2012年10月2日(火)
――ホラーゲームの音楽の作り方は他のゲームと違いますか?
鉢迫:緩急の付け方だったり、音楽の鳴らす場所、鳴らさない場所だったりをすごく考えますね。アクションゲームはある程度同じテンションでいけると思うのですが、ホラーゲームではテンポを遅くしたほうがいい場所だったり、静かにしなきゃいけない場所だったりが、演出上あるのが特殊だと思います。
――やはりそういった音作りは独特なのでしょうか?
鉢迫:そうですね、気持ちが悪かったり怖かったりという感情を感じてもらえるのかというところで、そういった音作りには気を使いましたね。人が聞いて不快感を得るような音ばかりだと問題なので、その方向性ばかりではなく、どちらかというと緊張感を持たせるような音を作っていきました。あと、普段聞かないような音量で聞くと気になってしまうような細工もあったりします。
――実際に音を入れ込んだ状態のものを、何度もプレイして確かめたとお聞きしました。
鉢迫:そうですね。僕らは音だけを作っているわけではなくて、ゲーム全体を作っているので、サウンド的にこうしたほうがいいというアプローチは他のセクションにもしていきました。いろいろなセクションにサウンドチーム的な視点からの要望を伝えるために意見を言いますし、もちろん他のセクションからの意見も取り込んでいきます。他のセクションからはサウンドを入れる前の状態でプレイをしていてまったく怖くなかった場面が、入れた途端に急に怖くなったということが多かったみたいです。
――『6』での総曲数はどれくらいあるのでしょうか?
成田:今回はいろいろ合わせて240曲くらいになっています。これは前作と比べてもだいぶ多いですね。内部的にはAメロとかBメロとかもっと分かれているので、ファイル数的には370曲くらいはあると思います。
鉢迫:今までであれば、戦闘の曲という感じで何度も使う同じ曲が多いんですけど、今回はそもそもシナリオが違いますし、キャラクターの見方も違います。ドラマで言えば話数というよりシーズンが違うので、それぞれ違うものを作る必要がありました。もちろん使いまわすところもありますが、そのままではなくてアレンジをきかせて印象付けたりしています。
成田:まず前提として大事なところには全部オリジナルの曲が必要だと考えたあとで、同じシチュエーションやテンションの時に、その同じ曲をアレンジしていこうという考え方です。なので結果的に自然と増えていったというわけですね。最初は180曲くらいの予定でしたが、60曲くらい増えちゃいました(笑)。
――60曲ってかなりの数ですね。
鉢迫:曲の製作進行としては、一番初めの段階でシナリオはほぼ固まっていたので、私と成田でどこにどういう曲を入れていこうかという設計図を描いていました。その時は「180曲くらいかな」という見積もりだったんですけど、ゲームの部分がまだ固まっていないところがありましたので、最終的には増えてしまいました。
ただ、協力していただいた作曲家の方々も、もともとゲームが好きな方ばかりでしたし、海外の方にも協力していただきました。そういう意味ではワールドワイドで展開していくことを考えている『6』にとって、いろいろなセンスの曲が入った作品になったと思います。
――これまでのシリーズでは使わなかった技術的なことはありましたか?
