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2012年7月30日(月)

『ゼビウス』の生みの親は今のゲーム業界をどう見るのか? ワンダーフェスティバル2012[夏]会場で遠藤雅伸氏にインタビュー

文:電撃オンライン

 7月29日に千葉・幕張メッセで行われた、世界最大級のフィギュアの祭典・ワンダーフェスティバル(ワンフェス)2012[夏]。その“R.C.ベルグ”のブースにて、『ゼビウス ファードラウト伝説 ソルバルゥ3機合体 パール ver.』の購入者を対象とした、遠藤雅伸氏のサイン会が開催された。

 『ゼビウス』や『ドルアーガの塔』など、数多くのヒット作を手掛けたゲーム業界の重鎮である遠藤氏へ、ショートインタビューを行ったので掲載する。

“遠藤雅伸氏インタビュー”
▲遠藤雅伸氏。ナムコ在籍時代、数々の名作ゲームを作り上げた。現在は、モバイル&ゲームスタジオ取締役会長を務めている。

――『ゼビウス ファードラウト伝説』のようなオールドゲームのマシンがキット化されることを、どのように感じていますか?

 そのゲームを好きな人がいるっていうのがまず第一で、そういう人たちにとっての青春が形になるっていうのは、とにかくおもしろいと思うんですよね。メカだと相性がいいですが、3Dとして整合性が取れている2Dものって、なかなか少ないと思うので。うまくできているやつを見てると、「いいなあ」という感じがしますね。

――今後、キット化を望むゲームのマシンがありましたら教えてください。

 すでに色々なものがキット化されているから……なんだろうな。あんまり昔を振り返らないので。

 既にキット化された商品の話をすると、『ダンボール戦機』のキットはよかったですね。そういう風に、色々なゲームがキット化を前提として考えられるようになって、その意味では環境がよくなったんじゃないかな。キャラクターも、フィギュアにできるようなところを考えながら作っていたりするので。

 ゲームとかアニメとか、2D全般を3D化した商品は、非常に“持っていて嬉しい”と思うし、“作って嬉しい”とも思うし。後は、“積んどいて嬉しい”って人もけっこういそうですね。コンテンツに対する愛というのは形がないので、それを形にして持てるという点で、キット化はいいと思います。

――「昔は振り返らない」とのことですが、最近のタイトルで立体化に向いていそうだと思うもの、あるいは造形に感心した立体物はありますか?

 とりあえず、『ファイナルファンタジー XIII』のヴァニラはきちんとした物が欲しいなあというのはありますね。後は、自分の作品に近いところだと、数年前に『ドルアーガの塔』のアニメを作ったんだけれども、そのキャラクターはかなりしっかりフィギュア化されています。自分で買って1個持っていますけれども、すごくよくて思い出深いと言うか……。

 フィギュアって色々とコレクションするというのもあって、飾って終わりではないじゃないですか。自分が亡くなった時に「ハードディスクを消してくれ」と言うのと同じような“痛さ”が、それだけ当人にとっての価値があるのかなっていう風に考えてますね。

――最後に、電撃オンラインの読者の方々へメッセージをお願いします。

 オンラインと言えば、『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』が発売された後は、MMO RPGの方向性が若干変わると思うんですよ。昔のゲームの文法をオンラインゲームにあてはめて作っているわけではないんですけれど、堀井雄二さんは日本的なRPGの文法をオンラインゲームの中にどうやって構築するかをやっていて、それに対してオンラインゲーム自体がどのように反応するのかなというのが、今すごく気になっています。なので、皆さんも注目してほしいです。

――『ドラゴンクエストX』が日本のオンラインゲームの転機になるかも知れないということですね?

 転機になる可能性がありますね。オンラインゲームにおける法規制の問題というのも色々出ているんだけれども、そのへんの転機ももうすぐやってくると思います。まあ、そこから先……多分、ゲームというものは、オンライン化が避けられないと思います。その中で、どういう風にゲームをビジネスモデルとして構築していくのかが重要です。

 ゲームはパッケージになった時点で、コンテンツとしてコレクションしたり、アーカイブしたりというのが容易にできます。でもオンラインになると、決まった形ではなくて、どんどんバージョンアップされて変化していく。例えば2年続いているサービスでは、1年前はこういうおもしろさがあった。しかし2年が経過して、1年前と同じことをやったとしても、難易度をはじめとしてゲーム自体も色々と変化しているので、必ずしも1年前と同じコンテンツにはならない。そのコンテンツの変化を、どうやって切り出してアーカイブしていくのかという難しさがあります。

 その中で、ゲームのおもしろさの1つである“共有体験”をどういう風にやっていくのか? オンラインゲームというのは、その瞬間には共有体験がきちんとできている。それはいいんだけれども、パッケージは時代が違ったりプレイする時間が違ったりしても、共有の体験ができる。そういった昔と同じ共有体験ができなくなるっていうことに対して、これからのゲームはどうやって乗り越えて行くのか? そこを日本のゲームは、知恵でクリアしていくと思います。

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