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2013年5月16日(木)

『ブレイブリーデフォルト』の今後の展開は? 海外版や“100の改善案”の反響についてインタビュー

文:そみん

■続編が出るとしたらどう変わる? “100の改善案”の反響などについてトーク

――ゲーム発売後に特設サイトで“100の改善案アンケート”を行っていましたが、その結果はいかがでしたか?

浅野:あの時の設問は、基本的にこちら側として「こう調整しよう」、「こう直すほうがいいだろう」と思った形で聞きました。なので逆に、「わかっているんだったら、最初から直しておいてよ」みたいな声もたくさんいただきました(笑)。

――予想外の反応はありましたか?

浅野:何かありましたっけ? ……あ、オートセーブへの反応は予想外でした。

中原:こちらの聞き方が悪かった部分もあるかと思うんですけど、オートセーブを嫌だと答える人は、意外と多かったです。

浅野:今、スマホでゲームとか遊んでて、わざわざセーブコマンドを選んでセーブなんかしないじゃないですか。その感覚が当たり前だと思うんですよ。家庭用ゲームの世界って、その便利さにちょっと追いついていないのかなあと感じてます。

――プレイに夢中になると、セーブを忘れて20時間ぐらいぶっ続けで遊んじゃうことはありますから。

浅野:ちょっと心配です(笑)。

中原:セーブを忘れて遊んでいる時に、バッテリーが切れちゃったり、敵に負けてゲームオーバーになったり、けっこうとプレイデータが巻き戻っちゃったという声は多かったので、オートセーブは便利だと思うんですけど。

浅野:1時間とか2時間とか巻き戻ると、すごくつらいですし、そのゲームを遊ぶのをやめるきっかけになっちゃいますよね。

――これは個人的な意見なんですけど、必殺技は今のままが好きです。『ブレイブリーデフォルト』の必殺技は、使うと専用の音楽が流れて、その音楽が流れている間はバフが続く仕様なのでリアルタイムバトルのように忙しいですし、必殺技の効果中はバトル演出の早送りができないのでちょっと不便な部分もあります。ただ、だからこそ生まれる奇跡的な瞬間もあると思うんですよ。

中原:必殺技のバフはどんどんと重複するので、音楽が途切れないように必殺技を使い続けると、かなり強くなりますから。

『ブレイブリーデフォルト』 『ブレイブリーデフォルト』 『ブレイブリーデフォルト』
▲『ブレイブリーデフォルト』の必殺技は、名前や効果などをカスタマイズできるのもポイント。

――その音楽を途切れさせないというリアルタイム性が熱いと思うんですよ。次の必殺技がつながると思ったら、敵がしゃべり始めたり、“行きがけの駄賃”(通常攻撃後に確率で追加攻撃を行うアビリティ)が発生しまくったりして、計算が狂った時の感覚がすごく思い出に残っているので、あの感覚があまり変わらないとうれしいです。

浅野:あの必殺技をつなげていく感覚は、ちょっと新しかったと思うんですよね。

中原:実は、必殺技をつなげていくという要素は、妥協の産物だったんですよ。そもそもの浅野さんからの要望は、“必殺技専用のBGMが流れている間、バフ効果をかけたい”というものでした。初期はそれを厳密に再現するために、必殺技Aの曲の途中で必殺技Bを使った場合、本来的に必殺技Aの曲が流れているはずの時間までは必殺技AとBの効果を重複させるけど、その後は必殺技Bだけの効果にするつもりでした。

 要は、裏で必殺技1つ1つの処理を個別に走らせるつもりだったんですが、開発期間的 に厳しかったので「こっちのほうがコンボっぽくて、よくないすか?」とよいように聞こえるように説明して今の形で勘弁してもらいました。

宣伝部スタッフ:実は必殺技のバフが重複するという要素は、プロモーション展開できちんと紹介できなかったんですよ。というのも、必殺技の要素を紹介した段階ではまだ、必殺技をつなげていくという要素が存在していなくて、いつの間にか仕様が追加されていたんです。だから、インタビューで浅野たちが“必殺技をつなげる要素がある”といった発言をするのを聞いて、驚いた覚えがあります。

中原:そのくらいギリギリのタイミングまで調整をしていました(笑)。

浅野:本当にもう、間に合う間に合わないのタイミングで入れたんですよ。普通だったら、“効果が続くのは3ターン”とか、ターン単位で考えるところなんですけど、どうしても音楽とリンクさせたくて。