鉢迫:空間や距離感のある音を作りたいというのはありまして、ボイス収録の時にも離れた位置にマイクを用意して、その音を録ったりしました。それを使うことで、空気感を持たせた音にすることができます。そういう音を初めから使うために、いろいろ対応しました。
――クリーチャーの声はどうやって作るのでしょうか。
鉢迫:まずデザイン画があがってきた段階で、デザイナーとディレクターと話をして、どういうクリーチャーなのか説明を受けます。僕らはそのクリーチャーがどういった素材感なのか、体格なのかなど質感の質問をしていきます。それにあわせた手法で実際に音を作っていきます。
例えばジュアヴォの鎌だったら、ナッツや野菜を使い、しなしなした感じやクリスピーな感じを表現しています。実際に聞いてみた時とマイクを通して聞いてみた時では、全然違う感じの音になっているので、新たに試してみるものもたくさんありました。
あと、しゃべらないクリーチャーはアニマルサウンドを加工して作ったりしてます。人型は声優さんにお願いしていますが、ジュアヴォは言語があってコミュニケーションをとっている可能性があったので、言語として何かしゃべらせたほうがいいということになりました。といっても特殊な言語なので、その演技ができる声優さんを見つけるだけでも大変な作業でしたね。
――ウスタナクの音はどういう感じで作られたのでしょうか。
鉢迫:特徴的な武器ですよね? パイプのようなものに金属のワッシャーが挟まっている道具があって、それを引っ張るといい感じの金属音になるんです。あとは、金属でも少し古い素材を探してきて使ったりしています。
――『6』でも多くの銃器が登場していますが、銃器の音はすべて実銃を使っているんでしょうか。
鉢迫:今回は銃器に限らず、足音から乗り物まで、すべて新しく録音をしています。銃器の収録は専門の方にお願いして、海外で行いました。
――舞台としていろいろな国が出てきますが、国ごとの音楽の違いで心がけたところはありますか?
成田:実はそこはあまり意識はしたくなくて、若干アクセント程度で違いを入れた程度です。例えば中国だったら、置いてあるラジオから中国のポップスが流れていたり、建物から琴の音が聞こえたりとか、そういうもので表現するくらいですね。
ちなみにあるステージに銅鑼(ドラ)があるんですけど、最初鳴らなかったんですよ。でも開発内部のアンケートで「カプコンなら鳴るはずだ」って書いてあって(笑)。それで鳴るようにしたというエピソードはありました(笑)。
――それは実際に聴いてほしいですね。『6』で、特にこだわった曲、思い入れのある曲を教えてください。
成田:詳細は言えませんが、ラストシーンは全部好きですね。結構おもしろかったのは、メニュー画面の曲っていうのがあるんですけど、キャラクターを選択した時にベースの曲に重なって、それぞれのテーマ曲が流れる。今までもトラックが重なっているのはたくさんあったのですけど、それぞれのテーマメロディが切り替わっているのはあまりないので、おもしろい試みができたんじゃないかなと思っています。
鉢迫:僕が印象深いのはオーケストラですね、新しい試みをできたと思うので。
成田:プレイヤーの気持ちが高まる場面では、効果的にオーケストラサウンドを使っています。今回のオーケストラは、オーストラリアで100人規模で収録しました。前作くらいからかなり音楽的にも濃くなってきていると思うので、オーケストラを生で使えたのは効果的だったと思います。
前作ではオーケストラで録ったものだけでよかったんですけど、エイダ編ではオーケストラの上にデジタルサウンドをかぶせなきゃいけないし、ジェイクの場合はドラムの音を収録する必要がある。そういった新しい試みは特に思い入れがありますね。
――実際にできあがったものを遊んでみていかがでしたか?
鉢迫:壮大なドラマでしたね。何度かプレイしてみて新しく発見することも多く、違うシナリオをプレイしたときにわかることもある。何度でもプレイしたくなりますね。
成田:本当に何度プレイしたかわからないくらいです。今回、ゲームの流れにあわせて音楽を作っているので、例えばリザルト画面では必ず同じ曲が流れるわけではなくて、演出的に前のシーンの曲を効果的に流したりもしています。そういう演出がたくさんあるので、すべてを探してみて、楽しんでほしいです。
――最後にサウンド面での注目ポイントをお願いします。
鉢迫:楽しんでほしいのはドラマ、彼らの事件の背景を見てほしい。そしてゲームをプレイするときは、ぜひサラウンド環境で楽しんでいただきたいですね。大きな音が出せる環境なら、試してほしいですね。
成田:全編通してサウンドの演出をしているので、スキップしないで聞いてほしいです。あとは大事なシナリオを生かせるように、意識して僕らも音を作っているので、セリフと音楽が絶妙にマッチしたストーリーを存分に楽しんでほしいです。『サウンドトラック』も大ボリュームで作っているので、ご期待ください! 11月14日に発売です。
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