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2013年2月19日(火)

“燃え”と“萌え”が熱いサイエンス魔法学園異能バトル『塔京ソウルウィザーズ』で第19回電撃小説大賞<銀賞>を獲得した愛染猫太郎先生を直撃

文:電撃オンライン

■文章を書く才能がないと筆を折った大学時代――
電撃文庫作家との出会いで、再び夢を目指す!!■

――大学時代も、小説はずっと書き続けられていたんですか?

 大学の時に一度、電撃小説大賞に応募しました。自分では力作だったんですが……。残念ながら、1次審査で落選しました。「俺は才能ないんだな」と思って、一度筆を折ったんです。

――書くのをやめちゃったんですか?

 はい。1週間ほど寝込んで、悩んで、悩んで、悩み抜いた末に決めました。

――ずっと小説が好きで、文芸部にも入ったのに……ですか?

 当時の全力をぶつけて届かなかったので。就職も決まっており、夢はあきらめて、1人の読者に戻ろうと。でも、電撃文庫のある作家さんの影響を受けて、もう一度小説家を目指したいと思いました。その作家さんの名前は秘密にさせていただきます。

――今回、デビュー作となった『塔京ソウルウィザーズ』は、愛染さんが小学生のころから大好きだった、オカルト、魔術、科学技術が絶妙に融合した小説ですよね。お話を聞いていて、幼いころからのインプットが花咲いたという印象を受けます。

 ありがとうございます。こういう形で努力が報われるというのは、本当にうれしいですね。自分で考えた本作のキャッチフレーズは“新感覚のサイエンスマジカル学園異能バトル”。うれしいことに文庫の推薦文を人気ゲーム『ペルソナ3』『ペルソナ4』のプロデューサーを務めた橋野桂さんに書いていただけたんです。

 橋野さんは『真・女神転生デビルサマナー』シリーズを作られていたクリエイターですので、そういう雰囲気の作品が好きな人は、気に入っていただけると思いますね。スタイリッシュでエッジの効いた世界観……。魔術系のロジックがしっかり存在するけれど、ちょっとハイテクな科学技術が浸透した都市《塔京》を舞台にしているので、あふれる情報量に埋もれたい人は楽しめると思います。

 あとは電撃文庫で忘れてはいけないカワイイ女の子たちをしっかり描き、主人公の魔術師・黒乃一将(くろのかずまさ)が颯爽と活躍するというエンターテイメントに仕上げました。もうオイシイところを全部詰め込んで、お届けしようと。難しいことを考えず、日常生活のちょっとした空白……一服のひと時というか、「世の中、なんかちょっとつまんないな」と思ったら、気晴らしに読んでくだされば幸いですね。

■魔術系のロジックとハイテクを融合させたエンターテインメント系ノベルが誕生!!■

――魂の魔術師《ソウルウィザード》たちが繰り広げる戦闘も魅力的でした。黒乃が詠唱デバイスを実行すると、自分の魂に刻まれたデータから実体化した武器・漆黒の回転式拳銃《ゴーストハウリング》が現れたり。

 設定を考えるのは大好きです。ソウルウィザードは、自分の魂を改造し、死者のソウルを消費して“奇跡”を起こす者のこと。黒乃はペットセメタリーの能力を持ち、動物霊に限り、8体まで同時に使い魔として召喚できます。ウィザードにはそれぞれ固有の能力がありますので、その幅広さや戦闘スタイルも楽しんで読んでいただきたいですね。ラスボスも曲者を用意していますし……。こうご期待です!!

――主人公の黒乃くんはどんな男性なんですか?

 黒乃は一匹狼で、高校生なのにかっこいい男です。異能力バトルというジャンルは、エンターテイメント業界では激戦区だから、キャラクターをとがらせて個性を出そうと思いました。ただ、動物霊を使って戦うという設定は、ペット好きな僕の影響。昔は犬を3匹飼っていましたし、今は猫を飼っています。動物って癒されるし、大好きなんです。

――魔術師は食事に人間のソウルを食べて、魔法という奇跡を起こす……という設定も驚いたのですが(笑)。普通に“魂のからあげ”が食卓にあがっていて。

 おいしそうじゃないですか? 黒乃が「天国産のソウルしか食べない」と宣言しているシーンもあります。あれは昔、水木しげるさんの『ゲゲゲの鬼太郎』を読んだ時に“魂のてんぷら”が登場した影響ですね。子ども心にどんな味がするのか興味津々だったので、そのワクワク感を自分なりにアレンジして、形にしてみたんです。

――物語の序盤で黒乃と同居するメイドの真央と、黒乃の使い魔・ヒルダことブリュンヒルデが非常に魅力的でした。ヒルダが麻央にヤキモチを焼くシーンが本当にかわいらしくて。文中には蒼白い狼犬とあるのですが、女の子らしさもあり、人工知能でもあり……。

 ヒルダは魔犬ですが、クールで賢い。黒乃をマスターとして絶対的に慕っています。一方、真央はドジっ娘なメイドで、一生懸命なところがかわいい。この1人と1匹の関係も気合を入れて書きました。もちろん、サービスシーンもバッチリございます!

