2012年4月14日(土)
【Spot the 電撃文庫】読者も一緒にだまされる? 『ミニッツ ~一分間の絶対時間~』でデビューした乙野四方字先生を直撃!
電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。第27回となる今回は、『ミニッツ ~一分間の絶対時間~(以下、ミニッツ)』で第18回電撃小説大賞・選考委員奨励賞を受賞した乙野四方字(おとのよもじ)先生のインタビューを掲載する。
▲ゆーげん先生が描く『ミニッツ』の表紙イラスト。 |
4月10日に発売された本作は、1年生で学園の生徒会長になる野望を持つ少年・相上櫻(あいがみ さくら)と、彼の前に立ちふさがる生徒会副会長・琴宮遙(ことみや はるか)の心理戦を描いた“学園だまし合いラブストーリー”。
1分間だけ相手の心を読める“ミニッツ”という能力を持つ櫻は、その能力を生かし、クラス内で“頼れるが妬まれない、愛嬌(あいきょう)のある委員長”を演じていた。それはすべて1年生で学園の生徒会長になるためだったのだが、ふとしたことで秘密を遙に知られてしまう。櫻は、遥の弱みを握り返すため、彼女が提案する心理ゲーム“馬鹿と天才ゲーム”に挑むが……。
乙野先生には、本作を執筆した経緯や作品を書く上で悩んだところについて話していただいた。なお、こちらのインタビューには『ミニッツ』のネタバレが含まれているので、本編を楽しんだ後で読むことをオススメする。
■ 『ミニッツ』は、何年間も自分の中で温めていた作品 ■
――小説を書こうと思った経緯や、本作を書いたきっかけはなんですか?
初めて小説を書いたのは高校生の時なのですが、当時推理ものにハマっていまして。通っていた高校を舞台にした密室トリックを思いついたのが最初のきっかけです。それを友人に出題するために大学ノートに書き殴りました。そのノートは今でも持っているのですが、読み返すと破り捨てたくなります。
『ミニッツ』は、もう何年間も自分の中で温めていた作品でした。自分の初投稿は他社だったのですが、それが1次選考を通過しまして、翌年新作を応募したら今度は2次選考を通過してしまったんです。そこの賞は3次選考を突破すれば受賞確実という規模でしたので、よし、次は受賞だ! と思ってまた翌年に新作を応募したところ、1次選考で落ちてしまったんですね。
そこで、とんでもなく不遜(ふそん)な話なのですが「もういい、だったら電撃で受賞してやる!」と思ってしまいまして……。その時自分の中にあった最高の作品ということで、ずっと温めていた『ミニッツ』を取り出したというわけです。
――作品の特徴やセールスポイントを教えてください。
美少女といちゃいちゃしたり、美少女がバトルする作品はいくらでもあります。しかし、美少女とだまし合う作品、というのはなかなかないのではないでしょうか。一瞬の油断も許されない、論理と心理の罠に満ちた会話戦。そんな虚飾と欺瞞(ぎまん)だらけの関係性の中で、ふと触れ合う素直な心。ライトノベルを読みなれた方ですら感じたことのない、新たな萌えの境地をお届けできるものと自負しております。まったくタイプの違う美少女達の、それぞれの本当と嘘のギャップをお楽しみ下さい。また、本作に登場するオリジナルゲーム“馬鹿と天才ゲーム”は、誰でもすぐに遊べる道具を使わない心理ゲームです。ぜひお友だちと遊んでみて下さい。
(※“馬鹿と天才ゲーム”の遊び方については、電撃文庫新作紹介ページ内の『ミニッツ』紹介ページを参照のこと。)
――作品を書く上で悩んだところはどこですか?
実を言いますと、温めていた作品は『ミニッツ』の他にもう1つありまして、さてどっちを書いて応募するか、と悩みに悩んだ結果、「両方くっつけてしまえ!」という結論に落ち着きました。つまり、ミニッツは2つの作品を1つに融合させたものなんです。その際に、両作品の設定のどこをどのように生かすか、という取捨選択には悩みました。
後、応募した段階では「これは商業的にまずいだろう」という設定や描写がかなりありまして、これは削ったほうがいいのかなぁ、と悩みました。ですが、結局は書きたいものをすべて書かせていただきました。そして、改稿でほとんど削られました。さもありなん。
――執筆にかかった期間はどれくらいですか?
構想自体は数年がかりなのですが、実際に書いていたのは約2カ月です。
――主人公やヒロインをどのようにして生み出したのか教えてください。また、キャラクターについて思うところがありましたらあわせて聞かせていただけますか?
まず、“ありがちな主人公とヒロインの関係性に飽きた”というのがあります。明らかに主人公に好意を持っているのに、素直に好きだと言えない。そして主人公もそのことに気付かない。そんな関係性を見ていると、ニヤニヤを通り越してもうイライラする体になってしまったんです。
なので、それをまったく逆にした“本当はきらいなのに好きだと言ってしまう”という極端な関係性にしてみました。要するに、自分の読みたいものを自分で書いた、ということです。素直に好きだと言えない関係は、素直になれたその時は「好きだ」と言えばいいわけです。しかし、普段から相手をだますために「好きだ」と嘘をついている2人が、もし本当に相手のことを好きになってしまったら、その時はなんと言えばいいのか? 彼らはその時どんな言葉を、態度を選ぶのか? それは自分にもまだわかりません。それが自分でもとても楽しみです。
→次ページからはネタバレあり! 特にお気に入りのシーンは……?(2ページ目へ)
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表紙イラスト/ゆーげん
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