タクシードライバーのお仕事は“寄り道”を超えたおもしろさ！ 12月の話題作『龍が如く5 夢、叶えし者』の桐生編をプレイ

文：キャナ☆メン

　12月6日。辰年を締めくくるゲームソフトが発売されます。そう、PS3用A・AVG『龍が如く5 夢、叶えし者（以下、龍が如く5）』です！　今回は、ライターのキャナ☆メンが序盤をプレイしたインプレッション記事をお届けします。

　『龍が如く』シリーズと言えば、“堂島の龍”と呼ばれた伝説の極道・桐生一馬が、時に政治や警察まで絡んだ極道の陰謀を打ち砕く、シリアスかつ爽快なストーリーがつづられるゲームです。人物の生き様をリアルに描いたドラマ性に加えて人気なのは、現実の街並を彷彿とさせる繁華街“神室町”を自由に散策して“何でもできる”こと。キャバクラ、ケンカ、ゲームセンター、カラオケ、食事、バイト……他にもいろいろな遊びが詰まっています。

　そんな『龍が如く』が、最新作『5』では東京以外に札幌、名古屋、大阪、福岡にも舞台を広げて、ストーリー的にも全国の極道組織を巻き込んだ東西抗争の陰謀を描いていく……大幅なボリュームアップを遂げました。その中でも今回は、序盤の舞台となる福岡にスポットを当てて、ゲームをプレイした感想をお伝えしていきます。

▲主人公も桐生一馬だけでなく、シリーズのヒロインである澤村遥、『4』から登場の冴島大河と秋山駿、新キャラクターの品田辰雄を加えた5人います。それぞれの視点を追っていくと、やがて物語は1つに……という構成です。

■ギャップありすぎ!?　これまでにない桐生一馬の姿に衝撃

　福岡で操作することになる主人公は、『龍が如く』の顔である桐生一馬です。『4』では桐生の出番が遅いのが少し不満だったので、初めから桐生を操作できるのは興奮しました。言うなれば、野球の試合で先頭打者ホームランを見た気分。さらにプレイを進めて興奮したのが、これまでの桐生と『5』の桐生とのギャップです。名前からして鈴木太一。偽名ですね。しかも一介のタクシードライバー。そのことは発売前から公開されていましたが……え、コントローラをにぎって最初にすることが“ライバル会社の社長のところまで、菓子折持って謝りに行く”ことだって!?

▲極道から足を洗って養護施設を営んだ『3』以後も、やはり社会人的な臭いは一切感じさせなかった桐生が……ある意味で世の中から浮きまくっていた桐生が……こんな普通（？）の社会人になってしまうなんて！

　ごめんなさいした後は、沖縄で運営していた養護施設への仕送りです。「最低1万は入金しておこう。子どもたちの生活のためだ……」って、プレイ開始時の所持金は3万円ですよ、桐生さん。しかも手土産は自腹ですから、あっという間に手元のお金は1万1千ほどに。泣く泣くお金が削られていく悲哀とともに、己を殺して小市民になる桐生、子どもを思う桐生にすっかり“父親”を感じました……。『3』や『4』の時は、さほど父性を感じなかったのですが。桐生はなぜ変わってしまったのか？　それはゲーム開始時のオープニングに大きなヒントがありました。

■語らない桐生――“無言”の中に感じる“無限の想像”

　ゲームを始めると、まずはムービーシーンで極道の世界が東西抗争の危機にある状況が描かれます。とあるタクシーの中、3万人の構成員を束ねる東城会六代目会長の堂島大吾が、その“危機”を静かに語る相手――それが鈴木太一を名乗る桐生一馬です。己の名前を捨てた桐生は何も語らず、大吾に“自分を巻き込むな”と言わんばかりに、彼を福岡・永洲街の端で降ろしてしまいます。

▲桐生が大吾に対して口にしたのは、タクシードライバーとしての事務的な受け答えのみ。大吾は「これでも俺なりに精一杯――棘の道を歩いているつもりなんですよ」と苦悩を語ってタクシーを降ります。しかし、車内には重苦しい空気がただようだけ……。

　大吾を降ろした桐生は、タクシードライバーの常連が多い立ち食いそば屋で、晩飯を食うのですが……。ふと目に入るのは、店内のTVに映っていたアイドルを目指す女の子。彼女は、桐生にとっては娘にも等しい澤村遥でした。番組を見ていた中年のタクシードライバーたちが、遥を指して「子どもを芸能界に入れさせる親は、その子の将来を真剣に考えていない」と話す声が桐生の耳に聞こえてきます。桐生は早々にそばを平らげ、叩きつけるようにしてどんぶりを店に返すだけ。何も語らない彼ですが、それだけに見る側の想像をかき立てるのです。

▲この時の「かけ一丁！」というおばちゃんの声が、胸にジーン……。これまでの桐生も決して裕福ではなかったですが、偽名まで使い、身をやつした彼のわびしさを強く感じるワンシーンです。

▲遥は、桐生が愛した女性の忘れ形見です。『龍が如く5』の主人公の1人でもあり、大阪では彼女と秋山が、芸能界を巻き込んだ陰謀に挑んでいきます。

▲極道から足を洗った桐生の経営する養護施設で、2人は一緒に暮らしていました。ですが「アイドルになりたい」という遥の真剣な夢を叶えるため、養護施設で暮らす他の子どもたちのため、桐生は施設を去ることに……。上はゲームを進めると見られるムービー。

　店を出て、ゲームのオープニングは終了。そこまで桐生が己の心情をはっきり言葉にする場面はありません。ですが、語らないゆえの情の深さ、思いの凄み、そういったものを感じるシーンは見どころにあふれています。極道組織の東西抗争に関する話も重要ではありますが、桐生の語らない“想い”に注目してオープニングを見ておくと、ゲーム本編がより楽しめると思います。子どもたちのため、何より遥のために己を殺した桐生。彼と遥の関係は最終的にどう変化するのか、そのドラマが本編の大きな見どころになるのではないでしょうか。

▲己を殺した桐生は、誰に対しても心を閉ざして生きています。ですが、それを包み込むタクシー会社の社長・中嶋とのやり取りもドラマを感じる場面。また、桐生の内面が葛藤に満ちているので、最初は渋い展開が続きます。

▲桐生の住むアパートに押しかけて世話を焼くキャバ嬢のまゆみも、桐生の心を揺さぶります。足の崩し具合やネクタイを直す仕草なんかに、2人の距離を感じるわけですが……。

→思わず夢中になるアナザードラマ、爽快なケンカバトルを堪能！（2ページ目へ）

(C)SEGA

データ

関連サイト

• 『龍が如く5 夢、叶えし者』公式サイト