『塔京ソウルウィザーズ』
▲口絵5ページ目より。実際にはもっとクリアで大きな椎名真央のイラストが!

――口絵(カラーページ)で素肌を晒している真央が本当にラブリーなんですが!!

 イラストを担当してくださった小幡怜央さんに感謝です!! 魔術と科学が融合したとがった世界観ですが、ヒロインを本当に愛らしく描いていただきました。素敵なイラストが加わり、担当編集さんと一緒に改稿でブラッシュアップして、作品がどんどんおもしろくなっていきました。新しい可能性を秘めて生まれ変わった本作を、1人でも多くの皆様に読んでいただきたいな、と願っています。

――では、デビューが決定して、ご自身で一番うれしかったことはありますか?

 僕は基本的に投稿するという行為でしか他の方に読んでもらうケースがなかったので、想像上の編集者ではなく本物の編集者が加わって、チームで小説に取り組む事ができるようになったことかな? それで作品がどんどんおもしろくなっていく、可能性が広がっていくという感触がすごく気持ちよくて、それが一番うれしいですね。

――とても気になるのですが、どのような打ち合わせをされているのですか?

 この小説をどうすればもっとよくなるか、という真面目な議論から、なんとなく思ったこと、好きな映画とか野球選手とか無関係なことまで、意見をぶつけ合いますね。言葉が火花のように舞い散る。それはすべて“小説をおもしろくする可能性”なんです。だから、僕はそれを全部、飲み込んで帰ります。新人なのに「筆に落としてみないとわからない」などという僕を信じてくれるので、絶対におもしろくしてやる、と全力で改稿に挑みます。ただ言われたことを書くだけじゃなくって、アドバイスの真意を視て、自分の作品で最良のシーンになるように書きます。だから、1回、1回が真剣勝負ですね。

――まさしく真剣勝負という雰囲気ですね。

 でも、打ち合わせ自体は和気あいあいで、超楽しいです。僕は小説を“刀”に見立てて改稿をしています。僕は火力を上げて、自宅でトンテンカンと刀を叩きます。打ち合わせで、編集者が水の眼でしっかりと冷やす。そうすると、刀の軸がしっかりと固まる。

 軸はテーマやおもしろさ。読みづらかった部分は刃こぼれ。ここは修正点ですね。ほめられた部分は反り。もっといい刀にするために鋭さや切れ味を上げていきます。選考委員の皆様方からのご助言も全力で改稿に打ち込みました。特に、読みやすさを改良しています。また、増えたページ数でストーリーの重みとキャラクターの魅力を上げました。

――難しいお話かと思ったら、すごく読みやすくて、すぐに物語世界に没入できました。

 ありがとうございます。まだまだ未熟者ですが、読者の皆様方に楽しんでいただけたなら、僕一人では届かなかった可能性を引き出してくださった、選考委員の皆様方と編集さん、イラストレーターの小幡さんのおかげですね。

――執筆作業をしていて「コノヤロー」とか思うことはないんですか?(笑)

 あはは!!(チラッと隣の担当編集を見てから) それはどうでしょうね?(笑)

担当編集それは絶対あると思うよ!!

 いやいや、僕は本音で話していますし、フラストレーションをためることはないですよ。よりクオリティの高い作品を目指す毎日は、本当に楽しいです!! 

担当編集そうですね、僕も愛染さんとの作品作りは楽しいです。でも、「お前、本音すぎるぞ」って思う時はあるかな(一同笑)。

→愛染先生の“嗅覚”と“尻尾”へのこだわりが
『塔京ソウルウィザーズ』を生んだ!?(3ページ目へ)

(C)愛染猫太郎/AMW
イラスト:小幡怜央(スクウェア・エニックス)

データ

▼『塔京ソウルウィザーズ』
■発行:アスキー・メディアワークス
■発売日:2013年2月10日
■価格:641円(税込)
 
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