2013年3月27日(水)
2月に開催された“PlayStation Meeting 2013”でのPS4発表を受け、『電撃PlayStation』ではVol.538(3月14日発売号)、Vol.539(3月28日発売号)の2号連続で、ゲームメーカーへのアンケートやクリエイターインタビューなど、PS4に関する緊急取材を実施した。
クリエイターたちが思い描くPS4の姿や、期待すること、タイトルの構想など、ゲームの未来に関する貴重な意見を聞くことができたので、電撃オンラインでも2日連続でそれらを紹介していこう。ここでは“Part1-1”の記事に続き、3人のクリエイターへのインタビューを掲載。それぞれが独自の視点で、PS4の未来をイメージしているので、ぜひチェックしてもらいたい。
▲アークシステムワークス・森利道氏。 |
――“PlayStation Meeting 2013”をご覧になって、率直にどういった印象を受けましたか?
すごいマシンが出てきた、と。後は、どれだけ開発費が掛かるんだろうと正直言って思いました(笑)。発表の前からPS4に関するお話しはうかがっていたので、どういうマシンかはある程度知っていたんですが、最初に聞いていたスペックとほぼ変わらない形で発表されましたね。
“DUALSHOCK 4”に関しても“SHAREボタン”が本当に付いていましたし。“SHAREボタン”については、最初に話をうかがった時に「本当に付けるんですか?」と確認したんですよ。『BLAZBLUE』など、FTGでは対戦動画などをアップできますし、非常にいいアイデアだと思っています。
――たしかに“SHAREボタン”はFTGと相性がいいという印象です。
そうですね。ただ、今回の発表で気になっている部分はもちろんあります。PS4はネットワークの常時接続を想定したマシンなので、インフラが整っているということが大前提。ただ、ネットワーク回線に個人単位で対応できている国は、日本とアメリカくらいじゃないですか?
現在は携帯電話などの普及によって、みんながネットワークでつながっているのが当たり前の世界になっていますが、据え置きのゲームハードでここまで要求していいのかな、という思いはあります。対象年齢的にも、若年層向けじゃない。任天堂さんが若い世代、それこそ幼い子どもにまで対応しているマシンを作っているのに比べ、SCEさんやマイクロソフトさんはターゲットとしている年齢層が高いですよね。親が子どもに買い与えるハードではなく、親が買うものといいますか。PS4ではそれを如実に感じました。
――スペック的には、非常にハイスペックなゲームマシンになりそうです。
その点に関しては、メモリが圧倒的に増えたのがうれしいですね。正直、PS3だとメモリ不足は否めないという部分がありました。特に弊社のように2DのFTGタイトルだと、やっていることがアニメなので、メモリ容量が本当に大事になってくる。例えば『BLAZBLUE』だと、今まで1キャラしか出せなかったのが2キャラ出せるようになる、といったことができるんです。それに加えてすごいCPUボードを積んでいますし、本当にいろいろなことができるようになるな、と。ただ……やっぱり開発費がかさみそうだな~とも(笑)。
――“PlayStation Meeting 2013”で登壇してプレゼンやデモプレイを行ったのは、大手メーカーやビッグタイトルが多かったですね。
おそらく、弊社のような規模のメーカーは非常に作りづらいかなと現時点では思います。ただ、その中でも希望というか、いいなと思ったのは、PS Vitaとの親和性が非常によさそうだったことです。PS Vitaは非常におもしろい演出が可能ですが、PS2タイトルを開発するのと同じくらいの労力で作れるので。
――イメージとしては、ビッグタイトルを作るメーカーと、ソーシャルゲームのような比較的軽いゲームを作るメーカーとで、ある程度二極化していくのかもしれないですね。
今は中間層がないと思っています。「これ、開発費いくら掛かってるの?」というレベルのビッグタイトルや、ソーシャルのように手軽に遊べるタイトルはあるけど、その中間のゲームがすごく少なく感じる。そうした中間のゲームを、PS4のクラウドの中で作れればいいですよね。
――いずれにしてもPS4本体が売れることが大切ですね。
そうですね。「どの程度売れるのだろうか」と思います。ライト層のゲームプレイ人口が減っている今の時代、PS2ほどの好スタートを切れるかといえば難しいでしょうし。
――PS4が日本でうまく普及していくための成功のカギは、どこにあるとお考えですか?
サードパーティしかないと思っています。どんなにマシンスペックが高くても、それを欲しいと思ってもらわなければいけないので。その欲しくなる理由は、ソフト以外にないですよね、初代PSの場合も、『ファイナルファンタジーVII』が出ると発表された時に一気に売れたという印象が強くあります。やはりソフトなのだと思います。あとは価格ですかね。
――価格はやはり気になりますね。
例えばですが、リースっていう販売形態もありだと思うんですよね。月々2,000円くらいでレンタルできる。それなら若い人でも遊びやすくなると思うんです。値段が高くなると、どうしても若い人は買いづらくなる。通常販売と月額レンタル、両方のパターンを用意してくれるとおもしろいのではないかなと。
――PS4はPCベースで開発がしやすくなる印象ですが、その点はいかがですか?
今までもそんなに作りづらいとは思っていないので、より作りやすくなるというのはいいですね。PSですと、ネットワークもそこまで難しくはありませんし。後は、ある程度ツールを用意していただければありがたいです。
――PS3からPS4へ移行する場合、どのくらいゲームは進化するものなのでしょうか? やはりグラフィック的な話になってしまいますか?
そう、グラフィックアーキテクトの話になってしまうんですよね。たしかに、水の表現などはすごいと思いましたが、PS3と比べて劇的に進化したかと言われると、個人的にはそこまでではないように感じます。「一般の人が見てそこまでビックリするか?」と言われると、そうでもないかな、と。
――グラフィックの進化に関しては、これまでに比べて進化のスピードが落ちたかな、という印象です。
そうですね。PS3の段階で見せられるものはすでに見せている、という気はしているんです。ゲームの進化という話に戻ると、ユーザーを楽しませるためにPS4でどこまでできるかは、現段階では何とも言えないというのが本音ではあります。ハードの機能や使い方の落とし込みが、まだできていないので。
――そのほか、全体的なスペックの印象はいかがでしょうか。
少なくともPS4に関してはゲーム機と呼んでいいのか、というところにまで来ていると思っています。PS4のスペックを見て素直に思ったのは「これ、パソコンじゃないか」ということでしたから。ゲームに特化したパソコン。今のパソコンって何でもできますよね。ただ、もしこのハードが4~5年経って、現在のPS3くらいまで根づいた時には、ソーシャルネットワークが非常に重要な意味を持ってくると思います。
→バーチャル空間にゲームセンターを!
森氏がPS4で実現したいと考える構想とは?(2ページ目)
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