2013年4月2日(火)
スクウェア・エニックスより2013年に発売予定のPS3/PS Vita用ソフト『ファイナルファンタジーX/X-2 HD リマスター』のインタビューをお届けする。
本作は、2001年にPS2で発売された『ファイナルファンタジーX』と、2003年にPS2で発売された『ファイナルファンタジーX-2』を、HD画質にリマスタリングして2機種で発売するというもの。メインキャラクターモデルがHD画質に対応している他、モンスターやフィールドのテクスチャなども高精細になっているという。
また、ゲーム内容は追加要素のあった両タイトルのインターナショナル版をベースにしているが、音声は日本語ボイスを収録している。なお、PS Vita版については『ファイナルファンタジーX HD リマスター』と『ファイナルファンタジーX-2 HD リマスター』の個別タイトルとして、2本用意される。
お話を伺ったのは、本作のプロデューサーを務める北瀬佳範氏と、アソシエイトプロデューサーを務める今泉英樹氏。『ファイナルファンタジー』シリーズのファンならお気づきかもしれないが、オリジナル版に深くかかわった両氏が本作の制作に携わっている。インタビューでは、鋭意制作中のHDリマスター版についてはもちろん、オリジナル版の思い出なども語っていただいたので、ファンは注目してほしい。なお、このインタビューは『電撃PlayStation Vol.539』(2013年3月28日発売)に掲載された内容に大幅加筆して、全文を掲載している。(※インタビュー中は敬称略)
▲プロデューサーの北瀬佳範氏(右)とアソシエイトプロデューサーの今泉英樹氏。『FFX』『FFX-2』オリジナル版のスタッフが本作の制作指揮を取っている。 |
――今作『ファイナルファンタジーX/X-2 HD リマスター』における、お2人の役割を教えてください。
北瀬:一応、プロデューサーということになっていますが、どちらかと言うとオリジナルの『ファイナルファンタジーX』でプロデューサーをしていたので、今回のHDリマスター化にあたっては、わりと監修に近いかかわり方です。実質的にメインでやっているのは、今泉です。
今泉:自分はアソシエイトプロデューサーを本作で担当しています。『ファイナルファンタジーX』の時はプロジェクトマネージャーをやっていまして、『ファイナルファンタジーX-2』ではプロジェクトマネージャーに加え、アソシエイトプロデューサーとしてビジネス戦略的な部分をどうゲームに組み込むかという部分も担当していました。それから時間が経ちまして、今回『FFX』をHD化しようとなった時に、周りを見たら当時の関係者が結構少なくなっていまして(笑)。とはいえ「やりましょう」と言った発起人の1人でもありますし、当時の状況も把握していて社内スタッフでは詳しい部類に入るので、今回はメインでやらせていただいています。
北瀬:今泉は『FFX』が初めての『FF』だったかな?
今泉:そうですね。フルで担当したのは『FFX』が初めてで、『FFX-2』では倖田來未さんの楽曲タイアップなども含めて動いていたので、非常に思い出深い作品ではあります。
――今回の『ファイナルファンタジーX』シリーズのHDリマスター化の経緯は、どのようなものだったのですか?
今泉:2011年の初めのころ、野村哲也と『FFX』に出演していたある声優さんとの打合せの時に、「そういえば今年は『FFX』の10周年ですよ」といった話になって、何かやりたいですねという話で盛り上がったんです。それで、じゃあHD版をやろうという流れになったのがスタートでした。
――で、2011年9月の東京ゲームショウで発表したと。
今泉:早いですよね(笑)。あのころからちょこちょこと進めてはいたのですが、当時は前段階のHD化の研究をずっとやってましたね。
――PS3版とPS Vita版ではどちらが先だったのですか?
今泉:先とか後とかはなかったと思います。今のTVで当時のPS2をプレイすると、解像度の問題でぼやけて見えるじゃないですか。単純にそこをなんとかしたいというのがベースでした。そこにちょうどソニーさんのほうでPS Vitaの動きがあって、それに絡んだ形ですね。
北瀬:TGSで発表したころはPS Vita発表直後だったので、初期のころからPS Vita対応は考えてました。
――気になるのは両機種での連動なんですが、これはどうなりますか?
北瀬:そこはどうでしょうね。それぞれのハードの特性を生かしたいとは思っていますが、連動要素については検討中です。
――現在の進捗状況はどれくらいですか?
北瀬:もちろん同時には制作はしているんですが、優先度は『FFX』からということもあって、若干『FFX』のほうの進行が早いんです。結構、もうつながって遊べる状態になっています。今はパフォーマンスを上げる作業だとか、グラフィックの修復などをやっているところです。ゲームとしては遊べる状態にあるので、数字で言うと『FFX』が70%くらいで、『FFX-2』が50%くらいです。
――今回『ファイナルファンタジーX』と『ファイナルファンタジーX-2』をカップリングした理由はなんでしょう?
北瀬:やはり10年越しに帰ってくるので、小出しにするのではなく、『FFX』シリーズとしてすべて遊べるパッケージにしたかったんです。ただ、PS3版は一緒なんですが、PS Vita版は容量の都合で別パッケージになります。もちろん発売時期は同時です。
――ダウンロード版はどうなるのでしょう?
北瀬:それも合わせて考えています。ただ、時期に関しては検討中です。
――2機種それぞれの制作過程は同じなのですか?
