2013年2月13日(水)
アリスがアホでカワイイ女の子になった理由とは? 『アリス・リローデッド』で第19回電撃小説大賞<大賞>を獲得した茜屋まつり先生インタビュー
小説『アリス・リローデッド ハロー、ミスター・マグナム』で第19回電撃小説大賞<大賞>を受賞した、茜屋まつり先生のインタビューを掲載する。
▲蒲焼鰻先生が手掛けた本作の表紙イラスト。 |
『アリス・リローデッド ハロー、ミスター・マグナム』は、意識を持ち、しゃべる魔法の銃“ミスター・マグナム”と、彼の相棒であるアホ娘・アリス、そしてゆかいな仲間たちが未来を切り開くために奮闘する様子を描いたガンアクションだ。
《ライトニング・ワイルド》と呼ばれる最高のガンマン・アリスの愛銃として、ともに活躍していたミスター・マグナム。しかし最悪の魔女・ゾォードが巻き起こした災厄によって、彼は相棒を失い、過去の世界で意識を取り戻す。
しかし、強い運命の絆で結ばれていたのか、ミスター・マグナムは再びアリスの手に収まることに。だが、このアリスは《ライトニング・ワイルド》と呼ばれたあのアリスとは何かが違う――。
「わたしは人殺しの道具だ」
「ヒトゴロシーノ・ドゥーグって名前なの?」
――そう、彼女は最高のガンマンではなく最高のアホ娘なのだった! 愕然とするミスター・マグナムだったが、かつての悲劇をこのアホ娘に体験させないよう、新たな未来を切り開くべく戦う決意を固めて……。
本作を執筆した茜屋先生には、この作品が生まれたきっかけや今後の目標などを聞いてみたので、ぜひチェックしてもらいたい。
■15年前のアイデアが生まれたきっかけに■
▲茜屋まつり先生の著者近影。 |
――この作品を書いたきっかけを教えてもらえますか。
15年くらい前に、プロローグのシーンはできていたんです。たまたま古いフォルダの中をのぞいていろいろネタを探していた時に、そのアイデアを見つけて、とりあえずそれで書いてみようかなと。今の時代に西部劇というのがおもしろいかと思ったんです。
西部劇自体がライトノベルからほとんど消滅していて、こういうところを攻めたら逆にいいかなとも思いました。西部劇の映像作品を毎日繰り返し見て構想をふくらませて、それから執筆に取りかかりました。
――その西部劇の映像作品で、特に印象に残った作品はなんですか?
『テキサス・レンジャーズ』はかなり印象に残っています。騎兵が一人前に育つまでを描いた作品なんですよ。それでヒロインのアリスを銃のド素人にして、ド素人からガンマンになっていく過程を書く形で作ればわかりやすいんじゃないかと。
――映像作品以外だとどういったものを参考にしたんですか。
『レッド・デッド・リデンプション』。あのゲームがなければ、この作品はできていないと思います。例えば建物のディテールなどで、とても参考になりました。スイングドアがきしんで音を立てるのをゲームで確認して、それを映画で再び確認したり、当時の建築学のサイトを見て調べたりして、そういう風なディテールを組み立てていきました。
――確かにタンブルウィードとかは西部劇っぽいなーって感じは。
タンブル・ウィードはかなり有名ですけど、サボテンの種類とかまでいくと誰も知らないんですよ。誰も知らないので聞くところもないし、それを説明できる人がいたら「お、すごいな」と感じてもらえるかと思ってかなり調べましたね。
――西部劇っぽい要素というと、1対1の決闘シーンみたいなものを想像しがちなんですけど、本作にはそういうシーンがありませんね。
抜き打ちの決闘って、簡単に言えば、速く抜いたほうが勝つんですよ。でもどうやら、速いほうが勝たないという理屈もあるようなんです。しかし私がその理屈を聞いた時に、納得ができなかったんですよ。
それと私は、西部劇に戦術を持ち込みたいと思っていたので、本作では決闘のシーンを入れませんでした。
――確かにそうしたことによってキャラクターの個性が出たように思えます。他にも本作には刻紋弾という、不思議な効果を持つ弾丸が登場しますよね。これについては?
先ほども言った戦術に絡んだところが大きいですね。例えば、正面からの銃弾をはじいてしまう敵がいたとして、それを破るためにはどうするか? など、タクティカルな部分を見せたかったんです。
――刻紋弾には、名称的なおもしろさもあると思うんですが、《キャクサ》や《シュンカ・ワカン》などの弾丸の名前は、ネイティブアメリカンの言葉からきているんですか?
ネイティブアメリカンの言葉とラテン言語と英語が混じり合っていますね。これには理由があって、いろんな勢力が刻紋弾を作っているということを表現したかったんです。
――第1巻で登場した以外にも、刻紋弾の種類はあるんですか?
ええ。今続きを書いているのですが、新しい刻紋弾が出てきますよ。
→ヒロイン・アリスが“アホで無能”になった理由とは?(2ページ目へ)
(C)茜屋まつり/AMW
イラスト:蒲焼鰻
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