2012年5月16日(水)
先月、ベセスダ・ソフトワークスより発表された、クリエイターの三上真司氏率いるTango Gameworksの最新プロジェクト『Zwei(ツヴァイ)』。この発表を受け、『電撃PlayStation』(アスキー・メディアワークス刊)は開発の指揮を執る三上氏へのインタビューを行った。
三上氏と『電撃PlayStation』編集長・西岡美道の対談で行われたインタビューの全容は、5月17日発売の『電撃PlayStation Vol.518』に掲載される。この対談の中で三上氏は、プロジェクト『Zwei(ツヴァイ)』の現状や今後の展望について、今話せるすべてを語っている。
▲インタビューは、開発現場であるTango Gameworks社内で行われた。 |
†気になるインタビューの内容を一部抜粋!†
西岡:今回、Tango Gameworksから新しく発表されたプロジェクト『Zwei(ツヴァイ)』は、どんな内容になるのでしょうか?
三上:今言えるのは“サバイバルホラー”というジャンルと、大作になるということ、AAA(トリプルエー)のクオリティを目指す、ということくらいですね。
西岡:2010年にゼニマックスグループの傘下に入りましたが、この新作はやはり海外のマーケットも意識したタイトルになるのでしょうか?
三上:海外を意識してはいますけど、海外至上主義ということではないですね。僕たちがおもしろいと思うゲームを作っていくというのが出発点で、その中でゼニマックスグループの全面的なバックアップを受けて、海外のマーケットもにらみつつ調整をさせてもらおうという感じです。ただ、今のうちのチーム構成が、わりと海外のゲームが好きなクリエイターやデザイナーの集まりなので、自然に世界基準を目指しているようになっていますね。
西岡:そのチーム内で「おもしろい」と遊ばれているのは、どんなタイトルなんでしょうか?
三上:最近だとやっぱり『スカイリム(The Elder Scrolls V: Skyrim)』(ベセスダ・ソフトワークスより2011年12月に発売されたRPG)、それと『バットマン:アーカム・シティ』(ワーナー・ホーム・ビデオより2011年11月に発売されたACT)ですね。
西岡:この2つのタイトルの「おもしろい」と感じる部分はどのあたりでしょうか?
三上:うちのスタッフでもそれぞれ感じ方に違いはあると思うんですが、『スカイリム』は果てしなく広がっている世界を自由に歩き回るだけで楽しいですよね。日本の昔のゲームみたいにステージがあって敵がいて、ゴールを目指してクリアするというレールを敷いたゲームじゃなく、世界をぽーんと提供して、そこで好きなことをしてくださいっていう。そういう自由度が非常に高い遊びの提案の仕方は、日本人から見たときに特に新しさを感じられるところかなと思います。『バットマン:アーカム・シティ』は、いちいち派手で映画ライクで、シチュエーションもその気にさせるような状況が多い。以前のゲームでは考えられなかった、ハリウッド的なアクションスタイルが出てきているんじゃないかなと思いますね。
西岡:Tango Gameworksのメンバーに限らず、海外のゲームが以前よりも受け入れられているのは、単純に海外のゲームが魅力的なのか、消去法として日本のゲームに魅力がないのか、どちらなんでしょうか?
三上:う~ん、そこは人それぞれですけど、魅力に感じる部分が移行してきているんじゃないですかね。今、海外のゲームを遊んでいる人も、昔から日本のゲームが嫌いだったわけじゃなくて、十分楽しかった。それをへて、今はリアルなタッチだったり、リアルなシチュエーションっていう海外のゲームのスタイルのゲームのほうが好きな人が多くなってきているのかなと。
日本での開発だと、やっぱりマンガ・アニメで育った世代がたくさんいるので、表現的にもヒーローチックだったり、ファンタジーチックだったりという、理想のカッコよさを追求したいっていうのが日本のスタイルなのかなと思います。海外はリアルなタッチのものが好きな人が多いし、逆に日本ではそういうリアルでごついキャラクターに抵抗感がある。そこのワイルドさとリアリズムのバランスですよね。ゲームで人がいたら「ハロー」ってあいさつするんじゃなくて、とりあえず殴る、みたいな。通信プレイでも日本は協力ですけど、向こうだと殺し合いだったりしますし。そこは日本は治安がよすぎるんですよ。その中でのワイルドって言ったら、今はスギちゃんくらいですからね(笑)。
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西岡:今回、“サバイバルホラー”というジャンルを選んだのはなぜでしょうか? 三上さんというと、やはり『バイオハザード』というイメージがあるのですが。
三上:基本的にサバイバルホラーを作ることに関しては、自分が一番得意としているジャンルでもあるし、おもしろいチャレンジではあるな、と感じていました。あとは、周りから「作らないのか」と言われることも多かったからかもしれません。特に同じゼニマックスグループのクリエイターたちから作ってくれと言われたことは大きかった。やはり、より多くの人の期待に応えるようなタイトルを頑張って作りたいという気持ちがきっかけですね。
西岡:三上さん自身の“サバイバルホラー”というジャンルへの思いは、どのようなものなんでしょうか?
