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2013年4月2日(火)

『ファイナルファンタジーX/X-2 HD リマスター』インタビュー! 世界一ピュアなキスシーンと世界一不器用な親子喧嘩が再び――

文:RustyGo!!

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■インターナショナル版の“おまけ”部分にも期待!?

――『ファイナルファンタジーX』も『ファイナルファンタジーX-2』もインターナショナル版がベースということですが、『ラストミッション』も収録されるのですか?

今泉:そこは検討中です。『FFX-2』のインターナショナル版本編と、『ラストミッション』は別物ですので。

北瀬:インターナショナル版と言っても、それをベースに日本語のボイスを収録した、厳密に言えば今回オリジナルのバージョンなんです。なので日本のユーザーさんにとっては、『FFX』という作品の完全体に近いパッケージとなっています。

――では、インターナショナル版からさらに追加される要素は?

今泉:ぜひやりたいのですが、何ができるかは検討中です。まずはきっちり本編を完成させてからですね。あと、ユーザーさんに遊んでもらった『FFX』シリーズというのは、圧倒的にオリジナル版のほうだと思うんです。なので多くの人は、インターナショナル版で追加された要素を新しい要素として楽しめるんじゃないかと思いますね。

 今でこそワールドワイドで同時発売となるのが当たり前ですけど、当時はローカライズに時間がかかっていたので、その期間がある分、海外版は翻訳だけでなく、何かを追加しちゃえというノリでできたんですよね。日本では、インターナショナル版の販売数はオリジナル版と比較すると1割くらいだったんです。逆にいうと、9割の方はインターナショナル版では遊んでいないことになるので、当時遊んだ人でも大半の方は新鮮な気持ちで遊べるのかなと。

北瀬:インターナショナル版の追加要素としては、『FFX』ではヘレティック召喚獣や、隠しボスのデア・リヒター、それにスフィア盤も2種類になっています。あとは『FFX-2』のクリーチャークリエイトとか、インターナショナル版の追加要素はたくさんあります。

■『ファイナルファンタジー』シリーズ初のボイス収録作品を振り返る

――グラフィックに関しては見た目ですぐわかるのですが、音声についてはどうなりますか?

『ファイナルファンタジーX/X-2 HD リマスター』

北瀬:インターナショナル版は英語ボイスで日本語字幕でしたが、本作は日本語ボイスになっています。これも結構苦労しました。日本語版は日本語ボイスで字幕が出ますよね。で、海外版を作る時には吹き替えをするんですけど、翻訳の過程で日本語と同じニュアンスではなくなっている部分があるんです。文字数や尺の制限とかもありますし。それをまたインターナショナル版で逆輸入してきた形になるので、日本語版の字幕とは結構違うんですよ。

今泉:代表的なのでは“シンの毒気”という言葉があるんですけど、それが海外版では英語で“ポイズン”と訳されています。それが日本のインターナショナル版での再訳だと、単に“毒”になってたりとか。そういうのがかなり多いんです。ですので今回は、元の字幕のセリフに戻しつつ、テキストやシステム上の整合性を取るという気の遠くなるような作業をしています。

――そもそも『ファイナルファンタジー』シリーズにボイスが入ったのは、『FFX』が初めてでしたね。

北瀬:そうですね。ボイスの収録も『FFX』の時は僕らも初めてで全然やり方もわからなかったので、例えば3人の掛け合いだったら、3人の声優さんを呼んでその場で掛け合ってもらって収録していたんです。今思えば理想の形かもしれないですが(笑)。さらにメインのティーダ役とユウナ役のお二方は、声優としては初めてだったので、スタッフとキャストの全員が手探りでやっていました。その手作り感は楽しかったですね。

『ファイナルファンタジーX/X-2 HD リマスター』

――現在のゲームのボイス収録は、1人ずつの収録が当たり前ですからね。かなり時間がかかったのではないでしょうか?

