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2012年7月12日(木)

【電撃PlayStation】電撃PSの魔王が語る『アーシャのアトリエ』――10万本とかそんなレベルで落ち着いてよいレベルの作品ではない

文:電撃PlayStation

アーシャのアトリエ

 時代はコンテンツ系と言ってもいいでしょう。世界レベルで。プレイヤーがノックするとゲームの方からとんでもないリターンが返ってくるという。それこそ、世界で売れている大作ソフトはほぼそのスタイルです。日本のゲーマーが「LDゲームだよね?」と言いがちな、ムービー中にボタンを押すことでお話しがドンドン進んでいくタイプの作品も「どれだけプレイヤーをビックリさせるか?」にポイントを置いています。プレイヤーが何かすると、ドキドキワクワクなイベントが発生してそれに巻き込まれて、解決しちゃって、オレって凄いな! っていうエンターテイメントを求めて直進するスタイル。それが現在世界で受け入れられ、発売本数が多い大きな流れです。

 それが世界標準として(日本人はその手のゲームに対してあまり食指を動かさない…などという意見もありましたが、それはグラフィックなどで単純に日本人の好む要素が少なかっただけでしょう)、ゲームにエンターテイメント性を求めていってるだけですから、その流れは間違いではないのです。日本のゲームだってある程度そっちを向いているし、日本のメーカーも世界でも売れる作品を目指すのが会社的には正解です。今後もその流れは変わらないと思いますし、それは否定しません。個人的にはそちらも好きなので。

 が。『アーシャ』はそれとは別なのです。個人的に『アーシャ』はJRPGの代表のひとつだと考えます。これぞ、日本人を中心にしか楽しめないんじゃないか? と言い切れる、日本発のゲームの文化(のひとつ)。日本人が買わないで誰が買うんだ、こんなゲームを! という。前述のように制作スタッフの方々はただただマジメによいモノを作ろうとしただけと書きましたが、正直、意図してこんなスゴイものが作れるはずがないのです。

 まあ、簡単に定義づければ『アーシャ』=時間喰いソフトです。新ジャンルです。「このソフトってRPGとSLGと~あと時間喰いも発生するね~」「え、そうなの? 気をつけなきゃ」みたいな。これまで個人的な趣味にぴたっと合ったジャンル、作品だったら時間を忘れてプレイって可能性はいくらもあったし、してきました。そんな経験のある人は多いハズです。が、『アーシャ』は日本人のゲーム好きであれば、大半が時間を喰われるというとんでもない化け物なのです

アーシャのアトリエ

 正直……『アーシャ』にはメリハリがありません。散々前述した、世界で主流でお馴染みの。危機感とかも一切ありません。妹がヤバイのに。本来、その手のテーマを採用したお話ならメインストーリーに脅迫される感じっていうのは少なからずあるはずです。それもかなり後半になるまでありません。それどころか、RPGでお馴染みの中ボス戦もゲーム中盤すぎまでありません。笑。さらに序盤に仲間になるキャラが全員ド天然。それこそ、リンカの代わりにお役人のマリオンが仲間になってくれてれば、ぐんぐん謎が解けて話が進みそうだよな~知識もあるだろうし……なんていう部分も含めて、ゆるいのです。

 この部分はプレイヤー自身がしっかりして、主人公たちを導かないとニオが! ニオが(あ、ちなみにニオは神隠しにあって失踪中のアーシャの妹です)! と勝手にドキドキするハメになります。これは時間喰いのゲームを続けてしまう要素のひとつになってる気もしますが。まあ、ゲームの中の登場人物たちはとにかくメリハリがない、よく言えばのんびりしています。

 こうして書いていくとマイナス点のようですが、そんなことはありません。そのマイナス点に思えるメリハリなんてものはぶっちぎりで関係ないのです。そんなにゆるい感じなのに、時間喰い、超強力な時間泥棒。これはもう、トータルの雰囲気や文字に凄まじく興奮できる(ある意味変態な)ゲーマーの多い日本ならではの新ジャンルなんじゃないかと思うのです。だって、どこに興奮しているのか判らないんですよ? 低刺激なのについついプレイしてしまう。究極のプレイアビリティを実現した結果、時間喰いという新ジャンルが完成してしまったと思っています。正直、これぞ日本の誇っていいJRPGのひとつの形だと思うのですが。どうでしょうか?

→JRPGレベルの高い人であればプレイしてみれば全てわかるハズ(3ページ目へ)

(C)GUST CO.,LTD. 2012

データ

▼『電撃PlayStation Vol.522』
■発行:アスキー・メディアワークス
■発売日:2012年7月12日
■価格:650円(税込)
 
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