2012年10月10日(水)
――3DSと言えば立体的な演出ということで、SHARさんをはじめ、たくさんの方から寄せられた質問です。「3Dに対応するうえで、グラフィックのデザインの際に意識したことなどはありますか?」
▲吉田さんの監修のもと、よりグラフィックの完成度が高まっていったという。 |
吉田:ポリゴンの3Dモデルを立体視させるというのは、プログラミングで比較的簡単にできるので、他のゲームと差を出すのは難しいと思いました。そこで、むちゃくちゃ描き込まれた2Dの背景画を、3Dで立体視させるということにこだわりましたね。
普通だったら3Dのモックアップを作って、それに合わせて絵を描けば、あまり苦労せずに立体化できます。でもそれだと絵のよさがでないので、まずは好き勝手に描かせてもらって、あとでこれを「なんとか立体化して!」とお願いしました。
シリコンスタジオの方々に大変苦労をおかけしたとは思うのですが、そのおかけで『ブレイブリーデフォルト』の味につながったと思っています。
大沼:一枚絵なので、建物などの裏側は当然描かれていないんですけど、それはこちらでなんとか補完して、違和感がないように調整していきました。最初のころに作った“沈みそうな国 グランシップ”はまだ慣れていなくて、どうやったら奥行きを持たせられるのかという感覚がなかなかつかめなくて大変でしたね。
――本作のダンジョンは比較的スタンダードな3DCGで作られてる場合が多いと思いますが、それと2Dの絵を立体的に演出するのでは、どちらが大変でしたか?
大沼:どちらかと言えば、イラストを立体的に見せるほうが大変でした。とはいえ、ある程度作り慣れてからは、スムーズに進むようになりましたけど。
――続いて、nakahataさんからの質問です。「ゲーム中で見られる3Dの背景グラフィックを作るのに、どのくらいの時間がかかっているのでしょうか?」
大沼:時間的には、1つの街を作るのに1~2週間くらいだと思います。ある程度ラフで作った状態でも結構見栄えがいいので、その段階で吉田さんに送ってチェックしてもらい、そこから細かく作り込むという作業をしていました。
吉田:送っていただいたものがとても素晴らしかったので、背景の作り方に関してはほとんどおまかせでお願いしていましたね。
――1つの街を作るのに、何人かで分業したりするのでしょうか?
大沼:いえ、大人数で分担しても、逆に細かい部分のテイストなどを調整するのが大変なので、基本的に1つの街につき1人で作りました。職人芸のような感じで、じっくり作り込んでいきましたね。
――次にワオンさんからの質問です。「吉田さんがグラフィックのリードデザイナーとして一番苦労された点は何ですか?」
吉田:自分がスケジュールを守らなかったりしたことでしょうか(笑)。それはさておき、誰でも描ける絵ではなかったので、ちゃんとしたクオリティで描ける人間を確保するのが大変でした。別のゲームで背景を担当している人間にも一時的に合流してもらったりしていましたね。
――続いて、ファルさんをはじめとして多くの方からいただいた質問です。「代表的な国について、デザインの際に工夫した点や苦労した点を教えてください」
吉田:“はじまりの国 カルディスラ”は、これが一番オーソドックスな街という設定をしています。たくさん家があってそれぞれに扉があって、入れそうなところを増やそうということで、このような街並みになっています。
普通なら左側の街の部分だけ作ってあれば十分なんですけど、空気感や奥行き感を出すためには、中景や遠景を入れることが大事だと思って、右側の港などもきちんと描きました。
▲街の右側は海に近い低地で、港などの施設を確認できる。ゲーム中ではこの部分には進めないが、視点を引けば見ることは可能。 |
“沈みそうな国 グランシップ”は、とてつもなく巨大な船だということをどうやって表現しようかと、いろいろ試行錯誤しました。あと、この街は奥へ進むとマップが切り替わってつながっていくので、その行き先を感じさせるような構造を心がけました。
▲イラストを実際に3Dマップ化した際、社内での評判がとても高く、これで手ごたえをつかんだという。ちなみにイラストの構図は、浅野さんのラフを参考にしたとのこと。 |
“砂と大時計の国 ラクリーカ”は、立体感よりも風車や歯車の動きを見せることを重視しました。そのために街を真正面から見せることで、他のマップとは違う雰囲気を出せたと思います。
▲真正面からの構図となっているのは、このラクリーカのみ。移動できる範囲ではほとんど奥行きはないが、その分、他の街よりも高低差を感じられる。 |
→インタビューのラストには貴重な設定画も掲載!(3ページ目へ)
(C)2012 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
MAIN CHARACTER DESIGN:Akihiko Yoshida.
データ