中原:そもそもがコマンド選択型のターン制のバトルシステムなので、ゆっくり考えて遊びたいじゃないですか。そこにリアルタイムの感覚を入れて、曲の長さに縛られるというのはどうかと思って、曲が流れ終わっても、そのターンの間はバフが続く形なんかも検討しました。

 一番最初に考えたのはもっとシンプルで、一定のターンが経過するまでは必殺技の曲をループさせる形でした。ターンの最後に曲がフェードアウトして、同時にバフも切れるという流れだったんですけど、浅野さんから「ダメです」と。曲の最後って、盛り上がるじゃないですか。テテッテテテ、テテテテーン! みたいな。その盛り上がりが欲しいんですと言われました。

浅野:アニメとかでも、いいところで歌がかかったりするじゃないですか。そうなると熱いじゃないですか。『マクロス』とかだったら、泣いちゃうぐらいカッコいいじゃないですか。そういう感覚です。

――自分の好きな感覚で演奏できるような感覚もあります。

中原:僕とかは理詰めで考えちゃうんで、ターン制なのにリアルタイムの要素を入れるのはちょっと……と思っちゃうんですけど、それを「いいんです!」と言える浅野さんがいたことで、とてもいいものができたなあと思います。自分が想像できなかった、おもしろい形になりました。60時間とか70時間とか遊ぶゲームの中で、いいアクセントになったと思います。

浅野:たしかに“ブレイブ”と“デフォルト”って、理詰めでゆっくりと考えて遊ぶゲームシステムのはずなのに、必殺技を使うと変わるんですよ。突然、せわしなくなる(笑)。

中原:必殺技は強力ですけど、別に使わなくてもなんとかなるバランスになっていると思います。極端な話、“点穴”(防御力を無視する攻撃用アビリティ)を使いまくるだけでも、クリアできると思いますし。いろいろな遊び方ができると思います。

浅野:中には、必殺技を1回も使わずにクリアした方もいらっしゃると思います。そういうところは、ゲームの幅広さや懐の広さになったかなと思います。

――個人的に、セーブデータは複数欲しかったです。自分はファミコン時代からゲームを遊んでいるので、セーブデータを消して遊び直すことへの抵抗は比較的弱いんですけど、やり込んだデータを消したくないけど遊び直したいという人は多かったと思います。

『ブレイブリーデフォルト』
▲ニコ生で行ったアンケートの際も、やり込みデータを持ちこしたままニューゲームを遊びたいという声が多かった。

浅野:そうですよね。消せないですよね。すれちがい通信の管理などの都合上、セーブデータを1つにする形になったんですけど、セーブデータの数や周回プレイのあり方などを含めて、今後の課題だと思っています。

 話がちょっと変わりますが、自分はゲームの理想の形というか、究極の形って、ずっと永久に遊び続けられるものだと思うんですよ。究極的には、お話や世界観すら味付けに過ぎなくって、ずっと楽しく遊び続けられるものなんじゃないかなと思います。なんと言いますか、ゴールやクリアを目指すとかじゃないような気がするんですよ、究極のゲームの形って。

――なるほど。とはいえ『ブレイブリーデフォルト』に関して言うと、ゲーム性の部分とストーリーやキャラクター性の部分、その両方がユーザーに支持されたと思いますが。

浅野:ええとですね、今PSPで『パワプロ(実況パワフルプロ野球)』を遊んでいるんですけど、ペナントレースがもう3年目に突入していて(笑)。ある意味で不毛なんですけど、ずーっとやっちゃうし、ずーっと楽しいし、ずーっと続けられるんですよ。こういうところって、漫画ともアニメともドラマとも違う、ゲーム媒体ならではのおもしろさなんじゃないかと思うわけです。

 だから、『パズドラ(パズル&ドラゴンズ)』がすごく喜ばれていることとかもわかるんですよ。

――となると、やはり“強くてニューゲーム”的な要素は欲しい気がします。ストーリーも何度も楽しみたいですし。

浅野:そうですね。もちろん、ストーリーもすごく大事な要素だと思っています。

中原:僕は昔、マーケティングの仕事をしていたんですけど、その際に“RPGにどんな要素が求められているのか”、“どんな要素を重視してRPGを購入するのか”をリサーチしたことがあります。その時は、圧倒的な一番が“ストーリー”でした。その次に“世界観”が来て、そこからちょっと離されて“バトルシステム”でした。

