2013年7月12日(金)
――今回発売される『ケツイ』はアーケード版がベースになるのでしょうか? それともXbox 360版がベースなのでしょうか?
▲本作のディレクターであり、特典BDのプレイを担当する『ケツイ』全一プレーヤーの鷺岡 潮さん。 |
盛:基本的にはXbox 360版を忠実に移植しています。
――移植に際して気を付けた点などはありますか?
盛:まず気をつけた点としては、とりあえずXbox 360版と同じレベルまで持っていこうというところです。ハードが変わったことに起因する、ゲーム内の処理落ちや細かいバランスが変わっていないかどうか、というのはしっかりと確認しています。実は開発チームや僕自身PS3での開発にはあまり慣れていなかったので、当たり前の話ではありますがバグが出ないようにする、というのは一番注意したところですね。
――PS3での開発にあたって、ハードの違いなどで調整に時間がかかったところはありますか?
盛:実は、難航したところは全然ありませんでした。割と簡単に移植できたという感じですね。
鷺岡 潮さん(以下、鷺岡):強いて言えばメモリ関係ですね。
盛:Xbox 360版を開発していた時は、メモリでは特に苦労していなかったんですね。一番最初にデータを読み込めば、それ以降はステージデータのローディングが発生しないんです。しかし、PS3に移植するにあたって、そのまま持ってこうとしたら「あれデータが全部入らないな」って。
鷺岡:初期のバージョンでは、最初のロードのところがものすごく長かったんですが、開発陣に試行錯誤してもらって高速化を図りました。今はもうストレスがない感じになっています。
――ローディングはどういったタイミングで行われるのでしょうか?
盛:Xbox 360同様、ステージ間でロードが発生しないように作っています。『ケツイ』ってステージとステージがシームレスに繋がっているんですよ。
ステージクリア後に画面スクロールをしながらリザルト画面が出て、そのまま次のステージに行くという仕様になっています。そこで読み込みが発生してしまうと、例えば、次のステージの開始直後に画面の上部で敵を倒さなきゃって時にタイミングがずれてしまうんですね。ですので、なんとか“シームレスで読み込みなし”というところにはこだわりました。
――そういったプレイ感はかなり重要なポイントですよね。
盛:ええ、そこは譲れないと思っています。STGとして気持ちがいい部分は一番再現しなくてはいけないところです。『ケツイ』の場合、先ほども言ったようにステージ間でアーケード版と同じように攻めに行けないと気持ちが悪い。そこはストレスに繋がりますので、なるべく忠実にというか、気をつけて作りました。
――ちなみに今回PS3に移植するにあたってXbox 360版から調整されている部分はどのようなものがありますでしょうか?
鷺岡:細かいところは調整してはいますが、プレイヤーが体感できる部分というのはほとんどないと思います。ただ、体感というか、Xbox 360版でミスのあった、ステージ2のボスのキャタピラが出ていないといった部分はもちろん直しています。
鷺岡:自分は『ケツイ』のプレイヤーですから、ユーザーさんが望むところというのは痛いほどよくわかります。その中でできることとできないことを選別し、できることについては入れるようにしていますね。例えばスタートボタンを押した時のクレジット音。これはアーケード版と同じにしています。
――クレジットを入れて、その音で自分のモードを切り替えるというところもありますよね。
盛:クレジット音が緊張感となって、そこから始まるといった感じですね。
――家庭用の『ケツイ』はどれくらいアーケードに近づけたものなのでしょうか?
