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2013年6月19日(水)

【ほぼ毎日特集】ゲームミュージックの作曲家にインタビュー。「教えて!k.h.d.n.先生!」(第3回)

文:ミゲル

■1曲を一気に作り上げろ! 憧れから未来を作る、作曲家を目指す若者たちへ

――初心者だった時に使っていた作曲機材はありますか? 加えて、作曲初心者や、これから曲を作ってみたい方にオススメの機材を教えてください!

“「教えて!k.h.d.n.先生!」”

:僕は高校1年生の時、オールインワンシンセサイザーを1台、親に買ってもらいました。ヤマハの『V-50』を持ってたんだけど、それ1台で全部打ち込みを行っていて、6年間、ボタンがペコペコになるまで使い込みましたね。16音しか鳴らないんだけれども、今思うと16音で曲が作れない人はダメだと思う。

永田:僕も大学生の時に、ヤマハのオールインワンシンセサイザー『EOS B500』を買って使い倒しました。後半、壊れて変な音が出るようになっちゃったんだけど、そのバグった音も音色として保存して使っていましたね。

 なんでもそうですが、そこまで使い込まないと次のステップへは行けないと思うんです。お手本としてサンプル曲が入っているけれども、それを超える、自分にしか出せない音を作れるまで使い倒すべきかな? って。他の人がいいと言ったツールよりも、なんでもいいから自分で選んだものを使って、自分にしか作れないものを作れるようになってほしいと思います。

:鍵盤に触れることは大切だと思う。できれば、ハードウェアシンセサイザーを買ってほしいな。PCがあれば曲が作れると思われがちだけれど、本格的にPC作曲環境(ソフトやオーディオインターフェイスやミキサーなど)をそろえようとすると、車が買えるくらいお金が掛っちゃう。

 Native Instruments社のソフトウェアサンプラー『Battery』は、2人とも使っていますね。「こんなもんかな?」と入力した音をいざ再生してみると、想像と違う音が出ておもしろいんです。思った以上のことが起きるの。

“「教えて!k.h.d.n.先生!」”

永田:機械を使って作る音楽は偶発の要素が大きいんです。自分が想像した音じゃなくて、それを裏切る変な音が出てくると、気分が盛り上がっておもしろい楽曲が作れますよ。

 シンセサイザーの中には“プリセット”と呼ばれる標準の音が入っているんだけれど、それを使って楽曲を作ってほしくないかな。偶発や、普通じゃ使わないような音を使って楽曲を作ったほうが、絶対におもしろいものが作れると思う。まず、自分がおもしろいと感じる音を大切にしてほしいです。機材を使って、自分の出したい音を出す工夫をしてほしい!

:マイク1本と音楽制作機材だけでリアルタイムに曲を作っちゃうティム・エクザイルってパフォーマーがいますよね。あれはすごい。

永田:マシュー・ハーバートも、マクドナルドのビックマックの箱を壊して出した音をサンプリングして曲を作っちゃったり。おもしろいって思うことがやっぱり大事。上がったテンションで作った曲はやっぱりいいものができるよ。自分はどうしたらテンションが上がるのかを考えるのがいいと思います。

※マシュー・ハーバートとは、イギリスの電子音楽作曲家およびDJ。洗濯機やトースター、歯ブラシといった日常の中にある音をサンプリングし、楽曲を制作している。

:テンションが上がって作った曲って、次の日に聴いてもやっぱりいいものに仕上がってるんですよね。自信を持って作品を出すって、大事だよ。

――テンションを上げて一気に作り上げることが大切?

永田:作りかけで曲を放置しないで、完成させることが大事だと思います。「新しい曲の断片はできてる」ってものは後にも先にも完成しないと思います。1回放置してしまった曲って、結局そのまま手を付けないことが多いから。

:6時間くらいでカンパケ1曲作るのが基準。いろいろと忙しくて、1曲作るのに1週間かかってしまったとしても、トータル6時間が目安かな。断片的に1日30分ずつに分けて1曲作り上げられる人のほうが、才能はあると思いますけどね。飽きずに1週間、同じ曲に向き合えるんだから。

――楽曲を作るにあたって、しておくべき経験はありますか?