今泉:1つのシーンを収録し終えたら次の収録がすぐ来るというサイクルで、50回ほどはやっていました。壮絶なる日々でしたね、あのころは。あと、ユウナとシーモアの結婚式シーンとか、キャラクターが大勢いるカットでは、声優さんのスケジュールが合わなかったり。そんなつらい調整を延々と1年以上もやっていました。

北瀬:声に関しては、本当はCDメディアになった段階でもできたんですけど、『FF』の規模だとなかなかそこまでできなかったんです。ただ、『FFVIII』のあたりから、このグラフィックでしゃべらないのはおかしいなと思い始めていたので、『FFX』でやっと実現できたという感じですね。

――声のお話が出たところで、音楽についてはどう調整されているのでしょう?

今泉:当時、内蔵音源主流で鳴らしていたものを、今回は生音で鳴らしています。これはTVのスピーカーで聴いても全然違います。

北瀬:音楽とはちょっと違いますが、『FFX-2』での楽曲タイアップで、主題歌だけでなくもう一歩進んだコラボはできないかということで、倖田來未さんにボイスとダンスのキャプチャーもやってもらったというのは、結構な挑戦だったと思います。

今泉:最初は歌姫が出てくるという設定だったので、本人を出したいと言ったんですよ。せっかくだから本人を出して、キャプチャーもしたらいいんじゃないですかって。すると当時メインシナリオを担当していた野島一成さんに「この人は何を言っているの?」って言われた記憶があります(笑)。

『ファイナルファンタジーX/X-2 HD リマスター』

■HDリマスター化によるゲームシステムやバトルへの影響は?

――ゲームのバランスは、改めて調整しているんですか?

今泉:かなり悩んだのですが、基本は同じです。オリジナル版とインターナショナル版でもバランスは違うんですよ。ほとんどの方がインターナショナル版を遊ばれていないことを考えると、そのままでも十分いけるだろうと判断しました。

――再構築する中で、当時を振り返って感じた反省点などはありますか?

北瀬:カメラを回せないところですかね(笑)。当時はカメラを固定にすると、背景などで作らなくていい部分ができるというメリットがあったので、それなら固定にしようという判断でした。回せるようにすると、それだけ制作に時間と手間がかかるということで。

今泉:最初は実験的にカメラを回せていたんですよ。でも当時はみんなも操作感に慣れていなかったのでしょうか、「酔う」という意見も多くて、それで固定にするという話になったのもあります。

――バトルに関してはどうでしょう?

今泉:今回『HD リマスター』を作っていて感じたのは、当たり前ですが16:9って広いなということですね(笑)。単に16:9になるだけで、画面の広がりというか奥行き感がすごくあります。基本のカメラの距離感は同じなのですが、それでも十分に広がりというか、ワイド感が出るなと。あと、UIに関しては、16:9サイズのギリギリまで端に寄せました。そうしたほうが、バトルに没頭できるんです。今見ると、4:3は結構こじんまりしているので、そこは格段に違いますね。

――イチから作るより、1つ1つ調整するほうが大変な部分もありそうですね。

今泉:そうですね。メニュー画面も16:9になると、思いのほか空き空間ができるので、そこは当時のテイストを変えずにうまく配置する形で再デザインしています。とはいえやり過ぎると、元の作品のよさを壊してしまうことになりかねないので、そのバランス取りは非常に難しいですね。

――では最後に、期待しているユーザーの皆さんにメッセージをお願いします。

北瀬:HDリマスターということでオリジナルと比べてどう変わったかが焦点だとは思いますけど、もちろんオリジナルをまったくやってない人、『FFX』そのものを知らない人でも楽しめると思います。

 親子の物語なので、12年前には子どもだったユーザーさんが、もしかしたら今は親になっているかもしれない。すると今度は、また違った視点で作品を見ることができます。そういう方も、ぜひプレイしてほしいです。そうして世代を超えてプレイしてもらえればと思います。

今泉:今回あらためてオリジナル版をプレイしてみたんですが、やはり十数年たっても遜色なく楽しめる素晴らしい作品だったなと実感しています。その分、HDリマスター版として触ることに対するプレッシャーがすごく強くて、それは今も続いています。当時、遊ばれた方々のイメージを崩さず、それがよりよいイメージになるように調整をかけているので、『FFX』シリーズのすごさをあらため体感していただきたいと思います。

『ファイナルファンタジーX/X-2 HD リマスター』

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CHARACTER DESIGN:TETSUYA NOMURA

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