2012年7月21日(土)
電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。第48回となる今回は、『マグダラで眠れ』を執筆した支倉凍砂先生のインタビューを掲載する。
▲鍋島テツヒロ先生が描く『マグダラで眠れ』の表紙イラスト。 |
『狼と香辛料』に続く支倉先生の新作は、“眠らない錬金術師”の物語。人々が新たなる技術を求め、異教徒の住む地へ領土を広げようとしている時代。錬金術師の青年・クースラは、研究の過程で教会に背く行動を取った罰として、昔なじみの錬金術師・ウェランドとともに戦争の前線の町グルベッティの工房に送られる。
グルベッティの町で、クースラたちは前任の錬金術師が謎の死を遂げたことを知る。その足で出向いた工房では、白い修道女・フェネシスが彼らを待ち受けていた。彼女はクースラたちを監視するというが……?
支倉先生には、この作品を書いたキッカケや小説を書く時にこだわっているところ、現在注目している作家・作品などを語っていただいた。また、電撃文庫 新作紹介ページでは、本作の内容を少しだけ立ち読みできるようになっている。まだ読んでいない人はこちらもあわせてご覧あれ。
――この作品を書いたキッカケを教えてください。
技術の歴史に興味を持って、そういえば前のシリーズではあまりそういう側面の話は書かなかったなあ、と思って書いてみました。
――作品の特徴やセールスポイントはどんな部分ですか?
できないことをできるようにする、というのはとてもすごいことです。ほとんどの試みは「そんなことできるわけがない」と嘲笑される類のものです。けれども、人類はそういう試みをずっと繰り返してここまでやってきました。化学ではなく錬金術と呼ばれていたころでも、本質的な思いは変わっていなかったと思います。その“足掻き”を楽しんでいただければと思います。
――作品を書くうえで悩んだところは?
現在の化学の知識と、当時(と想定される世界観)とのすり合わせがとても難しかったです。
――執筆にかかった期間はどれくらいですか?
2カ月くらいです。
――執筆中に起きた印象的な出来事はありますか?
1巻目は編集部に通いつめて書きました。平日は朝から夜まで仕事して、土日は何もせず気晴らしをして、という大変メリハリのある生活になりましたが、もう2度とやりたくないってくらいつらかったです……。
――主人公やヒロインについて、生まれた経緯や思うところをお聞かせください。
錬金術師は怪しげなイメージがあるものの、暗い性格だと地味になってしまうので、主人公はちょっと冷たい感じを残しながらも強気な性格になりました。ヒロインは、逆に生真面目でなおかつ見栄っ張りというキャラになりました。
――特にお気に入りのシーンはどこですか?
冒頭のシーンですね。
――今後の予定について簡単に教えてください。
戦乱に揺れる不穏な世の中で、個人が夢を追いかけるということがどういうことなのか、そのあたりを描いていければと思っています。
――小説を書く時に、特にこだわっているところはどこですか?
無駄な設定を省くこと。なるべく短くすること。食べ物の味やにおいなど、漫画でも映画でも表現できないことをなるべく盛り込むこと。視覚・聴覚の表現にこだわっても、漫画や映画には勝てません。
――アイデアを出したり、集中力を高めたりするためにやっていることは?
いろいろな本を読むこと。
――高校生くらいのころに影響を受けた人物・作品は?
『はいぱーぽりす』(作:MEE/角川書店)です。獣耳好きにはたまらないシリーズでした。18年前の本ですが、いまだに読み返します。
――現在注目している作家・作品は?
『Latin』(作:高畠エナガ/集英社)。漫画家さんですが、この作品はほんとすっごいです。
――今熱中しているものはなんですか?
読書。知らないことに出会うのがとても楽しいです。
――ゲームで熱中しているものがあれば教えてください。
『ラグナロクオンライン』です。熱中、というほどでもないですが、定期的にやっています。休止を何度かはさんでいますが、かれこれ9年くらいですね……。
――それでは最後に、電撃オンライン読者へメッセージをお願いします。
錬金術とは、夢を現実に変える方法のことだ! その言葉の意味を知りたくはないか!
(C)支倉凍砂/AMW
イラスト:鍋島テツヒロ
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