2012年10月2日(火)
カプコンから、10月4日に発売されるPS3/Xbox 360用ソフト『バイオハザード6』。ソフトを手がけたサウンドチームから、鉢迫渉さんと成田暁彦さんへのインタビューを掲載する。
本作は、武器やアイテムを駆使して脱出を試みるサバイバルホラー『バイオハザード』シリーズの最新作。これまでのシリーズに登場したレオンとクリス、エイダに加えて、新たな主人公ジェイクの物語が描かれる。
インタビューは、本作についてさまざまなセクションの開発スタッフに多面的に語ってもらうというリレー形式で行われる。今回は鉢迫渉さんと成田暁彦さんに、サウンドチームとしての『バイオハザード6』へのかかわり方について語ってもらった。歳月のかかった開発のため、苦労も多かったようだ。
▲左が成田さんで、右が鉢迫さん。さまざまな部署と連係して、作品を作りあげていった。 |
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――お2人が作品で担当された役割について教えてください。
鉢迫:僕はサウンドディレクターとして、サウンドチーム全体の統括、監修、監督を行っていました。シリーズとしては前作『5』と『オルタナティブエディション』にかかわっていました。
成田:僕はリードコンポーザーです。作曲もするんですけど、今回はミュージックディレクター的な役割で、作曲者に対して曲の発注、ディレクション、指示、監修などを行っていました。
――『バイオハザード』シリーズ以外だと、どのようなタイトルを担当されたいたのでしょう?
鉢迫:僕は『デビル メイ クライ3』と『デビル メイ クライ4』。あと『デッドライジング』、『モンスターハンター』シリーズもちょこっとだけ担当していました。
成田:『モンスターハンター』シリーズが多いのですが、『MH2(ドス)』、『MHP』、『MHP 2nd』、『MHP 2nd G』、あとは『ロストプラネット』、『デビル メイ クライ4』、そして『バイオハザード5』など、結構たらいまわしにされてました(笑)。
――かなりいろいろなシリーズにかかわっていらしたんですね。
鉢迫:そうですね、サウンドチームはかなり幅広いタイトルにかかわっています。
――チーム全体で何人くらいいらっしゃるんですか?
鉢迫:コアメンバーだと6人くらいです。ずっと同じシリーズを担当しているというよりは、作業状況的に空いていると臨機応変に担当が代わっていきます。
――今回の『6』は、どのくらいの製作期間だったのでしょうか。
鉢迫:ゲーム全体の製作期間と同じくらいですから、サウンドに関しても3年半くらいかかっていますね。僕らがやることは音作りだけではなくて、音楽全体のコンセプトから取り組んでゲームの内容も把握していきます。一番最初のゲームの企画概要から、おおまかなシナリオやゲームの内容が決まってきた段階で、コンポーザーの成田とサウンドのコンセプトを固めていきました。
――今回の『6』でのサウンドのコンセプトとは?
成田:『6』をどういった演出で盛り上げていくかというところから考えたのですが、今回はシナリオ全体を大きな1つのカットシーンととらえて、音楽を付けていくといった手法をとるようにしてきました。例えば潜入しているところでは、しばらくすると大きな敵が出てくる流れに対して、あらかじめ曲のAメロとBメロを分けておいて、シーンが切り替わったときに曲の展開をAメロからBメロに切り替えてあげる。
そういったシステムを構築するために、プログラマにもプレゼンを行いましたし、そこで仕様を詰めて実装していったので、時間はとてもかかりましたね。
鉢迫:ディレクターから、ヒューマンドラマをすごく大切にしたいという要望がありまして、そのためにユーザーを引き込むにはどうやって演出していくのがいいかを考えたところ、そのような手法を取ることになりました。
ゲーム中にクロスオーバーというさまざまな視点から1つの事件を見ているユーザーがいるので、その大きなまとまり感を出すためにはどうしたら最適かを考えて、『6』としてのサウンドの構築を進めていきました。
――4つのシナリオの音楽を作るにあたって、同じコンセプトでありながら違う楽曲を作るのは難しかったのでは?
