2012年10月1日(月)
――本作ではこれまでの足を止めて撃つスタイルから、動きながら撃てるようになりました。このスタイルにした理由はなぜですか?
平林:本作を作っている中で「テンポを上げたかったのですか?」とよく聞かれるのですが、我々はアクションの幅を広げようとしていたんです。テンポはシーンによって上がったり、下がったりするものだと思っています。
その上で、戦闘は、より魅力的に、怖く見せたかったというのがディレクターの考えとしてありました。シチュエーションとして、敵が上から覆いかぶさってくるような絵を作りたかった。敵が寝ているキャラに対して攻撃してくるので、キャラクターが寝ないといけない。でもここで攻撃の手段がなかったら、理不尽なシステムになってしまうんです。なので、ユーザーに攻撃の選択を与えた上で、フェアにゾンビが襲い掛かることをしてあげる。
――お互いにできることを増やしたんですね。
平林:そうです。これによってゲームとして怖くなるし、アクションの幅が広がる。倒されてから横に転がって逃げることもできるので、撃つのか逃げるのかを選択できるんです。緊急回避もあるので、横にローリングしたりバックステップしたりできる。
回避がなかった場合、敵がプレイヤーの前に来た時に、一瞬攻撃する前に間をとるような調整が必要になるんです。ダーッと来てそのまま攻撃したいんですが、そうしてしまうと理不尽でストレスばかりたまってしまう戦闘になります。でも、ダーッと来てるのに、攻撃せずにいったん立ち止まるのって不自然ですよね。怖くもなくなりますし。
移動して撃つのは、移動しながら攻撃することを単純にしたいのではなくて、敵との駆け引きの幅を広げるためや角を構えながら曲がる緊張感を感じてもらいやすくするために足したんです。どんなシチュエーションを体験してもらいたいかがまずあって、それに必要なアクションが足されたととらえていただければと思います。
佐々木:プレイヤーのアクションや敵のシチュエーションを増やすというのは、どれだけ多くの恐怖シチュエーションを表現するかという話になります。
もう1つ言うと、時代のトレンドをあまり無視するのもどうかというのもあります。そのために、一般的なFPSやTPSを研究しました。操作感から生まれるストレスをどこまでポジティブに受け取るのか、ネガティブに受け取るのかという話で、単純にストレスでゲームがおもしろくないと思わせたらやっぱりダメだし。
しかも、楽しくないと思う人が、昔からのシリーズのファンなのか、新しいユーザーを含むなのかも重要になります。僕らはシリーズファンのためだけでなく、新たに遊ぶ人にも作っているので、そのあたりのバランスをとりながらトレンド的な操作を取り入れていきました。
――ゲームデザインを大きく変える決断はいつされたのですか?
佐々木:本当に開発初期です。僕はゲームを組み立てる前に、プレイヤーの動きと敵の関係性から考えるんですが、当然それらは操作と切り離せないものなので、初期に考えていました。
――クリーチャーとしてゾンビが復活しています。この理由を教えてください。
平林:まず、僕らはゾンビが大好きなんですよ(笑)。ただ、ゾンビで何作か制作している中で“新たな恐怖”についてチャレンジをしようというタイミングがありました。それが『4』です。新たなエッセンスとして非常に魅力的だったので、同じ方向性で『5』が生まれました。
でもゾンビを作りたい思いもつねにあって、今回その思いを実現しました。また、新しいシステムを組み合わせて、ゾンビがTPSでも成り立つと思ったのが、復活させた要因でもあります。
――それまでは、TPSではゾンビは成り立たなかった?
平林:t-ウィルスのゾンビの定義付けを前提に考えた場合なのですが、ラジコン操作よりも自由度の高い『4』の操作でゾンビを出しても、うまくゲームとして昇華できないとの思いがありました。でも、操作体系と新たなゾンビの設定を用意する事でうまくゲームとしてゾンビを敵として昇華できたと思います。
『6』の中のゾンビは、これまでとは違う理由でゾンビになるんです。そこに、新たなアクションを盛り込んでいったら、今のTPSになじむし、1つ答えが出せる。それらがゾンビ復活を決断した理由です。
――ゾンビにも今のトレンドを取り入れているのですね。
佐々木:逆に、今のトレンドに寄りすぎないように、注意しました。走ってくるゾンビはインパクトもあって強い。もっと早く走ったり、もっと強いゾンビにもできると思いますが、僕の中でゾンビは、1体なら絶対に勝てるやつであってほしい。
そういう強さ、ゾンビの能力についてはいろいろ考えました。今回のゾンビも1人だと楽に勝てると思います。ただ、複数でくるとちゃんとやっかいなバランスにしています。
――今回は、ゾンビやクリーチャーになれるというゾンビファンにはたまらない“エージェントハント”モードもありますね。
佐々木:はい!(笑) 導入した経緯としては、単純に遊んでみたかったからです(笑)。本作はクロスオーバーというシステムを根底にすべてのモードが作られています。違う立場の人間が、1つの物語をさまざまな角度から見ていくのですが、それを敵側の視点でかかわってきた時に、どうなるのかというのがこのモードの始まりでした。
――イメージ的に用意するのが大変そうですが……。
佐々木:ゲームバランスで話すと、フェアな対戦モードではないんです。根本に流れるキャンペーンのストーリーが重要視されるので、それを崩す作りにしていません。“エージェントハント”で簡単にプレイヤーキャラを殺せてしまうと、遊んでいる人は「なんだよ、コレ!」ってなってしまう。
(一同爆笑)
佐々木:そこは、物語の中でプレイヤーを窮地に追い込むとか、怖い絵作りをさせるなどを与える役者のようなイメージで、ゲームに介入してくださいと。その上ですごく頑張るとプレイヤーを倒せるので、それはそれでほめたたえるランキングを用意しています。なので、簡単には倒せないと思います。ただ、敵を使ってガチの対戦をしたいという思いもあるので、そういうフェアなバランスでガチ勝負できるモードも別に用意しようと考えています。
――もう1つのモードということで、マーセナリーズも収録されていますが、これはこれまでのものを踏襲していると考えてよろしいのですか?
