News

2012年10月26日(金)

発売後だからこそ語れるエンディングに込めた意図も激白! 『イース セルセタの樹海』ロングインタビュー

文:電撃オンライン

■『軌跡』シリーズとはまた違う『イース』シリーズのストーリー作りの手法

――“セルセタの樹海”をテーマにすることが決まった後、ストーリーや世界観はスムーズに決まったのでしょうか。

 どんなストーリー展開にするのかは、とにかく何パターンも考えました。例えば、当時の日本ファルコムのスタッフが考えた原案の通りにやることや、他社さんのライセンス作品として発売されたスーパーファミコン版やPCエンジン版のストーリーラインに沿って作ることも考えました。ただ、当時の『イースIV』は、『イースI・II』の大ヒットがあって、その延長線上としてストーリーが組まれた部分もあります。

 それに比べて今回の状況は、PS Vitaという新ハードで、新しいユーザーさんにも遊んでほしいという気持ちがありました。だから最終的には、新たな完全新作としてストーリーや世界設定を考えるという選択肢を選んだんです。

 それから、記憶喪失のアドルを出すことによってシリーズの導入にもしたかったんですよ。今の状況で「『イース』シリーズを遊ぶ時は、『イースI・II』から遊んでください」とお願いしたとして、若いユーザーさんは戸惑ってしまうと思います。

 その一方で、『イース』シリーズの知名度自体はとても高くて、アドル役の梶裕貴さんやカンリリカ役の小倉唯さんみたいに10代や20代の若い声優さんも、皆さんタイトルは知っていました。でも、遊んだことはないというのを聞いて、これはなんとか、そういった方たちが遊んでくれるきっかけを作りたいと思ったんです。そういう意味でも、シリーズの25周年記念作品であると同時に、ゼロからのシリーズ導入としての側面もあわせ持つ作品にしたかったんです。

『イース セルセタの樹海』 『イース セルセタの樹海』
▲完全新作として構築された『イース セルセタの樹海』のストーリー。原案にはいなかった新キャラクターも多数登場している。

――これまでの『イース』に比べると寄り道の自由度が高く、序盤でも強力なモンスターがフラッと歩いているのもおもしろく感じました。

 制作の初期段階で、「樹海なのに一本道はおかしいだろう」という話がありました。ですから、序盤のメインシナリオを順不同にすることは早い段階で固まっていましたね。

 とにかく樹海らしさを出すためにも一本道はやめようと意識していたんですが、特にマップの制作担当が気合を入れて作っていった結果、マップの広さがものすごいことになってしまいました。あまりに広すぎて、ちょっと不安に感じていた部分もあったんですけど、プレイしていただいたユーザーさんたちから、かなりの数の「心が折れるほど樹海が広い。でも、おもしろくて止め時が見つからない」という声が寄せられているんですよ。それを聞いた時に、ちょっとガッツポーズをしちゃいましたね。僕らとしては、まさにそれがやりたかった部分ですから。

――広いうえに、少し前のマップで探索できていない部分があると、悔しくてついつい戻っちゃうんですよね。

 我々は制作をしているので、どうしても広さや完成形がわかった状態でプレイすることになります。予備知識なしで初めてプレイした際に感じる広さは、実際に遊んでくださったユーザーさんの生の声を聞かないとわからないので、不安な部分ではあったんですよ。広すぎてつまらないと言われてたら、どうしようと。でも、マップの広さを感じてもらいつつ、そこがゲームとしておもしろいという声をいただけたようなので、本当にうれしいです。

――最初の街を出て次の街に着くまでが、思ったよりも長いんですよね。それだけでも、これまでの『イース』とはちょっと違うぞと(笑)。

 そういう声も聞きますね、あとは、カーナに会いに行ったはずなのに、知らない男(オズマ)が出てきてビックリしたとか(笑)。最初に迷いの森に行って、ここはまだストーリー的に来る場所じゃないと勘違いして、霧ケ峰からセルレイルートへ進む人も多かったようです。それから、序盤ではまったく関係がない北東部分へと迷い込んでしまった人も多いようですね。

 かなりマップは広いんですけど、移動手段と戦闘がしっかりしていれば、きっと前向きに楽しんでもらえるんじゃないかと考えていました。これまでの『イース』はフィールドの移動も一本道になりがちだったので、そのへんも崩したかったんです。

――あとは今回、魔法具がおもしろいと思いました。どのような流れでシステムが生まれたのでしょうか。

 魔法具でアドルたちが小さくなることに対して、社内では「『イース』の世界観らしくないんじゃないか?」という声もありました。でも、ゲームのおもしろみの部分を優先させようということで、そのまま採用しました。

 これが『軌跡』シリーズだったら、もっと議論が長引いたと思うんですよ。『軌跡』シリーズは緻密なシナリオや世界観があって、そこにゲームシステムを乗せていくというアプローチなので、いきなりなんでもアリの魔法的なアイテムを出すわけにはいきません。

 でも、『イース』シリーズの場合は逆で、ゲームとして、アクションRPGとしておもしろいことが前提で、そこにシナリオを重ねていくというスタンスです。だから魔法具も、設定がどうこうと言うよりも、プレイしていて楽しいか、ギミックとどんな相乗効果を出せるかといったゲーム的な部分を優先して考えていきました。

『イース セルセタの樹海』 『イース セルセタの樹海』
▲体が小さくなると普通は通れない道を通れるようになるが、普段は楽勝の敵が強大な敵となることも! その他、ダッシュで壁を登ったり、水中に潜れたりと、さまざまな魔法具が登場する。

――最初に入手できる、体が小さくなる魔法具は衝撃でした。

 ゲームバランス的に、最初に出てくる敵は小さくて弱いじゃないですか。でも、魔法具で小さくなると、そんな小さくて弱い敵が、でかくて強い敵になるわけです。そこを言葉じゃなくて、実際に遊ぶ中で感じてもらう部分が『イース』らしいなと僕らは考えています。だから、あえてその辺は理屈ではなく、ゲームの仕組みとして楽しんでもらえるようにゲームデザインを考えています。

――システム的には、キャラクターごとのパーソナルアクションも楽しかったです。

 本当にシンプルで、難しいことはやっていませんが、おもしろい形に仕上がったと思います。ダンジョンなどで謎を解かせるギミックは大きく2種類あって、1つはがっつりと唸りながら考えてもらうもので、もう1つはパッと見ればどうすればいいかわかるものになります。後者は一見すると不要に感じますが、実はそういう要素を入れていくことで、ゲームのテンポに組み込まれていくんですよね。そういったギミックがあることでステージとしてのメリハリが出ますし、バトルと謎解きのテンポの差も生まれてきて、「アクションゲームを遊んでいるな」という実感に結びつくことも多いんです。

 また、キャラクターの個性の部分も感じてもらうことができたので、今後の作品を作る際には、パーソナルアクション的な要素は積極的に考えていきたいと思っています。

『イース セルセタの樹海』 『イース セルセタの樹海』
▲デュレンなら宝箱のカギを開ける、カーナならナイフを投げるなど、キャラクターそれぞれのパーソナルアクションが使用可能。これらを使うことで、新たな道が開けていく。

→スーパーファミコン版やPCエンジン版『イースIV』は
どこまで意識した?(4ページ目へ)

(C)2012 Nihon Falcom Corporation. All rights reserved.

データ

関連サイト