2012年2月14日(火)
お金がなくてもカードゲームで勝てる!? 第18回電撃小説大賞銀賞受賞『ウィザード&ウォーリアー・ウィズ・マネー』三河ごーすと先生インタビュー
小説『ウィザード&ウォーリアー・ウィズ・マネー』で、第18回電撃小説大賞銀賞を受賞した、三河ごーすと先生へのインタビューを掲載する。
『ウィザード&ウォーリアー・ウィズ・マネー』は、収入によって住める階層が変わるという世界を舞台に繰り広げられるファンタジックアクション作品。地下を脱出して中流平民街に上がった主人公のジェイファは、そこで出会ったヒロインの冬瀬陽月(ふゆせはるつき)とともに、“ウィザード&ウォーリアー・ウィズ・マネー”という競技のプロとなって、さらに上の階級を目指す。
作中に登場する“ウィザード&ウォーリアー・ウィズ・マネー”は、戦士と魔術師のペアで行う競技。魔術師が特殊な効果を発揮するカードを使い、戦士をサポートする。大まかなルールは、戦士は何度倒されてもいいが、魔術師が倒れると負けというもので、カードゲームの要素が盛り込まれているのも作品の特徴の1つだ。
三河先生に、カードゲームのような競技を題材にした経緯や、自身が好きだという無表情無口の女の子の魅力などを語ってもらったので、ぜひチェックしてみてほしい。
■“お金を持っていない側が、持っている側を倒す”作品を
▲著者近影 |
――作品を読ませていただいて、インタビューではまずカードゲームの話題からお伺いしようと思いました。率直にお尋ねしますが、カードゲームはよく遊ばれているんですか?
カードゲームは好きですね。高校生時代に『マジック:ザ・ギャザリング(MTG)』をよく遊んでいました。やっぱりわかりますか(笑)。
――わかります(笑)。作中の設定を読んだ時に、真っ先に『MTG』が浮かびました。ちなみに、『MTG』はいつごろから遊んでいたんですか?
“ウルザ・ブロック”ぐらいからやっていました。『MTG』以外に、『遊戯王』なども遊びます。
――『MTG』や『遊戯王』はブームでしたもんね。
中高生向けに作品を書くにあたって、自分が中高生ぐらいのころに何を楽しんでいたかというのを思い出して、“カードゲーム”を題材にしました。
――作品を書くうえで、まずゲームのルールを設定しないといけないと思うのですが、その作業は大変ではなかったですか?
最初は普通のカードゲーム物にしようと思っていたんですが、そうすると物語を盛り上げるのが難しかったんです。なので、カードゲームっぽさを出しながらアクション物、バトル物に近付けていって、両方のおもしろさの合流点のようなものを探しながら設定を作ったんです。悩みはしなかったんですが、設定はかなり考えましたね。小説としておもしろくなるようにということも踏まえて、今の形に落ち着きました。
――カードゲームの要素に、アクションをプラスした形ですね。
魔術師(ウィザード)がカードゲームでいうプレイヤーにあたり、戦士(ウォーリアー)がいわゆるクリーチャーやモンスターにあたるようイメージしていたんです。最初は2人1組ではなく、プレイヤーがクリーチャーのようなものを使って戦うものを考えていたんですが、アクションをするにあたって、クリーチャー役の人間を置いた方がいいかなと考えました。だから、ウォーリアーは何度倒れても大丈夫だけど、ウィザードが倒されると負けというルールなんです。
――なるほど! 作中でさまざまなカードが登場しますが、効果はいろいろ考えたのですか?
あまり反則になりすぎないように、強くなり過ぎないようにとか、ゲーム上のバランスを考えました。でも、割とスムーズに効果が決まりましたね。ストーリー展開も同時に作っていたので、展開に合わせて必然的にカードの効果も決まってきたんです。
――世界観も特徴的ですよね。収入によって住む階層が決定するという。
大学時代に経済学や経営学、社会学あたりを勉強していたんです。おもしろかったので、授業以外でも図書館などで資料を漁っていたりしていたんですが、その時に“もしもこんな社会があったら”というのをぼんやり考えていました。今回の世界はその中の1つです。
――この世界観を設定した狙いなどはあるんですか?
カードゲームって言い方は悪いんですが、極端な話“お金を持っている方が強い”んですよ(笑)。
――カード資産というやつですね(笑)。確かにその通りだと思います。お金があれば強いカードをたくさん手に入れられますからね。
そうです。なので、“お金を持っていない側が、持っている側を倒す”という形にしたいなと思ったんです。
――なるほど、そこでつながってくるんですね!
自分がプレイしていたころ、そんなに資金が潤沢な方ではなかったので、潤沢な相手に手持ちのカードでどうにか勝とうと試行錯誤していた時期があったんです。その経験を、物語の中に入れ込んだらおもしろいかなと思いまして。
――わかります。強いカードはたくさん入れたいけど、そういうカードに限って買うと高いんですよね。
カードゲームを題材にしようと思った瞬間から、好きに魔法が使えるのではなく、お金を積んで買わないと強いカードが手に入らないという設定にしようと思いました。その着想を全部絡めるために、お金にかかわる世界観にしようと考えたんです。
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