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2012年12月6日(木)

マスターアップ直前にインフルエンザ!? 根性すら尽きかけた『ファントム・キングダム』の壮絶裏話【電撃日本一】

文:電撃オンライン

 この“新川社長インタビュー”は、日本一ソフトウェアの設立20周年を記念する特設ページ“電撃日本一ソフトウェア”の連載コーナー。2013年の7月までの長期間にわたって、社長である新川宗平さんにさまざまな話をお聞きしていく。

 第11回目となる今回は、『魔界戦記ディスガイア』とは異なる方向性で作成されたやり込みS・RPG『ファントム・ブレイブ』や『ファントム・キングダム』、都市伝説を題材にしたテキストアドベンチャー『流行り神 警視庁怪異事件ファイル』の思い出話をお聞きした。

■日本一ソフトウェアの可能性を広げるために挑戦した新たなS・RPGとホラーAVG

“電撃日本一ソフトウェア”
▲日本一ソフトウェア代表取締役社長の新川宗平さん。

――今回は2004~2008年に発売されたタイトルに関する思い出をお聞きします。まずは『ファントム・ブレイブ』(2004年1月22日発売)から。

新川:『魔界戦記ディスガイア』が10万本以上の売り上げを記録したことで、普通なら『魔界戦記ディスガイア2』を作る流れになると思うんですが、当時のスタッフは私も含めてみんな活きがよかったので“勢いがあるうちに新しいタイトルに挑戦しよう”という話になったんです。その結果、生まれたのが『ファントム・ブレイブ』でした。

このタイトルを制作するうえで気をつけたのは、『魔界戦記ディスガイア』で評価されたやり込み部分を盛り込みつつ、まったく異なる雰囲気を出すということでした。

――『ファントム・ブレイブ』は、ストーリー展開が『魔界戦記ディスガイア』とはかなり違ってましたよね。

新川:そうなんです。『魔界戦記ディスガイア』がハチャメチャコメディだったので、『ファントム・ブレイブ』は世界名作劇場のような雰囲気にしてみました。また、やり込み要素も、武器の合成や称号による強化といった要素を取り入れて独自性を出しています。

“電撃日本一ソフトウェア” “電撃日本一ソフトウェア”
▲自由度が高い育成に加えて、マス目がない自由な移動や称号による能力強化といったシステムが楽しいPS2用S・RPG『ファントム・ブレイブ』。世界名作劇場的なノリのストーリーも注目。シナリオなどが追加され、WiiやPSPでも発売された。

――次に登場するのが『流行り神 警視庁怪異事件ファイル』(2004年8月5日発売)ですね。

新川:『流行り神 警視庁怪異事件ファイル』は“核として動く少人数の人材で本気の1本を作る”という、いわゆる小~中規模の2ライン目を意識して制作を開始したタイトルです。少人数で作れるものは限られてくるんですが、みんなパズルゲームに戻るのは嫌だという話になり、どんなゲームを作るかはさんざん悩みましたね。最終的に、集まったメンバー全員がAVG好きだったので、AVGを作ることになりましたが(笑)。

――都市伝説を題材にしたロジックホラーという内容についてはいつ頃決まった話なんでしょうか。

新川:具体的に何を作るかは、AVGにすると決めた後に考えました。最初は『魔界戦記ディスガイア』のAVGといった案も出ていたんですが却下しました。これは売れるかもしれないけれど、発想としておもしろくないですから。もし本気で作るなら日本一ソフトウェアとしての可能性を広げるもので、かつ、おもしろいものというのが目標でした。そうしたものを作ることで、やり込み系S・RPGだけじゃない信頼のブランドという認識を作っていきたかったんです。

――その結果完成したのが、『流行り神 警視庁怪異事件ファイル』というわけですね。

新川:結果としてなんですが、『流行り神 警視庁怪異事件ファイル』は、今までの日本一ソフトウェアのラインアップとあまりにもテイストが違いすぎたため、社内で作ったものだと思ってもらえなかったんですけどね。「外注さんのゲームですよね」と言われることもあったくらいで(笑)。ただ、日本一ソフトウェアの2ライン目の足掛かりは『流行り神 警視庁怪異事件ファイル』になったというのは間違いありません。

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▲都市伝説にまつわる奇妙な事件を解決する、ホラーテイストのPS2用推理アドベンチャー『流行り神』シリーズ。これまでの日本一ソフトウェアの作品とはストーリーも絵もガラリと雰囲気が異なる。DSやPSPでもシリーズが展開された。

――この時期には2周目に追加要素がある『ラ・ピュセル 光の聖女伝説 2周目はじめました』(2004年10月21日発売)が発売されていますが、追加要素を加えた廉価版の開発というのは早い段階から考えられていたものなのでしょうか?

新川:2周目に追加要素が加わった廉価版の制作は、実はPS用『マール王国の人形姫+1』が最初になるんですが、ゲームとあまり関係ない部分での追加だったので、もったいないなと感じていたんです。その反省点を生かして、ゲームとして遊び込める要素を増やしたのが『2周目はじめました』です。

 完全版商法と言われることもありますが、我々としてはその時その時で全力を尽くしているので、『2周目はじめました』で追加されている要素は、通常版の制作時には絶対やれないことなんです。我々としては、元のタイトルに手が出なかったお客様はもちろん、買ってくださった方にもあらためて楽しんでいただけるのであれば、うれしい限りです。

――最後は『ファントム・キングダム』(2005年3月17日発売)ですね。

新川:このタイトルはとにかく苦労した思い出ばかりで、当時の日本一ソフトウェアのスタッフは誰もが苦しんだと思います。まずシナリオは、私が自分で書いていましたが、おもしろくなかったので一度総取り替えしました。音楽のほうも難産でしたし、ゲームシステムもかなり無茶な盛り込みを行ったので、システムをすべてチェックするのが大変でした。それに加えて、バランス調整、バグの発見・削除もやらねばならず、本当に目の回る忙しさでした。

――これまでの記事にもあった“最後は根性!”という感じですか?

新川:あの時ばかりは根性も底をついて、『流行り神 警視庁怪異事件ファイル』のマスターアップを終えたばかりの簗瀬(※)をデバッグやバグの管理に投入するような状態でした。彼に“今までで一番苦労したタイトルは?”と聞いたら、間違いなく『ファントム・キングダム』と答えるでしょうね(苦笑)。

※簗瀬涼司さん:『流行り神 警視庁怪異事件ファイル』のディレクター。最近では『特殊報道部』のディレクターを担当。

 私自身もマスターアップの時期にインフルエンザになって寝込みましたし、本当に苦労の連続でした。以前の記事で、当時1年に1本ゲームを出さないと会社がつぶれるかもって言ってたじゃないですか。このタイトルが発売されたのが3月17日なので、本当にギリギリだったんです。

“電撃日本一ソフトウェア” “電撃日本一ソフトウェア”
▲本になった魔王が自分の本来の体と魔界を取り戻すために戦うPS2用やり込みS・RPG。主人公のゼタはLV2,000の魔王だが、本に変えられてしまったために何もできないというユニークな設定。そのため、さまざまな建物や部下を召喚して、敵と戦わせることになる。のちにシナリオやキャラが追加されたPSP版が発売された。

【次回のインタビューは12月27日掲載予定】

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