 だから、RPGを遊ぶ人は基本的に、ストーリーや世界観を見て、遊ぶかどうかを考えるのかなと思っています。今の僕のように作る側としては、どうしてもシステム的におもしろいものを作って、それをウリにしたいと思っちゃうんですけど、遊ぶ側であるユーザーさんは、意外とストーリーや世界観を重視しているので、そこも大事にしたいなと思っています。

 今回の『ブレイブリーデフォルト』の場合、Revoさんの音楽や吉田明彦さんの絵を入口にして遊び始める方も多いと思っていたので、そういった方が遊んで「難しすぎるから、もう遊ばない!」となってしまわないように、システムをわかりやすくするように気を付けた部分もあります。そういった調整は大変でした。

浅野:ゲームシステムについては、我々の予想以上に皆さんに楽しんでいただけた部分が多くて、結果的には想定外のことも多かったです。たとえば、まだ序盤なのにレベル99でカンストしちゃったとか(笑)。

中原:体験版の時から、もうすごかったですね。中には30時間以上楽しんでくださった方もいて、そんなに長く楽しんでもらえるとは思っていませんでした。

――やり込み派が遊ぶと、ついついレベルやジョブレベルを上げたくなっちゃうんですよ。おそらく、普通に遊ぶとレベル60~70くらいで真終章をクリアするくらいのバランスだと思うんですけど、かなり早い段階でレベルを99まで上げる人は多かったと思います。

中原:そうですね。初めて最終ボスと戦う時にレベル99になっている人があんなに多いとは、想定していなかったです。

高橋:だから、「最終ボスが弱い」という声もけっこう多いんですよ。

中原:想定レベルを70くらいで考えてましたから。

――他のゲームでは最高レベルまで上げないような人でも、『ブレイブリーデフォルト』ではクリア前にレベル99まで上げちゃうケースが多かった気がします。ジョブレベルを上げているうちに、自然とレベルが上がってしまうことも要因だと思いますけど。

浅野:基本的なバランスチェックの方針として、“レベル上げをしなくてもクリアできるバランス”を考えていたんですよ。ザコ敵から逃げずに戦っていけば、ほどよくボス敵を倒せるというバランスで調整しました。普通に戦いながら遊べば、いい感じに進めていけるという。なので、意識してレベル上げをしながら遊んだ方は、ちょっと簡単に感じてしまったと思います。

――その話を聞いて、すごく納得しました。編集部には一度もレベル上げをせずにプレイして、真終章までクリアした人がいるんですよ。だから、まさにそうなんだと思います。

中原:4章までは、すべてのジョブを集めるという前提で調整をしていったんですよ。ただ、5章以降については、すべてのサブシナリオをクリアしながら遊ぶという形を想定していなかったので、そこでちょっと誤差が出た部分もあります。全部ではなく、ほどよくサブシナリオをクリアしながら進むと、最終ボスがちょうどいい難易度になると考えていたので。そこはちょっと、読みが甘かったです。

浅野:僕の場合、サブシナリオをはしょって遊んでも、クリアまで70時間かかりましたから。全部つぶしていったら、100時間コースですよ。

『ブレイブリーデフォルト』 『ブレイブリーデフォルト』 『ブレイブリーデフォルト』
▲豊富なサブシナリオやジョブの育成、アビリティのカスタマイズなど、さまざまなやり込み要素が用意された本作。普通に遊ぶと、70時間近くはかかるかも?

→3DS版の200年後を描くブラウザゲーム
『ブレイブリーデフォルト プレイングブレージュ』について(3ページ目へ)

(C)2012 SQUARE ENIX CO., LTD.All Rights Reserved.
MAIN CHARACTER DESIGN:Akihiko Yoshida.

データ

▼『ブレイブリーデフォルト』ダウンロード版
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:3DS
■ジャンル:RPG
■発売日:2012年11月1日
■価格:5,400円(税込)
▼BD『ルクセンダルク紀行』
■販売元:ポニーキャニオン
■品番:PCXP-50136
■発売日:2013年3月20日
■定価:7,350(税込)
 
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▼DVD『ルクセンダルク紀行』
■販売元:ポニーキャニオン
■品番:PCBP-52110
■発売日:2013年3月20日
■定価:7,350(税込)
 
■DVD『ルクセンダルク紀行』の購入はこちら
Amazon.co.jp

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