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2013年7月12日(金)

なぜ『ケツイ』をPS3で出すのか? 全一スコアラー鷺岡さんによる特典BD秘話も飛び出した『ケツイ ~絆地獄たち~ EXTRA』インタビュー

文:megane

■ケツイのおもしろさは、10年やってもまだ先が見えること

――『ケツイ』のおもしろさというのは、どういうところにあると考えているのでしょうか?

鷺岡:『ケツイ』がアーケードにリリースされてから今年で10年くらいになりますが、僕はそのうち8年半くらいを『ケツイ』に費やしています。「そんなにやってると飽きるんじゃないの?」と思われるのが普通ですが、『ケツイ』の場合、自分が頑張ったら頑張った分だけスコアが伸びるシステムなんですね。

 STGというのはパターン要素が強いものですから、理想的なパターンを1回考えてしまったら、もうそこで行き詰まってしまうことが多いんです。でも、『ケツイ』はそうじゃない。そこが魅力の1つですね。実は今でもパターンの精度を上げたりすることで、昔は限界と思っていたスコアを超えている状態です。

 この先、どこまで上がるんだろう、どこが究極なんだろうというのを見たくて、それで気づいたら8年半が経っていたという感じです。

『ケツイ ~絆地獄たち~ EXTRA』 『ケツイ ~絆地獄たち~ EXTRA』

:STGというのはいま彼が言ったように、パターンを構築して進めていくものなので、ゲームによってはある程度システムと流れが掴めたら、稼ぎの正解みたいなものが見えてきてしまうものなんですね。とはいえ、全部が全部そういうSTGだとやっぱり飽きてきてしまいます。『ケツイ』もパターンはありますが、細かい繋ぎや稼ぎ方で変わっていくのがおもしろいところだと思います。

 『ケツイ』は攻めゲーと言われていますが、『バレットソウル』も同様にとにかく画面の上に行って攻めていくゲームになっています。元々は他社のゲームですが、『ケツイ』は割と心の師匠というか、ルーツだと思っているんですよ。

鷺岡:他のSTGだと、パターンの精度を上げてしまうと作業っぽくなってくるんですが、『ケツイ』の場合は同じパターンを僕以外の人がやっても同じスコアにはならないんです。そういった部分では気は常に抜けません。でも、過去の自分よりもいいプレイをすれば、スコアが伸びるというのはすごい魅力で、気づいたらずっとプレイしています。

――まさに挑戦し続けているといった感じですね。

:あちこちでよく話してるんですが、彼は今『ケツイ』のスコアラーとしては全国トップなんです。その座から落ちたらクビっていうプレッシャーを常に与えています(笑)。

――ありえない枷ですよ。

:彼はXbox 360版を作っていた時から、デバッガーとして香川から東京に出てきてもらっているんですが、そうすると内部の人間ということになるじゃないですか。でも彼には『ケツイ』のスコアラーとして、これからもずっと続けていってもらいたかったので、彼には『ケツイ』のプログラム的な内部情報はまったく教えていないんです。

 どうやってデバッグ作業したのかというと、僕が開発と彼の間に立って、内部情報を伝えないように、スコアに影響が出そうな部分はうまく回避するように“通訳”していったんです。なので、彼が持っている知識は、プログラム的には間違っているものもあったりするんですね。その知識にたどり着いたのは、彼の解釈であり、他のプレイヤーとまったく一緒の立場なんです。

――こうして社内にいても同じ感じでやっていると。

鷺岡:そうです。今も、デバッグを引き受けたときからも、スコアラーとして不公平にならないようにやっています。逆に言えば、僕は開発者なのに『ケツイ』についてはほとんど知らないんです。プレイした感覚で開発には伝えているので。

:そういう仕様にはなっていないのに、プレイしてそう感じるということは、そこにきっと何か問題点があるんだろうと解釈しながら開発をしていました。

鷺岡:それで解決したこともありましたね。

:彼が間違っていることを言ってきたとしても、「そこは間違っている」とも言えないんですよね。スコアラー視点だと、そこからいろいろと推測できてしまうので。

――そのこだわりはまさしくシューター寄りですね。

:今となってはシューターは貴重ですからね。こちらとしてもビジネス的な観点でそういう人を潰してしまうことは、本意ではないですし。

『ケツイ ~絆地獄たち~ EXTRA』

■特典BDの収録は会社内ではなく、ホームのゲーセンで自腹にて

――そんな現役スコアラーの鷺岡さんが手がけられた限定版特典のBDについてお聞かせください。このBDが付くことになった経緯はどのような感じだったのでしょうか?

