先生が描く『探偵失格 愛ト謂ウ病悪ノ罹患、故ニ我々ハ人ヲ殺ス』の表紙イラスト。 |
本作は、呪いなどの不思議な力が実在する世界を舞台にした推理奇譚。物語の軸になるのは、“ひとたび登場すればクラス内に警報が発され清めの塩が撒かれる”と言われるほどの変人・黒塚音子(くろつか ねこ)と、そんな彼女を“お姉ちゃん”と呼び慕っている主人公・空野高(そらの たかし)。ある日、音子に誘われて旅行することになった高は、音子が呪法、占い、まじないの類を専門とする省庁“呪法庁”の尖兵であると知る。
そんな高と音子が訪れたのは、規格外の面子――外法の象徴“不死姫”を筆頭に、武装メイド、謎のドイツ魔女、無類の強さを誇る陸軍の狂信軍人――が集う館・時刻館。“地獄檻”とまで呼ばれるその館で、なんと連続殺人事件が発生してしまい……。
中維先生には、この作品の特徴や小説を書く時にこだわっているポイント、デビューを飾った心境などを話していただいた。なお、電撃文庫 新作紹介ページから本作の試し読みができるので、まだ読んでいない人はこちらも一緒にご覧あれ。
――この作品を書いたキッカケを教えてください。
電撃大賞に応募する際、いろんなジャンルを書いては返り討ちに遭っておりまして、あとに残っためぼしいジャンルが恋愛ものと推理ものだったので、ハードルの高い推理ものに挑戦してしまいました。
――作品の特徴・セールスポイントはどこですか?
作品タイトルからも想像できるとおり、香ばしくひねくれた作品です。本作は現代ファンタジーで、ミステリーで、バトルもしています。“ラーメンとカレーとハンバーグが盛られているコンビニ弁当”のようなものを想像していただければ幸いです。セカンドオピニオンとしての意見では、編集さまいわく“新本格の皮を被ったボーイミーツガール”とのこと。
おそらく昨今のメインストリームから大きく外れてしまうでしょうが、たまには変なのもあっていいかなと。本格推理では決して書けないというか、日本推理協会から石を投げられそうな無茶な設定とキャラがウリです。この作品を拾ってもらえたことで、改めてライトノベルの懐の広さを感じました。
――作品を書く上で悩んだところは?
電撃大賞応募時から作品の結末が二転三転したことです。当初は前代未聞の全滅ENDという三方一両損な結末でした。今思えば、いったい何を考えていたんでしょうか。去年の自分をぶんなぐってやりたいですよ。ええ。
――執筆にかかった期間はどれくらいですか?
電撃大賞に送る際に半年間。さらに改稿期間が約半年間。通算1年間です。世に有名な速筆の先生方がいかに怪物じみているかを痛感しました。
――本作の執筆中に起きたおもしろいエピソードなどありましたら教えてください。
初めて編集部にお邪魔した時、事前にご案内いただいたシャトルバスに乗らずに「自分の道は自分で切り拓くぜオラァ!」と意気込んで、案の定迷子になりました。その帰り、なんと建物内で迷子になりました。さすが電撃文庫編集部です。まさか出口が2階だったとは! 最後は編集部へ速達で送った原稿まで迷子になる始末。余命が3年縮みました。
――主人公やヒロインについて聞かせてください。
主人公は“お姉ちゃん”フェチです。やや重篤な感じの。そんな主人公が狂戦士(バーサーカー)みたいなヒロインに振りまわされます。主人公もヒロインも、作品登場時から何かを失っています。心理的なものであったり、物質的なものであったりと。そのマイナスなスタートから、各々の欠落を埋めようと四苦八苦していき……などと書くと重そうな話ですが、基本はギャグパート多めなので、さほど深刻さはないです。
――特にお気に入りのシーンはどこですか?
メイドさんがモップ型狙撃砲身でポン刀持った軍人と対峙するシーンです。はい。自分でも何を言っているのかわかりませんが、上記の文はほぼ作中どおりです。ここを転機に「もっと無茶なキャラクターでもいいんだ!」と勇気が沸きまして、どんどん変なキャラが増えていきました。
――今後の展開について、話せる範囲で教えてください。
読者さまと編集さまが許してくれるかぎり、力一杯にメインストリームから逆走していこうと思います。というか、メインストリームに乗れません。誰か助けてください。
→小説を書く時に、特にこだわっているところは……?(2ページ目へ)
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表紙イラスト/ぜろきち
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