盛:もちろん完全再現に近づけたかと言うと、それはそれでかなり難しいところではあります。よく問題になるのが、実機基板で動かした時とコンソールハードで動かした時のテンポの違いです。ここについてXbox 360版では再現できておらず、今回のPS3版も同様です。ですので、アーケード版をやり込まれている方ならば、そこの違いには気づかれると思います。
ただ、その違いについて初心者の方でも認識できて、さらにゲームプレイに支障が出てしまうレベルかというとそうではなく、普通に遊ぶ分にはまったく問題にはならないでしょう。逆にアーケード版の挙動ではやりにくかった部分が、やりやすくなっている場合もあります。
鷺岡:実はXbox 360版の時にかなり調整をしているので、今回のPS3版ではゲーム内容の調整という部分ではほとんど触っていない状態です。
盛:家庭用とアーケードの違いはある、どうしても出てしまう、という前提の上で調整を行なっておりますし、大まかなゲーム内容についてはXbox 360で完成していると判断していますので、そこからあえて手を入れる必要はなかったというところですね。Xbox 360版でやり残した調整部分があれば、そこをやっていたと思いますが。
鷺岡:今の状態から変えるにも、どこまでやればいいんだろう、という状況になりそうでした。今度こそ完全移植、となるとこれからまた3、4年かけて作るのか、というのは現実的ではないので……。
――しかも普通の人にはわからないという。
盛:家庭用とアーケード版でテンポが違うという話を先ほどしましたが、ゲームスピードが変わる上で攻略にかかわる重要な要素の1つに、音楽があると思っています。家庭用のほうがゲームスピードは若干早いのですが、実はBGMをそれに合わせるようにテンポを変えています。
――なるほど。
盛:なので、全体的に早く動いてるんですが、パターンを組む上で必要な音楽のテンポがなぜか合っているといった感じです。
鷺岡:音楽のテンポまでずれてしまうと、まるっきり別物になってしまい、攻略パターンが通用しなくなってくる可能性があるんです。音楽については、作曲者の並木 学さんの監修も得た上で調整しています。さまざまなテンポで何曲も用意して、それを聞き比べながら、一番違和感のないところになっているかなと。
盛:本当は、ハードを解析して作れればよいのですが、自分たちにはハードを解析して作るというまでの開発力はないので、こういう手法を取らざるを得ないんですね。例えばM2さん(※)であれば、ハードを解析して……という手法も取れるかと思います。
自分たちにはできる方法はアセンブラ1行1行をCに書き換えていって、動いたものを1つ1つ答え合わせしていくという方法なので、それをひたすらやっているという感じですね。
(※)M2(エムツー):職人的かつ技術的なソフト開発を行う開発会社。過去にケイブから発売された『虫姫さま ふたり』の開発も担当している。
――話は変わりますが、今回のPS3版『ケツイ』はどういったユーザーにプレイしてもらいたいと思っていますか?
鷺岡:やはり、コアなSTGユーザーさんは、もうすでにXbox 360版を買っていただいているとは思います。個人的にはこれまでSTGを触ったことがない方にも触ってもらえればと思っています。
僕も元々STGをアーケードで遊んで育ってきた人間なのですが、最近はさまざまなジャンルにゲームが分かれていて、STGをやる人間がかなり少なくなってきていると感じているんですね。STGはやはり古く見えてしまう部分はあると思いますが、実際にプレイしてみてわかる楽しさというのもありますし、なるべく初心者の方にも『ケツイ』を楽しんでもらえればと思います。
『ケツイ』というタイトル自体は、オリジナルをそのままやるとかなり難しいSTGなのですが、アレンジモードである“X Mode”でなるべく難易度を抑えて、楽しいところはなるだけ増幅させるような調整していますので、『ケツイ』は難しいと思った方はこちらも遊んでもらえればと。
盛:時代の流れで、どうしてもSTGというジャンルの遊び方が、ユーザーさんの求めるものと差が出てきているとは思います。今後、新作STGタイトルを出すのであれば、当然ですが今の時代に合わせた調整というか、形を変えていくのは必要だと思うんですよ。いくら「これは名作だから楽しめ!」と言われても、当時のままでは受け入れられにくいでしょう。
とはいえ、名作はやっぱり名作なんですよ。なので僕たちが今後STGを出していくのに必要な課題は、今の形に合ったSTGを出していくということ。それと、過去の名作を継続して残していくということだと思っています。なくなってからでは遅いですからね。
順番はどちらでもいいんですよ。『ケツイ』を遊んでみて、おもしろかったから新作に目を向けてもらうのでもいいですし、新作を遊んでみたらSTGっておもしろかった、では名作と言われていたこのタイトルはどうなんだろう、という形で昔に戻ってもらうのもいいかなと思っています。
まずは出すことに意義があると。次に繋げるためにまずは『ケツイ』を出したということです。STGというジャンルを、継続してこれからも作っていきたいんですよ。
『ケツイ』全一プレーヤーとしてのこだわり
そして特典BD収録の苦境→(3ページ目へ)
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