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2012年9月28日(金)

TV初放送される劇場アニメ『ベルセルク黄金時代篇I 覇王の卵』でガッツを演じた岩永洋昭さんにインタビュー!

文:ごえモン

 9月30日に、WOWOWでTV初放送される劇場アニメ『ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵』。本作の主人公・ガッツのボイスを担当した俳優の岩永洋昭さんにインタビューを行った。

岩永洋昭さんインタビュー

 本格ダークファンタジーとして、1989年の連載開始から現在進行形で絶大な人気を誇る三浦建太郎氏のコミック『ベルセルク』。1997年にTVアニメ化されたが、原作漫画の世界観すべてを新たに映像化する“ベルセルク・サーガプロジェクト”が2012年に始動。その皮切りとして、ファンの間でも人気が高い“黄金時代”が3部作として映画化されることになった。『ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵』は、その第1弾だ。アニメーションは、世界でも最高峰の技術を誇るSTUDIO 4℃が手掛けている。

 インタビューでは、ガッツ役の岩永洋昭さんに『ベルセルク』の魅力やアフレコの感想などを伺っている。オファーを受けた時の気持ちや、事前にどのような準備をして収録に臨んだのかなど、裏話も聞いているので、ぜひチェックしていただきたい。(※インタビュー中は敬称略)

――『ベルセルク』三部作の主役としてガッツ役のオファーを受けた時の気持ちを聞かせてください。

岩永洋昭さんインタビュー
▲岩永洋昭さん

岩永:大学生の時に原作漫画を読んでいたので、『ベルセルク』の存在は知っていました。ただ、映画『ベルセルク』のオファーがあってオーディションがあるかもしれないと聞いた時、実写だと思っていたんです。見た目(体格)が「ガッツっぽいね」と言われることがあったので、てっきり実写のオファーなのかなと。顔はガッツにそれほど似ていないけど大丈夫かな……とかいろいろ考えたりしていたんですよね(笑)。

 そして、声優としてのオファーだと聞いて――声の仕事はしたことがなかったんですが、せっかくのチャンス、やらせてもらいたいなと。以前、『仮面ライダーオーズ/OOO』でライダーをやらせてもらっている時に、変身した後のライダーに声をあてる経験はあったんですが、アニメーションは初、本格的なアフレコは初めてだったので、わからないことだらけでした。

――ファンタジーものも戦争ものもこれまでに数多く作られてきましたが、その中で『ベルセルク』はここが違う! など、岩永さんが思う『ベルセルク』の魅力は?

岩永:僕自身は、えぐいシーンの多い作品はあまり得意ではないんですが、『ベルセルク』に関しては、たまたま友人が読んでいたのをきっかけに読み始めて、ものすごくおもしろくて一気に読み進めてしまったんです。誰もが持っている醜い部分をさらけだしたうえで人間関係が複雑に入り混じっていく――そういう心の奥底の感情を赤裸々に描いているのが魅力で、引き込まれました。魅力的な作品であるからこそ、キャラクターに命を吹き込むという心構えをしっかり持って挑まないと、ファンの方にもクリエイターの方々にも申し訳ないなとも思いました。

――『ベルセルク黄金時代篇I 覇王の卵』のアフレコ初日のことは覚えていますか?

岩永:よく覚えています。キャスカ役の行成とあさんとご一緒だったんですが、足を引っぱらないようにしなくては……と、緊張していて。でも、監督からは「あまり考えすぎずに思うようにやってくれていいから」と言われていたので、あまり気負わずに臨むことができました。

――ということは、岩永さん自身が元々持っている“岩永さんらしさ”がキャラクターに反映されているんですね。

岩永:ある程度は変えていますが、そうですね、地声に近いです。自分の声がガッツのキャラクターに合っていると認めてもらえたこと自体がうれしくて。男の人からみてもガッツは強くてカッコいい、男の象徴のようなキャラクターなので、ガッツを演じられることが純粋にうれしかったんですよね。

――ガッツの声を演じるにあたって事前にどんな準備をしたのでしょうか?