今泉:基本はPS3で制作して、それをPS Vita用に調整する作り方ですね。HD化にあたっては、解像度に合わせてメニューなどのサイズも変えているので、PS VitaならPS Vita用にちゃんと合わせて調整するということもしています。場合によっては文字の大きさの調整なども行いますが、基本的には同じ内容です。
北瀬:タイトルについて言えば、『FFX』が進捗すれば、おのずと『FFX-2』の進捗も上がっていきます。そういう作り方ですね。
――HDリマスター化の作業とは、どのようなものでしょう?
今泉:基本的にはテクスチャの調整でグレードを上げる手法をベースにしてます。メインキャラクターはそれにともなって、すべてモデルを調整しています。ライティングなどの未調整部分もまだまだたくさんあるのですが、大きく変えるとキャラクターの動きに影響が出るので、そのバランスを見極めつつ調整している感じです。
――たとえばオリジナル版では省略していたところを描き足したりといった作業もしているのでしょうか。
今泉:それもありますが、HDのTVになったことで、よりクローズアップできるようになったんです。たとえばティーダのネックレスや服の模様なども、HDだとさらにキレイに表現できる。そういう部分を細かく見直しています。ですので、当時よりは格段に描き込んでいます。ユウナの着物の柄とかも、ぜひ見てもらいたいですね。あとは変な例ですが、リュック兄の筋肉もボディービルダーの写真を参考にして、そこからさらに描き込んだりもしていて、細かいこだわりもしっかりと入れています。
北瀬:もちろん、さすがに全部でそれをやるとかなりの時間がかかるので、そこはある程度の強弱をつけて、あまり目立たない部分は最低限のクオリティアップにとどめるといった感じです。
今泉:オリジナル版もそうなんですが、バトルとイベントではポリゴンモデルが別で、開発ではローポリとハイポリと呼んでいるのですが、バトルはキャラクターがたくさん出るので軽いモデルで、イベントだとアップでキャラクターの表現力を向上させているので比較的重いハイポリモデルでと使い分けています。
――そのどちらもグレードアップしているのですか?
北瀬:そうですね。イベントで顔がアップになるようなハイポリモデルは、HD化にあたって特に手を入れています。もちろんローポリというか、バトルモデルも調整しているのですが、イベントのモデルとは差があります。でも、それは元からある差なんです。
今泉:とはいえ、ローポリでカメラを寄せても十分キレイに見えます。その辺はまだまだ細かく描き足していますので、ぜひ見ていただきたいなと思います。ハイポリのほうは、CG制作のビジュアルワークスから当時のプリレンダムービーで使っていたCGモデルを借りてきて、それをもとに描き直していますので、オリジナルとは全然違いますよ。
――となると、プリレンダムービーに使われているものに近くなるのです?
今泉:近いですよ。ただ、実際にはポリゴン数も全然違うのでまったく同じにはなりませが、テイスト感はかなり近づけています。ですので、全キャラクターが当時よりはかなりクオリティの底上げがされています。
▲PS2版 | ▲HDリマスター版 |
――確かに並べるとかなり違いますね。
今泉:当時は当時でPS2のスペックとしては極限のクオリティだったと思うんです。今、HD版を制作していてありがたいのは、当時の作り込まれたデータクオリティのお陰で、今回の作業がとてもやりやすかったというところですね。
北瀬:キャラクターモデルについては野村哲也が完全監修しています。メインキャラだけでなくモンスターとか、細かいところまで完全監修しています。それから全体的な背景の監修は、オリジナル版『FFX』のアートディレクターである直良有祐監修のもと、単純なHD化ではなく、さらに1つか2つ、グレードを上げるようなことをしていますね。
――背景については、どのような作業を行っているのでしょうか?
今泉:当時の背景は、3Dの背景とプリレンダの一枚絵の背景が混在しいてるハイブリッドな作りだったんです。例えば、部屋の中は一枚絵だったりなど。基本的には3Dの背景は、これも元々の出来がかなりよかったので、直良の監修のもと『FFX』のテイストにより深みを増す手法を取り入れています。
北瀬:これは『ファイナルファンタジー零式』で直良がやっていた手法で、画面にエフェクトをかけて色味を加えるというものです。『零式』でかなり効果があったので、今回もどうかと提案があって採用しました。
今泉:プリレンダのほうは、16:9に合わせようとするとどうしても横がたりない。でも上下を切ると今度はマップ移動のポイントがずれたりするので、そのバランスをどうするかを考えながら調整しています。基本的には、両端がないものは描き足しているのですが、すべて描き足すのではなく、オリジナル版にはないカメラワークで調整している箇所もありますね。
――プリレンダムービーについてはどうですか?
今泉:そちらもアップコンバートをかけまして、オリジナル版のムービーを担当していた生守一行(ヴィジュアルワークス所属)の監修で、16:9に合わせてスクリーンに出す場面をカットごとに細かく調整しています。
北瀬:さすがにレンダリングし直しはできないので、16:9でのサイズとカットの調整をする感じです。ただ、当時のムービーを担当していた生守からしてみると、クオリティよりは当時の技術的未熟さが恥ずかしいようで、「直したい」と言っていましたね(笑)。
今泉:それを言ったらゲーム本編も、今見ると若気の至りのシーンが満載ですよ(笑)。
→HDリマスター版には『ラストミッション』も収録!?(2ページ目)
(C)2001-2004,2013 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
CHARACTER DESIGN:TETSUYA NOMURA
データ