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2013年6月14日(金)

ミスター鉄拳こと原田勝弘さんが語る『鉄拳レボリューション』――ナンバリングの『鉄拳』最新作への思いも【E3 2013】

文:電撃オンライン

■ユーザーからの要望を見ながらつねに変わっていく新しい『鉄拳』

 『鉄拳レボリューション』で一番重要なのは、今ある形がすべてではないということです。サービス運営型のモデルですので、今も開発陣がずーっと張り付いて、ユーザーの要望を見ながらいろいろ作っています。アップデートを定期的に行く体制が整っているんです。もちろんキャラクターも増える可能性がありますし、ステージが増える可能性もありますし、ゲームモードが増える可能性だってありますし。今もトレーニングモードをくださいと言われていまして、いろいろと検討中です。

『鉄拳レボリューション』

 あと、カスタマイズがしたいと皆さんから言われていますが、最初から入れなかった理由というのがもちろんあります。実はカスタマイズを入れると、みんなカスタマイズばっかりやってしまうんです(笑)。アーケードゲームって、基本はまずゲームを遊ぶじゃないですか。なのでまずは遊んでもらいたいということで、あえて今は外しています。それもアップデートで入れていく予定です。そういう形でゲームがどんどん変化、進化していくっていうのも最大の特徴ですね。「これが『鉄拳レボリューション』です!」という感じですね。

■最大の市場であるヨーロッパにゲーセン文化を根付かせるには

──本作で採用されたF2Pでのビジネスモデルですが、原田さんとしても以前から考えられていたのでしょうか?

 このF2Pモデルは、ゲーセンをバーチャルな空間にというコンセプトですが、僕はもともとアーケードゲームを作っていたので、個人的にはアーケードを作るという欲求は満たされている訳です。ですから、そういう意味ではゲーセンみたいに作りたい、という発想が前からあったわけではありません。

 ただ、『鉄拳』は前からよく言ってますが、シリーズ販売本数の4200万本中2200万本がヨーロッパなんですよ。その次はアメリカです。逆にゲーセンでの人気というのは、日本とアジア、オセアニアと、東半球の地域が占めています。これはすごい明確で、家庭用は海外、業務用はアジアです。

 なんでこのバランスになっているかというと、欧米にはゲーセンがもうないんですよね。ここ10年でほとんどなくなりました。「それはやはり寂しい」という話が欧米の市場でもかなり言われていて、ナムコのゲーセンで展開しているタイトルをバーチャルでも作っていけたらおもしろいんじゃないかと。逆に言うと日本はゲーセンがあるんで、ただ単に『鉄拳』への入口が1個増えるのはいいことだと思っています。

 ゲーセンって立ち寄らなきゃ遊べない場所ですが、自分の通勤・通学経路になかったらなかなか行かないし、かと言ってその人が5,000円とか6,000円とかを出してゲームソフト買ってくれるかといったらそれも難しい。そういう意味で「無料だし試しにやってみるか」と思えるものがあるというのは、ゲーセンとパッケージゲームの間みたいな存在としておもしろい。でも『鉄拳』のイメージはあくまでもアーケードです。

『鉄拳レボリューション』

──このコインによる課金モデルは、参考にしたものなどはあるのでしょうか?

 僕は『鉄拳』で課金ってあまりしたことがないんですよ。一部昔のサントラとかを買えるようにはしてましたけど、有料DLCって基本的にやってこなかったので、それほど研究してなかったんですね。

 一番参考にしたのはやはりアーケードです。ゲーセンをどうやって再現しようかと。ただ、僕はPCゲーマーなので、他のゲームのF2Pのゲームは遊んでいます。ですので、F2Pのビジネスモデルは、参考と言うか知識としては持っていました。ただ、格闘ゲームとしては他にないですよね。

 ちょうど、コーエーテクモゲームスから9月に発売される『DEAD OR ALIVE 5 Ultimate』がF2Pの要素を発表したので、プロデューサーの早矢仕さんとも話をしてみました。同じF2Pというモデルですが、お互いに「それぞれ違うね」という結論になりました。なぜかと言うと、『DOA5U』はあくまでパッケージへの誘導なんですよ。あの基本無料は、言ってしまえば豪華な体験版なんです。

 『鉄拳レボリューション』ではどちらかというと、これ自体がメインでキャラクターを育てつつ遊んでもらえればと思っています。

──キャラクターがプレイしていくと増えていくと聞いて『League of Legends(以下LoL)』みたいなタイプに近いかなと思ったのですが、参考にされた部分はありますか?

 『LoL』はいいゲームですよね。僕も結構好きなので、実は真っ先に参考にしようと思ったんですが、参考にはならなかったですね。格闘ゲームは『LoL』と比べて、ポイポイとキャラを増やせるものではないんですよ。『LoL』のキャラクターもしっかりと作りこんではありますが、格闘ゲームと比べて1個のキャラにかかるコストはそれほど高くないと思います。昔はキャラクターが少なかったけど今100くらいいるじゃないですか。まぁ、『鉄拳』も60とか異常な数のキャラクターがいますが(笑)。

 そして『LoL』はチームワークが重要なゲームなので、キャラが増えることは別にいいと思いますが、格闘ゲームってキャラクターが多いとそれだけ対処しなきゃいけない相手が増えるということに繋がります。多ければいいというものでもないところが格闘ゲームのやっかいな部分というか、ジレンマですよね。なので、そういう意味では参考にならなかったですね。

 例えば、キャラクターを買っていくというのも、極端な話10体しかいない格闘ゲームだったら10個買ったら終わりってなってしまいますし、かといって買わせるために増やすのもちょっと違う。『鉄拳』の120キャラを用意しました! 全部買うとちょうど6,000円になります! みたいなものはちょっとおかしいだろうと。

──キャラクターの販売は格闘ゲームのビジネスモデルとしては合わないと。

 それを主にやっていくのは合わないですね。来年は『鉄拳』の20周年にあたりますし、基本無料はあくまで『鉄拳』をちょっとやってみるか、という人に向けたものという意図があります。Twitterで、「無料分だけ毎日必ず2回遊ぶことを決めました」と言ってくれた人もいたんですよ。そのままずっと無料ででも『鉄拳』を遊べるようになりましたっていう人が増えれば、それが将来に繋がります。

 例えば、ファンになってくれて次の『鉄拳』を出した時にパッケージを買ってもらえたりとか、ゲーセンに通ってもらえたりしたらそれでいいかなと思っています。

→『鉄拳』20周年に向けてナンバリング最新作も検討。(4ページ目へ)

(C)2013 NAMCO BANDAI Games Inc.

データ

▼『鉄拳レボリューション』
■メーカー:バンダイナムコゲームス
■対応機種:PS3
■ジャンル:FTG
■配信日:2013年6月12日
■価格:無料(アイテム課金制)

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