鉢迫:やはりそれぞれに特色を付けたいですよね。シナリオごとに登場する主人公が違いますし、見ている視点も違うというところで、それぞれに特色を付けていきたい。そういったところで個々の色づけは必要なので、各シナリオごとに音楽のすみ分けはやっていました。
成田:例えばレオン編であれば、最初のシーンは弦楽器や管楽器の音を盛り込み、曲調をゴシックホラーにしようとコンセプトを決めていきました。クリス編は、メジャー感のあるハリウッドアクション映画のようなサウンドがコンセプトとしてありまして、プレイしていて鼓舞されるような曲調を作りました。
そして新しいキャラクターのジェイク編では、ヨーロッパ映画的なサウンドをコンセプトとして、小編成なオーケストラでベースを作り込みました。そこにドラムやギターの音をスパイスとして入れています。唯一の女性キャラクターのエイダ編は、デジタルなリズムにシンセサイザーの音をミックスして、さらにオーケストラを交えてます。ただ、そうすると『マーセナリーズ』のようなおまけ感が出てしまう曲調になりそうで、そこをどうやって一級の映画のようなサウンドとして聞かせるか、高級感を出せるかが難しかったです。
――ジェイク編はプレイしていると、焦るような、せかされるような印象がありました。
成田:彼のシナリオは逃亡劇なので、逆にそうでないところのテンションをきっちり分けました。そして強敵が出てくるところはパワフルさ、圧倒さが出るようにしています。
鉢迫:彼の場合、パートナーのシェリーとかかわっていくにつれて、心情が段々と変わっていくんですよね。そこの表現も考えたところの1つです。
成田:ちょっとずつシェリーとの共通点を見出していって、彼も少しずつ「信念とは何か?」がわかっていきます。そういったところも曲調で表していけたのではないかと思います。
――すべてが絡み合った作品作りになっているのですね、ちなみに、お2人はどのキャラクターが好きですか?
鉢迫:僕はクリスですね。あの性格とか生き様、不器用な感じが好きです。
成田:似てるんじゃないですか?(笑)
――え、やさぐれてしまったこととかあるんですか?(笑)
成田:それはどっちかというと僕かもしれません(笑)。
鉢迫:クリスの場合、性格的に感情移入しやすいのもあるんですよね。
成田:今回のクリスのストーリーは、記憶喪失から始まって段々と思い出していくんですけど、そこから過去の話になったり、真相がわかっていくと怒りに変わっていったりして。そこからまた彼自身が変わっていくんですけど、感情の起伏がはっきりしているから、人間らしくて感情移入しやすいのかもしれませんね。
――成田さんもクリスがお気に入りですか?
成田:僕はジェイクですね。やはりストーリーが好きです。先ほども言いましたが、彼が次第に変化していくのが表れているのが好きですね。
――お2人は映画やアニメなどは見られますか?
成田:そうですね、いろいろ見ています。
鉢迫:仕事のためもありますが、刺激はいろいろなところからもらっています。
――ちなみに、音楽はどういったジャンルが好きですか?
鉢迫:ゲームとは関係ない音楽なんですけど、YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)が好きだったのでそういった音楽を聴いてますね。あとはJ-POPも聴きます。仕事から離れると、あまりゲーム側に寄らないようになっちゃいますね。
成田:僕は宝塚歌劇が大好きです。なので本当はジェイク編も宝塚のような展開になってほしかったです(笑)。
――なるほど(笑)。作品的に何かおもしろかったものはありますか?
鉢迫:海外ドラマで最近見ておもしろかったのは『ウォーキング・デッド』ですね。あまりにおもしろくて一気に見ちゃいました。作品のテンポ感が大事だということを学んだ気がします。『バイオハザード』シリーズもそうですが、最近のゲームでは、シナリオの進み方も海外ドラマを意識したものがありますよね。
成田:『6』は最初から、全体を通してアメリカンドラマのテイストにしていこうと決めてました。細かいところですけど、例えばリザルト画面では『5』だとセーブ部屋みたいな静かな感じになっていました。今回は、ドラマの次回予告のようなものを意識して作っています。
――ゲームとしてのアプローチももちろん大事ですが、ドラマ的な手法を使ってメジャー感を出していこうということでしょうか。
鉢迫:メジャー感や高級感を出してほしいという、抽象的なオーダーから始まって、それを補完するために細部に至るまで提案し、こういったドラマ的な手法を取り入れていきました。
成田:メジャー感と言った時のキャッチーさって、とても大事なんですよ。だけどキャッチーさって必ずしも口ずさんで歌えることじゃなくて、しっかりそのシーンがあとになって思い出せることだと思うんです。そういう点は特に注意していました。
逆にそれを使って、クロスオーバー視点の時にあえてそれぞれのキャラごとに同じ曲を流して、そこにいる当事者のキャラクターが同じことを考えているんだということを演出したりしてました。
――違う視点から同じコンセプトの音楽を作ることもありましたか?
成田:ありましたね。例えばレオンとシェリーが再会している場面があるのですが、最初にレオンを見つけたときにシェリーのほうは多分心細かったから安堵の表情になると思うんです。だからそれにあった音楽を入れたほうがいい。
でもレオンから見た時には、“シェリーがいた”という事実だけなので、そこはそんなに強調しなくてもいい。という感じで、キャラごとの感情によってどういった音楽が合うかを考えていきました。
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