三上:僕個人としては、僕が考える“純粋なるサバイバルホラー”を作って、もうひとつ上のステップに行きたいなと。サバイバルホラーというジャンルがいろいろ変化してきている中で、僕が思うサバイバルホラーを今作るとどうなんだろうっていうところに、今は一生懸命取り組んでます。
西岡:サバイバルホラーというと、いろいろな遊びやテイストを持った作品がありますが、今回のタイトルはどんなゲームになりそうですか?
三上:「怖さがあって、その怖さをユーザーがコントローラを握ってぶち壊して克服していく」というのが、僕なりのサバイバルホラー観なんです。怖いんだけど、それをぶっつぶせるっていう、ある意味、ホラーとしては矛盾したゲーム性なんですよね。
西岡:ゲームの方向的には、怖がらせたいのか楽しんでくださいなのか、どっちなんですかね。
三上:うーん……どっちも、ですね。どちらかに絞るのではなく、曇り時々雷雨、みたいな感じですか。曇りも雷雨も両方必要なんですよ。どこに行っても雨だったらうれしくないし、ずっと曇りでも変化がない。メリハリはどうしても必要なんです。元々サバイバルホラーっていうのは、作る側にとっては綱渡りなんですよね。すごく怖いのも違うし、すごく楽しいのも違う。昔のゲームが持っていた緊張と緩和のエッセンスの部分だけを恐怖にくっつけて、緊張させて、そいつを倒してスカッとさせる。バランスは難しいですが、それが僕の中でのサバイバルホラーのエッセンスなのかなと。
西岡:公開されたコンセプトアートは、わりとジメッとした感じですよね。
三上:全体的には、そんなにジメッとはしてないですよ。ギュッと怖い要素が詰まっているところと、ポンと解放したところと、そのメリハリがあります。ずっと息が詰まる展開だとちょっとしんどいですからね。これ以外にももちろんたくさんコンセプトアートはあるんですが、出しすぎるのもよくないし、内容を今まさに試行錯誤しながら変えている部分もあります。なのでこれは、こういうステージがありますというわけではなく、世界の広がりや、ホラー的な雰囲気を嗅ぎとってもらえればいいなというものなんです。見てどう感じるかは自由なので、そこは読者の皆さんにおまかせします。現場では当イラストと並行して実機でCGを作りながら、感触をつかんで進めているところですね。
西岡:今「実機」という言葉が出ましたが、ハードは何になるんでしょうか?
三上:ハードは、HDの据え置き機ですね。携帯機用のゲームではないです。
西岡:据え置き機を選んだのは、高いスペックのマシンで、三上さんの思い描くものをきちんとCGで表現したいからですか?
三上:それもありますし、家で大きい画面といい音響で、落ち着いて遊ぶ。そういうスタイルで楽しんでほしいからですね。電車でヘッドホンをして、まわりに人がいて安心できる場所で遊ぶというのは、サバイバルホラーとはちょっと違うと思うんですよ。
今回のインタビューでは、最新プロジェクト『Zwei(ツヴァイ)』の話だけでなく、Tango Gameworksの現状についての話も三上氏の口から飛び出した。本作の内容が気になるという人のみならず、ゲームの制作にかかわりたいと考えている人にも興味深い話となっている。5月17日発売の『電撃PlayStation Vol.518』にて、対談の続きをぜひ確認してほしい。
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