『ケツイ ~絆地獄たち~ EXTRA』

:元々『ケツイ』の企画が上がった時に、先程からお話ししているように内容はXbox 360版と同じということになっていました。しかし、まったく同じだと売りが少ない。何かパンチのあるものが欲しい、ということで企画としてあがってきたのがこのスーパープレイを収録したBDです。

鷺岡:収録を開始したのは、PS3版『ケツイ』の開発が本格化するよりも前でしたね。

――これは会社のほうで筐体を用意してプレイを収録しているのでしょうか?

:いえ、彼がホームとしているゲームセンターに収録機材を持ち込んで、そこでプレイをしてもらっています。元々、会社に泊まりこんでも、仕事中にプレイしていてもいいよ、という話だったんですが、どうもそれではうまくいかない。

鷺岡:プレイをする際に、いつもと同じ環境の中でやるほうがいいという判断になりました。例えば、ゲーセンの中で太陽光が入ってくることはほとんどないですが、会社でやっていると窓を閉めたり、ブラインドを下げたりしないといけないですよね。あとは人の視線ですね。ゲーセンでも見ている人はいますが、会社ではやはり「何をしてんの?」という感じになりますし……。それに仕事でもゲーセンに投資できるのは、それはそれでいいことだと思っています。

:彼がゲーセンに行かなくなってしまうのは、ゲーセンにとっては大きな損失ですからね。そこは協力してやっていきたいと思いました。最初は自宅からそのゲーセンまで通っていたんですが、そのうちそれではもたなくなってゲーセンのそばに引っ越したんですよ。

鷺岡:前はホームのゲーセンまで電車で30分くらいかかっていたのですが、終電などを気にするのが面倒になってしまって……。今では徒歩1分ほどのところに引っ越してしまいました。

『ケツイ ~絆地獄たち~ EXTRA』

:ちなみに今回の特典映像の収録では、彼のプレイ代金が20万円ほどかかっています。自腹です。

鷺岡:『ケツイ』をやるためにゲーセンに1日中いると、だいたい3,000円~5,000円くらい使いますね。業務的に直行直帰でゲーセンに出向しているような状態の日もありますので、月に5万円前後は使っていたと思います。ですので、おそらく20万円は超えているのではないかと。ちなみに自腹なのは弊社の意向ではなく身銭を切ることで緊張感を持ってプレイしたいので自分からお願いしています(笑)。

:とはいえ、これまでに『ケツイ』に使った金額と比較すれば微々たるものだよね。平均して見ると、今の時期にちょっとプレイのペースが上がったかな? というくらい。

鷺岡:僕が全国1位を取れるか取れないか、という時は比較にならないほどプレイしていましたね。1日で1万円を使う時もざらにありました。

:この人は本当に全国1位なのか? と思うくらい1面で死にますからね。

鷺岡:『ケツイ』は裏の2周目に入る条件が、1周目でノーミス&ノーボムなので、1周目で死んでしまったらそこで終わりなんですね。ですが1周目のスコア比重が大きいので1周目の1面だからと攻めずにプレイするわけにはいきません。

『ケツイ ~絆地獄たち~ EXTRA』 『ケツイ ~絆地獄たち~ EXTRA』

――今回のBD収録ではスコアの他にも、Aタイプ機体でのノーミスでの裏2周クリア収録という目標があったかと思いますが、そちらについては達成されたのでしょうか?

鷺岡:結局、達成できませんでした。ノーミスであと残り1分ほどという段階までは行けたのですが、そのプレッシャーに耐え切れずに被弾してしまいました。

:その被弾した時の映像を見たんですが、「何でこれに当るの?」という状況で被弾しているんですよ。ただ、その直前に収録したシーンを見ると、シューターなら「あ~、わかる」というふうに感じられるかもしれません。シューターの心理というやつですね。

鷺岡:被弾する直前の頭の中の状況を伝えるなら“パニック”ですね。

:そうやって彼には6カ月ほど頑張ってもらいました。ただ、やはり10年かけてもまだ誰もなしえていない偉業ですので、やはり現実は厳しかったといった感じですね。逆に言えば、まだまだ伸びしろがあるということですので、このBDを見て『ケツイ』を気に入った人はぜひノーミスを達成して、彼をクビにしてあげてほしいです(笑)。

鷺岡:収録されているスコアだけを見ると、全国1位を取った時のスコアよりも少し足りないくらいなんですが、内容で見ると今回のほうがいいんですね。死ぬ場所が悪くて、スコア的にちょっと劣っているという感じです。

――スコアとして最初に決めた目標となる点数はどれくらいなのでしょうか?

鷺岡:裏2周で6億点ですね。

:6億点というのは、ノーミスでなければ達成できない点数なんですよ。

鷺岡:表2周の方は5億点というのが1つの目安で、最低限のスタート地点です。

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