永田:ありきたりだけれども、曲を作るなら「人一倍他人の音楽を聴け!」ってことですかね……。音楽って、オリジナルを作っているつもりではいるけれど、結局誰かの楽曲から受けた影響や印象の寄せ集めなので。だから、どれだけ自分の中に情報量を蓄えるかが大事。

 情報は音楽だけじゃなくて、何かを見たり、人と会ったり、人生で経験するすべてを吸収することが大事。自分が興味がないものでも、経験したほうがいいと思います。それを音楽としてアウトプットするのが、作曲家だと思うので……。

:オススメは結婚だね!

――ハードル高すぎます!

(一同、笑い)

:どこにも発表はしないけど、コツコツと作詞やテキストメモを残していて……。それを読み直して、イメージを作る練習をしています。なぜかと言うと、作曲するにあたって、まず始めにリクエスト表を受け取るんだけど、そこに書かれてある文字から楽曲を想像(創造)しなきゃいけない。文字からイメージを感じ取ることが非常に大切で、リクエスト表を書いている人の気持ちにならなければいけない。相手の気持ちや、相手が置かれているシチュエーションを理解することが、表現力を高めることにつながると思います。

 相手のことを理解しようとする経験の、手っ取り速い方法が、“恋愛”なんだと思う。フラれたら、相手が自分に対して何を思っていたのかを考えるから、その感情が表現のための糧になると思うんです。人と付き合っている時のハッピー感を知っていれば「ハッピーな曲を書いてください」と頼まれた時も、気持ちを高めやすいですしね。恋愛の最中は、今の気持ちを音にしたらどうなるんだろうって考えたりしますよ。

■プロの仕事とはこうだ! k.h.d.n.としてやっていてよかった音楽の仕事!

――プロとしての活動の中で、挫折したことやつらかった経験はありますか?

永田:ないです!

永田:あったら今ここにいないです。

:辞めてます!

――お、おう。

永田:挫折を挫折と認識していないのかも。

:作曲中にいろいろと言われて、イライラしたりすることはあるけれども、それは挫折とは思わないなぁ。自分の名前を出して楽曲を発表しているんだから、何かを言われるのは当たり前のことだと思いますし。

永田:テンションガタ落ちすることはあるけど(笑)。

――逆に、活動していてうれしかったことはありますか?

“「教えて!k.h.d.n.先生!」”

:イベントでカワイイ女の子にワーキャー言われる! プロの作曲家やDJになると、モテる、これだけは言いたいね!!

永田:そんなんでいいのか(笑)。

:だって、この業界で頑張ってきて、いろんな人と知り合えるのはやっぱりうれしいよ。女の子との出会いだけじゃないよ(笑)。まさか、細江慎治さんたちと一緒に仕事ができるとは思わなかったし。

永田:そうだね。『カラス』のサウンドトラックを出した時に、スーパースィープの細江慎治さんや佐宗綾子さんたちに楽曲のリミックスをしてもらったんですよ。あれはうれしかった! 自分がいちリスナーとして聴いてきた人たちに、自分の楽曲をリミックスしてもらえるって信じられない。

:あれは本当にうれしかったね……。一番かもしれない。

永田:作った楽曲をみんなに聴いてもらえることはもちろん、k.h.d.n.のDJプレイを見て、DJをやってみたいって思ってもらえるのはうれしいです。僕たちも昔、いろんな人たちのライブを見て、影響を受けてこの世界に入ったんだから。

――同じ作曲家の中で、尊敬している人は?

“「教えて!k.h.d.n.先生!」”

永田:古代祐三さん! この間、サインをいただいたんだよ!

:永田は古代さんが大好きだよね。イベントとかで実際に3回くらいお会いしたことがあるけれども、永田はいつ会っても緊張しているよね。

永田:そりゃあ緊張するよ! 古代さんの『ベア・ナックルIII』のサウンドトラックは、CDの盤面が汚れて再生できなくなるくらい聴いたよ。

:僕は、大久保博さんが恐れ多くて話しかけられなかったなぁ。後期から現在までの『リッジレーサー』シリーズのサウンドトラックは、毎作品ごとに楽しみにしています。

永田:ナムコサウンドは、僕らの世代では避けて通れない道だよね。

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データ

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■レーベル:Sakura Flamingo Laboratory
■販売元:クロン
■品番:SFBR-002
■発売日:2013年7月26日
■希望小売価格:2,100円(税込)
 
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