News

2012年7月24日(火)

Xbox 360『ルートダブル』超絶ネタバレ全開ロングインタビュー後編――メッセージウィンドウに隠された真実とは?

文:ごえモン

『ルートダブル』

 どうも、ごえモンです。イエティから6月14日に発売されたXbox 360用ソフト『ルートダブル -Before Crime * After Days-』のネタバレロングインタビュー後編をお届けします。

 先日掲載したインタビュー前編では、本作の原案・監督・プロデューサーを務めた中澤工さんに、タイトルやパッケージに込められた意味、移植の有無、その他さまざまな裏話を伺いました。後編では、“情報エネルギー”を採用した経緯やAルートの裏タイムリミットの解説、メッセージウィンドウに隠された真実、ファンディスクなどについて聞いています。

 前編と同じくネタバレ全開でお届けしていくので、グランドエンディングに到達していない人は、自己責任で読むようにしてください!

※このインタビューは、2012年6月28日に行われたものです。

『ルートダブル』 『ルートダブル』
インタビューには、『ルートダブル』に関する致命的なネタバレが数多く含まれています。絶対にグランドエンディングを見てから読んでください。

■ビヨンド・コミュニケーション(BC)の設定は元々ウイルスだった

――(インタビュー前編で)“情報”というキーワードが出てきましたが、本作に登場する“情報エネルギー”は、元々、企画の根底にあった設定なのでしょうか?

 “情報エネルギー”はBCの設定を詰める過程で取り入れました。まず最初にあったのは、ある自己問答でした。この企画のテーマを扱うにあたって、2つに分かれた主人公を結びつけるものって何だろう? ──プレイヤーだ。プレイヤーと主人公を結びつけるものって何だろう? ──感情移入だ。感情移入はなぜ生じるのだろう? ──主人公の気持ちや感覚を共有できるからだ。プレイヤーの意思を主人公に反映できるからだ。では、この概念を作中に取り込めないだろうか? ──言葉を介さずに人の気持ちを理解したり、伝えられる能力を主人公が使えるようにしよう。──それって超能力? という流れでBCが生まれました。

 でも、その時点ではそんなに深く考えていなくて、原理はわからないけど、思考を伝播できる能力があることだけが決まっていました。能力といっても、魔法ではなく、科学的に説明できるようなものにしたい、という路線でいろいろと考えた結果、最初に思いついたのは意思を伝達できるウイルスでした。

――ウイルスにすると何かを彷彿とさせてしまいますよね。

 そうなんですよ。このへんの設定を考えていたころ、某同人ゲームの家庭用ゲーム移植を担当することになりまして、その作品設定と酷似してしまったので再考を余儀なくされました。検討を続けた結果、素粒子ならどうかと思いつきました。素粒子は、目には見えないけど宇宙創成のころから存在するもので、BCも“はるか昔から存在したかもしれない存在感”を出したかったんです。

 ただ、自分の物理学の知識には限界があるので、これ以上は練り込めないと感じた時に、Twitterで「設定構築に協力してくれる人求む!」と募集しました。そうしたら、物理を専攻している方々が、ダーっと集まってくれて。その人たちに、固有名詞とネタバレは伏せつつ「こういうことが可能で、こういう制約をつけたい。これを科学的に表現したくて、今のところここまで考えているけど、穴があったら突っ込んでほしいし、もっといい案があったら提案してほしい」と伝えました。やがて、「ここはおかしい」とか「素粒子はこんな働きはしない」とか、「素粒子じゃないけど、こういうアイデアはどう?」と多くのアイデアをいただきました。

 そんな中で、1人の大学院生から「最近は情報をエネルギーととらえる研究もありますよ」と教えてもらいました。自分なりに調べてみたら、これはいろいろと話に絡められる! と確信し、1カ月くらい調査と熟考を重ねて構築したのが、情報力場仮説とIGF2R遺伝子の設定です。ちなみにIGF2R遺伝子そのものは実在する遺伝子で、図書館で読んだサイエンス雑誌から着想を得て、『ルートダブル』向けに大胆なアレンジを加えました。

 一度まとまった後も、実際に素粒子研究をしているスペシャリストに監修してもらい、納得できるまで修正を繰り返しました。物理に詳しい人が見ても、よほど重箱の隅をつつかない限りは破綻しない設定作りを目指しました。“なんでもアリ感”や“魔法のような万能性”を排除して、“リアルな存在感”を出したかったんです。

――ゲーム中のBCの説明や世界観を見ていると、確かにスッと頭に入ってきますし、「これがその世界のリアルなんだな」と考えられました。

 そんな理想の設定を目指して、情報力場仮説の素案ができ上がったころ、別の方から“マクスウェルの悪魔”について教えてもらいました。僕はこの思考実験を知らなかったのですが、ちょうど最近になって、“マクスウェルの悪魔”を再現した(2010年11月発表の“情報をエネルギーへ変換することに成功”した中央大と東大の共同研究成果)と話題になり、添付されていた研究概要を読んでみたら『ルートダブル』に絡められると感じました。

『ルートダブル』 『ルートダブル』

――さまざまな協力者の力もあり、現在の設定が完成したとのことですが、初期の設定はどのようなものだったのでしょう?

 最初は、分子または原子で、まだ科学者に発見できていない媒体があって、それを媒介にエネルギーを伝えられる現象、程度に考えていました。例えば電気なら電子ですし、音なら空気、そういったもので、まだ未知なるものがあるんじゃないかなと。

――エーテルのような感覚でしょうか?

 そうですね。まだ見つかってはいないけど、これから見つかるかもしれないもの。調べていくと、原子や分子などの大きなものは、もう見つからないなんてことはありえないらしいんです。それで現在の技術でも見つけられない説得力のあるもの……詳しい理由は専門的になるので端折りますが……素粒子に行き着いたんです。素粒子は物体を構成する最小単位──“ルート(根源)”でもありますしね。

――その新たな素粒子を媒介として使用するBC能力は、絞って3つの能力だったのですか?

 BC能力は絞って3つでした。元々3段階と最初から決めていて、最終的な究極能力は、プレイヤーと主人公のような関係を“象徴”するものにしたかったので、他人と完全に心を重ね合わせて、その人の精神活動を知覚でき、行動にも関与できるものであると考えていました。それを踏まえて、初期段階では、気持ちを伝えるだけ、ないしは気持ちを読むだけの能力が使えるとイメージしました。

 裏話をすると、当初はエンパシーをもっと簡単な能力として考えていました。でも、よくよく考えてみたら、心を読むほうが難しいだろうとテレパシーと入れ替えたんです。

→Aルートの裏のタイムリミットを解説!(2ページ目)

(C)イエティ/Regista

1 2 3 4 5 6

データ

▼『ルートダブル』クロスポスター
■メーカー:アスキー・メディアワークス
■発売日:2012年7月14日
■希望小売価格:4,500円(税込)
 
■『ルートダブル』クロスポスター √Aバージョンの購入はこちら
Amazon.co.jp
 
■『ルートダブル』クロスポスター √Bバージョンの購入はこちら
Amazon.co.jp

関連サイト