2012年6月1日(金)
―― 一番制作に時間がかかったルートって……。
二見:麻奈実です。
――即答ですね。
二見:麻奈実は大学生バージョンのビジュアルなどもあって、監修などのやり取りが多かったんです。麻奈実だけダントツで時間がかかっています。
打海:他のキャラクターの2倍くらい時間がかかっています。
――2倍ですか! それは圧倒的ですね……。
二見:断っておきますけど、他のキャラクターの部分で手を抜いているというわけではありませんので!
――話は変わりますが、原作小説の第10巻が4月10日に発売されました。こちらに関してゲームの制作で影響された部分はありますか?
伏見:もちろんありますね。書いているとアイデアがいろいろ出てきますし、一番大きいのはあれですよね、ゲームと原作で同じシーンがある。あのあたりは変えようのない運命ということですね(笑)。
――加奈子が麻奈実に料理を教わったりだとか、あのあたりですよね。今後も影響しそうだな、みたいな部分はあるんでしょうか。
伏見:うーん、どうでしょうね。まだ書いてみないとわからないです。ただ、10巻を読んでからゲームを遊んだ人がどう思うのか、という点はすごく気になります。事前情報なしでゲームをプレイした人とはだいぶ印象が違うはずなんですよ。同じように、ゲームを遊んでから10巻を読んだ人の感想も知りたいです。
三木:そうですね、ちょっと気になります。
――確かに。もしもそういう方がいらっしゃったらご感想を投稿していただければ!
二見:ゲームと小説では、やはりメディアの違いもありますので、その部分でもユーザーの皆さんからいただく反応が気になるというのはありますよね。
伏見:ゲーム制作に携わっていて感じたのがとにかくズルい! ってことですね(笑)。
――どのあたりがズルいんですか?
伏見:これって、ゲームとしては当然のことなんですが、絵と声が付いているし、音楽も付いている。小説だと文章をうまく組み合わせて、読者に訴えかけなければいけないのに、ゲームだと、感動する音楽を流したりとか(笑)。書いていてズルい、ズルいって(笑)。いえ、当然作っていらっしゃる皆さんには、それぞれ苦労はあると思うんです。もちろんそれはわかってはいるんですけど。つい……。
――ゲームに嫉妬してしまう、と。そんなゲーム制作者である二見さんに伺います。前回の座談会では「今出せる100パーセントのモノにしたい」とおっしゃっていましたが、それは達成できましたか?
二見:そうですね……今の心境は、戸愚呂弟が100%を出して燃え尽きたところです。……すみません、わかりづらかったですかね(笑)。100%を超えてしまった感もありますね。150……いや、ヘタしたら400%くらいいって溶けてしまったかもしれません。
三木:わかりにくい(笑)。
二見:それはさておき、毎回時間とスケジュールと予算とのせめぎ合いでゲームを作っているのですが……今回はたぶん135%くらい出せています。予算が増えましたので(笑)。
打海:最初、こちらにお話をいただいた時には、これよりずっとボリュームも少なくて、できること自体が少なかったんです。ですけど、二見さんが融通をきかせてくださったり、伏見先生がいろいろ意見をくださったりしたので、現場もやりたいことを思いっきりフルでやれましたね。
二見:プロットの段階で伏見先生と話をした時に「これだとイチャラブじゃない」という話になったんですよ。そこから「それならCGいっぱい増やしましょうよ」なんて話になってきて……。話をしながら「これ、絶対開発費増えちゃうなー」と思ったことを覚えています(笑)。で、こちらのテンションもだんだんと上がってきて「開発費、増やしましょう!」って言っちゃったんですよね。
正直、その場の勢いがあったとは思います。でも、いい作品が作れるのであれば、それをやろう。みんなで100%を目指して、結果130%くらい出てしまった感じです。
――伏見先生は100%超えましたか?
伏見:ええ。お互いにお互いを追い詰める感じがありました。最初にシナリオを提出した時に、二見さんから「桐乃ルートだけ長いので、他ももっと書いてください!」って言われて。そしたらこちらも「CGをもう2枚くらい増やしてください」って(笑)。でも二見さんは「いいですよ」って返してくるんですよ(一同笑)。
――完全にチキンレースをやっているノリですよね(笑)。
二見:ひどいチキンレースでした(笑)。伏見先生からシナリオのレスや監修の戻しをメールでいただいていたんですが、そのタイミングが完全に深夜でしたよね。
伏見:ず~っと深夜でした(笑)。
二見:伏見先生からいただいた後に僕らも返して……。どっちが返さなくなって寝るかのチキンレースですよ。「よし、伏見先生が寝たからもう帰ろう」ってノリでした(笑)。
三木:付き合いたてのカップルみたいですよね(笑)。
伏見:印象に残っているのがプロットをやっていた時期ですね。本当に誰もブレーキを踏まなかったです。
二見:踏まなかったし、止めるとその分できることが減っていく感覚があったんです。止まってしまうと、開発現場のスタッフやライターさんから「できない」と言われてしまうだろうと。で、止まらずにいった結果、ああなりました。
――三木さんはいかがでしたか?
二見:三木さんは僕らのやり取りを間近で見ていましたよね。
三木:確かに130%は出ていましたね(笑)。最初は1.5って言っていたのにどんどん増えていくので大丈夫かな? と思って見ていた記憶があります。これ、カーブがあったら事故って谷底だな……なんてずっと思ってました(笑)。
伏見:お互い何か譲れないものがあってやっていましたね。音楽を新しく4曲くらい作ることになっていて、二見さんが提示してくれた4つの曲のうち、3つくらい変えたんですよ。変えたら二見さん、自分がもともと入れたかった曲もさらに増やして出してきたんですよ。
――結局何曲増えたんですか?
打海:5曲ですね。伏見さんと二見さんから4曲きてたので、僕の方からプラス1して5曲です(笑)。
二見:最初は3曲くらいにする予定だったんですけどね。でも意見をもらったら、120にして返したくなるじゃないですか!
打海:現場も「できないんですか、じゃあもういいですよ」と言われるのがすごい悔しくて「じゃあやってやろうじゃないか」ってノリですね。
三木:最初から『2』って言えばいいのにと思いましたね(笑)。
打海:シナリオのボリューム的には、最終的に『俺の妹P』のものよりも『俺の妹P続』が6KB少ないくらいの違いなんです。ほとんど一緒です。
二見:三木さんのおっしゃる通り、途中で「もうこれって『2』って言えるのでは?」とチラッと思いましたね。でも、やっぱり『2』という認識は僕にはないんです。背景をはじめ、素材を使い回しているので。
→あの人の“人生相談”についても聞いてみた!(3ページ目へ)
(C)伏見つかさ/アスキー・メディアワークス/OIP
(C)2012 NBGI
※記事中のゲーム画像は開発中のものです。
データ