岩永:もう一度、(いま出ている全巻の)原作漫画を読み直しました。もちろんガッツ目線で。読みながら感じたのは、ガッツは見た目は雄々しくて、強くて、憧れ的な存在ですけど、その裏にはものすごく弱い心を持っているんじゃないか、ということですね。幼いころのトラウマも含めて――。それを補うために彼はひたすら強さを求めている、実はものすごく人間っぽいんです。ちなみに、『I』はキャラクターを紹介するイントロ的なストーリーになっていますが、『II』『III』とシリーズが進むごとに戦闘シーンが多くなります。哀しみと闇を背負いながら雄々しく戦う後半に向けても、『I』でしっかりとガッツが背負っているものを伝えたい、そう思いながら演じています。

――戦闘シーンでは、息づかいや叫びなどセリフではない演技の部分も重要になってきますよね。

岩永:そうですね。ふつうの(俳優としての)芝居は全身を使って感情を表現できますが、声優の場合は声だけでどこまで表現できるかにかかっている。最初のうちはマイクの前で体が動きそうになったりしていました。今日は、ちょうど来年公開になる『III』のアフレコだったんですが、走るシーンでは本当に走り回っているかのように「ぜぇぜぇ」言いながらの息づかいをする。倒れるんじゃないかと思うほど体力を使うんです。あまりにもきつくてむせてしまって、セリフが明瞭に言えなかったかも……というシーンがあったんですが、それが逆にリアリティがあっていいとOKをもらえて。決して妥協はしたくないので、監督が求めている演技に辿りつくまでテイクは重ねる覚悟はありますが、正直、OKが出て内心「ラッキー」と思いました(笑)。

――声優は本当に俳優とはまったく別物の演技なんですね。

岩永:本当に。声だけでこれだけ表現の幅があるんだということを知って、僕自身が一番驚いています。今後、俳優として芝居をさせてもらう時にも今回の声優の経験を生かせると思います。

――原作漫画は22年にわたる連載、世界で3,300万部突破という人気の作品ですが、その映画化で主人公の声を担当することが決まり、周りからはどんな反響がありましたか?

岩永:“『ベルセルク黄金時代篇I 覇王の卵』映画化決定! ガッツの声は岩永洋昭”という情報が公表されてすぐに、僕が『ベルセルク』を読むきっかけをくれた大学の同級生から連絡があったんです。漫画はものすごくおもしろかったのに、その友人がいじられキャラだったということもあって、彼には素直におもしろいと言えていなくて……なので、「なんでお前がガッツなんだよ!」と、反論されました(笑)。あと、この人も『ベルセルク』を読んでいたのか!? と思うような、意外な人から連絡が来たり。女性もけっこう『ベルセルク』を知っているのには驚きましたね。

――そんな女性も引き込まれる『ベルセルク』の劇場シリーズ1作目『ベルセルク黄金時代篇I 覇王の卵』が、WOWOWにて初放送されるわけですが、まだ『ベルセルク』のおもしろさを知らない人たちに向けて、もうひと言、おすすめコメントをお願いします。

岩永:まず、画に釘付けになるというか、『となりのトトロ』や『魔女の宅急便』(のラインプロデューサーを務めた田中栄子氏が主宰する精鋭クリエイティブ集団)で知られるSTUDIO 4℃がアニメーションを手掛けていることが見どころの1つ。物語も単なる合戦ものではなく、ガッツ、グリフィス、キャスカを中心としたそれぞれの人間ドラマが描かれ、単純明快な物語とはひと味違い、深く考えさせられて次はどうなるんだろう……と読み進めたくなるんです。それが『ベルセルク』の最大の魅力だと思います。『I』を見たら絶対に『II』も『III』も見たくなる、原作を知らない人でも楽しめる作品ですね。

――まずは『I』を見なくてはですね! 最後の質問です。もしも実写をやることになったら、ガッツ役をやってみたいですか?

岩永:やってみたいんですが、今回、声をやらせてもらってかなりのキツさを体験しているので、僕にできるかどうか……。でも、万が一やらせてもらうとしたら、ハンマー投手の室伏広治さんやヒュー・ジャックマン級の二の腕を作らないとですね。漫画原作なので、やはり原作により近づかないとファンの期待を裏切ってしまうので。それこそ命をけずって体を鍛えます!

(C) 三浦建太郎(スタジオ我画)・白泉社/BERSERK FILM PARTNERS

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