佐々木:はい、ベースになっているのは、これまで同様のもので間違いないです。
――マーセナリーズだとお遊びのキャラが用意されていることもありますが、今回もあるのでしょうか?
平林:お遊びの部分はお遊びとして用意してありますよ。マーセナリーズ単体でハイスコアを取ることでアンロックされるコスチュームもありますが、無料のゲーム連動型Webサービス“RESIDENT EVIL.NET(以下、RE.NET)”の中で、別途のアナザーコスチュームのキャラを入手できるといったモノも用意してあります。
ここの情報は、買ったユーザーに楽しんでもらいたい部分なので、これくらいで勘弁してください(笑)。ただし、かなりはっちゃけたものを仕込めたと思います。プロモーションに使いたかったくらいなんで、ぜひ期待してください!
――佐々木さんもかなりしゃべりたそうですね。
佐々木:ワハハハハハ。でも、言えません! 本当に楽しみにしていてください!!
――これまでにないRE.NETを考えたのは、いつごろだったのでしょうか?
平林:初期ですね。本作に関しては、かなりの要素を初期に考えて、そこに向かって作っていきました。
佐々木:開発初期から膨大なコンテンツ量になることがわかっていた。なので端から端まで楽しんでほしい……という気持ちはあったのですが、1つのゲームにかけられる時間は限られてしまう。こちらからモチベーションを与えてあげないと、飽きられてしまう。ゲームの中からだけでなく、外からも情報や刺激を与えてあげたほうがいいと思いました。スマートフォンのアプリには、例えば「マーセナリーズのスコアを平林に抜かれました」という通知が来たりします。ちょっと悔しいでしょ?
平林:悔しいですね(笑)。
佐々木:そしたら、「すぐ家に帰って、もう一回マーセをやって、平林の記録を抜き返してやる!」って思ってもらえると思うんです。
他にも、『6』のことをつねに頭の中に置いておいてほしかった。昔って、ネットがなくても学校の中や行き返りでもゲームの話をして、お互いにモチベーションを限界まで高めていた。あれをつねにしてほしいというのがあって、情報交換やコミュニティの場を用意して、それがいつでもどこでも確認できるように、また、なるべくその確認をめんどくさくなく、能動的に動かなくても、情報が手元にやってくるようなシステムを考えました。
据え置きのゲームなので遊べる場所は限られてしまいますが、こちらからさまざまな情報提供もしていきますし、オンラインイベントを開催するなど、「家に戻って『バイオ6』が遊びたい!」って思ってもらえることをいろいろやっていきます。
平林:本編ですらすごい物量になっているので、最初は「本当にやるのかな?」って思いました(笑)。「いいアイデアだと思うので、走りながら様子を見ましょうか」って語っていたのですが、「大丈夫かな? 間に合うのかな?」と見ていたら、しっかりとした形になりました。
完全無料としているのは、あくまで製品版の延長上であってほしいという意思。有料DLCのような有料サービスもあるし、こういう無料のサービスもあるという、サービス拡張の一端を担ってくれる可能性を感じたので、採用しました。タイトルにナンバリングを入れていないのも、ディレクターの思いが込められています。
佐々木:例えば、フランチャイズとして次のタイトルが出た時に、ここでためたポイントを次の作品でも使えたらうれしいじゃないですか? そういう“作品を超えて連動する遊び”を用意できればと思っています。ソフトを購入した人はぜひ登録して楽しんでほしいです。
平林:先ほどもお伝えしましたが、そこでしか手に入らないコスチュームも用意しているので、ぜひ楽しんでください。あと、RE.NETについて「こうした方がいい」という意見があれば、教えてもらいたいと思っています。発売日から行うサービスですが、出して終わりではないんです。ユーザーの皆さんと育てていきたいので、ぜひ!
▲本編同様に、ものすごい物量になっているというRE.NET。無料で展開されるので、ソフトを購入した際には活用してみては? |
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