2012年8月31日（金）

“ゲーム屋さんがえらんだ良作！”8月は『タイムトラベラーズ』！

　全国のゲーム屋さんが毎月1本、実際に遊んでみて「これはおもしろい」というゲームを選ぶ「ゲーム屋さんが選んだ良作！」。8月の良作に選ばれたのは、これまで『428 ～封鎖された渋谷で～』などの数々の名作を世に送り出したイシイジロウ氏がディレクションを手がけるAVG『タイムトラベラーズ』でした。本作について、ライター・田下広夢氏が語ります。

●タイムトラベルできる
　アドベンチャー

　ゲームユーザーはつねにタイムトラベラーである。今回の良作は、そんなことを思い浮かばせる作品です。何のことかと申しますと、多くのゲームは失敗して、ゲームオーバーになると、その少し前に戻りますよね。ステージの最初からか、セーブポイントからか、とにかくちょっと戻ります。ちょっと戻って、さっきの失敗を参考にして今度は成功を目指す。これはゲームのキャラクターからすると、時間を遡っているような感覚かもしれません。これを、そのままタイムトラベルとしてゲームに取り入れたのが、レベルファイブ発売のアドベンチャーゲーム『タイムトラベラーズ』です。

●間違った運命は
　時間を巻き戻してやりなおす

　『タイムトラベラーズ』には5人の主人公がいます。舞台は2031年の渋谷。2013年に行われたタイムトラベルの実験中、謎の爆発が起き、ロストホールと呼ばれる穴が東京上空に出現しました。それから18年後、ロストホール事件によってあらゆる影響を受けた東京に、テロ事件が起こります。その目的は、東京消滅。5人の主人公たちは、互いに、そしてテロ事件とも一見何の関係がなさそうな人ばかり。妻子を誘拐された刑事、バラエティ番組で人気の女子アナウンサー、科学部所属の高校生、ヒーローの格好をした青年、詐欺師と呼ばれる元天才科学者。しかし彼らは不思議な運命の糸に導かれて、事件とかかわり、解決を目指すことになります。その運命の糸を握っているのが、プレイヤーであるあなたというわけです。
　プレイヤーが5人の行動中にたびたび訪れる選択肢を決定することによって、その選択はそのキャラクター自身だけでなく、他のキャラクターにも影響を及ぼし、運命を変えていきます。時間と空間を自在に移動して運命に介入し、東京を救う未来を目指していきます。

●笑って、驚いて、手に汗握り
　そしてちょっと泣いてしまう

　『タイムトラベラーズ』の素晴らしさは、何と言ってもシナリオでしょう。例えばキャラクターの1人にルサンチ☆マンというヒーローがいます。といっても、リアルライフヒーローと呼ばれる、アメコミのヒーローもどきのような格好をして街の平和を守るといいながら、コンビニで雑誌の立ち読みをしている無職の青年です。しかも小太りで、誰かを守れるような腕力はもちろんありません。30歳になって親の仕送りは止められ、彼女には振られ、どん底に。このダメな青年が、成長して強くなっていくかといえば、そうではなく、ダメなまま、弱いまま、何をやってもマヌケなまま、しかしヒーローになります。最初お笑い担当だと思って笑って見ていたルサンチ☆マンを、最後には応援したくなります。
　登場する5人のキャラクターにそれぞれドラマがあって、それはロストホール事件による東京の変化やテロとのかかわりという形で、全体のストーリーと絡み合っていきます。
　そしてさらに重要なのは、同時に複数の場所に登場する少女みこと。すべての物語を同時並行的に観ているプレイヤーだけが、彼女の存在の異常さに気が付きます。彼女を中心に、事件の背後で起きているタイムパラドックス（時間旅行の矛盾）が物語に大きな謎を与えます。
　フルボイス、リアルタイムムービーで進行していく物語は、アドベンチャーゲームにありがちなテンポの悪さがまったくなく、驚くほど軽快で観ているだけで楽しくなります。魅力的なキャラクターとその運命、深まる事件とタイムパラドックスの謎。タイムトラベル小説のようでありながら、そこにプレイヤー自身が介入して行くおもしろさが『タイムトラベラーズ』にはあります。ぜひあなたも、タイムトラベルを楽しんでみてください。

実際の販売店での“良作ゲーム”コーナー例

　販売店での展開の一例。各お店の写真は7月の良作『カルドセプト』の店頭展開のもの。


▲【東京都／テレビパニック蒲田店】左上に「嗚呼、無属性」と書かれたボージェス。渋すぎる！		▲【愛知県／お宝創庫中村書店】店員さんによる手描きのルール説明。ゲーム中でも親切な説明がありますが、得る人だってがんばってます。


▲【埼玉県／ドキドキ冒険島武蔵浦和店】中央の大きな四角い枠はカルドセプトのマップを表現しています。よく見るといろんな属性の土地がありますよ。		▲【愛知県／ファミーズ富木島店】「やればやるほど深みにハマる」その通りです。

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