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2012年11月1日(木)

『マクロス』の河森正治監督が感じる『エクストルーパーズ』の魅力はバランスのとれた野蛮さ!? ここでしか読めないスペシャル対談の前半を掲載

文:電撃オンライン

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■オリジナルの要素を用意できるか、できないかでSFへの道が決まる

――SF作品を手がけるにあたって、どういうことを意識、イメージしながら作品を構築していきますか?

『エクストルーパーズ』

安田:実はSF作品はあまりやったことがないんですよね。一度やってみたいとは思うのですが、作品数が多いので何をやるのがいいのかは悩むと思います。

河森:正直、SFの定義が難しい。30年以上前に、スタジオぬえに入った時にも「SFとは何か?」で一晩論争しても終わらないことがあった。スペースオペラなのか、SFなのか、ジャンルを特定するのは難しいです。

安田:わかりやすいSFだと、宇宙に行ってメカや宇宙人が出てくる。でも、それだけでなくちょっとした中に違和感があるのがSFでしょうか?

佐藤:少し(S)不思議(F)感ですね?

――藤子・F・不二雄さんですね。

河森:サイエンス・フィクションという意味だと、科学者が作家になり出した20年くらい前から、僕らが相手をできなくなった。本当に科学をやっている人が書くものは人間ドラマ的にはつまらないことも多いけど、サイエンス度ではかなわない。そうなった時に、僕らが目指すのは、スペースオペラなのか、サイエンス・ファンタジーなのか、素敵フィクションなのか(笑)。

(一同笑)

河森:80年代に僕らが思っていたのは、“センス・オブ・ワンダー”があるかどうかを条件にしていた。今までにないようなツイストがあるかどうかで分けていた。自分の場合であれば、バルキリーを出そうがリアルな世界観を描こうが、それまでの作品のどこかにあったと思うけど、宇宙戦争を武器ではなく歌で解決するのはなかっただろうと。

佐藤:そうですね、なかったと思います。

河森:もちろん神話までさかのぼればあるかもしれないが、兵器の代わりに歌というのは、近年ではほぼない。そこで、自分の中では“SF”と定義付けできた。定義は、あくまでも個人の中にあるものだからね。

 世界観に新しいポイントが1つでもあれば、周りが新鮮になる。他の作品と違う表現が出てくるので、その1つを見つけられるかは勝負だよね。その1個があれば、新しいタイトルをつけていいと思う。その定義が変わらない限り、例えば『マクロス』なら『マクロス』シリーズという。

『エクストルーパーズ』

佐藤:『エウレカ』であれば、ボードの上に乗るだし、それがジ・エンド(ニルヴァーシュ type the END)になるとスキーになる。そういうバリエーションの扱いですよね。

小嶋:この『エクストルーパーズ』も、新しいテンポを入れようとしつつ『ロスト プラネット』シリーズに縛られている時は、このタイトルではありませんでした。爽快なアクションやマンガ要素を入れた時に、新たなタイトルを付けないといけないということになりました。

河森:そこで、初めて革新的な世界観や新しい表現を許される土壌が生まれる。

佐藤:それをOKしてくれると、頭突きでぶつかって目から星が出てギンギラやキラキラという独自要素が生まれる。まるですでに用意されていたかのような設定になりました。

河森:それは運命付けられていたんだよ! ただ、やっぱり同じチームでやっていると、新たなアイデアは出にくくなってしまうので、時々新鮮な空気、新しい血が欲しくなる。

佐藤:僕はアニメのシナリオをやっているので、「アニメっぽいことをゲームでやりませんか?」と言われても新鮮に感じなかったと思います。「ゲームでマンガチックな表現があって、集中線や擬音が画面に出てくるんです」と聞き、アイデアを見せてもらい「これは新しいしやりたい!」と思いました。

『エクストルーパーズ』

小嶋:マンガ的な表現をしているゲームは他にもあると思いますが、「やるならトコトンやってやろう!」といろいろな試みをしました。

佐藤:ムービーシーンだけなら、そこまで表現としてインパクトを感じなかったかもしれないですが、それがゲーム中に効果的に取り入れられている。当たっている様子を「ドドド!」と実際に文字で表現して、それが見てすぐにわかるゲームとしての意味もあると聞き、それは効果的で新鮮だと思いました。

河森:トコトンやるって、重要だよね。変形や合体も似たようなパターンの繰り返し。これまでにない要素をトコトン入れたものが生まれないと、新しい作品とは言えないと思います。特に今はアニメの作品数が多いので、大変ですよね。

佐藤:作品数が多いので、デザイナーもかぶり始めていますよね。

安田:独自のラインや世界観も少なくなってきましたね。

11月2日掲載の後半に続く!)

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