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2013年7月22日(月)

『ルートダブル』PS3版で目指すのは“ユーザーの拡大”――移植経緯や拡張要素について中澤工監督にインタビュー

文:ごえモン

■“エクステンドルート”はキャラの内面が変わった結果生まれる新たな分岐

――改めて、サブタイトル『Xtend edition』の意味を教えてください。

 “Xtend”は正しいスペルでは頭文字が“E”なのですが、“拡張”という意味で使っています。文字通り『ルートダブル』をさらに拡張させたバージョンである、というのが第一の意味です。また、『ルートダブル』のキーワード“W”の1つ先のアルファベット文字が“X”であることから、“1つ先へと洗練させた”という意味にも絡められるため、“Xtend”となっています。

 “edition”の“e”が小文字になっているのは、実は意図的なものです。1つは“X”を引き立たせたいというのが意図ですが、たまたま調べてみたら、“Xe”は元素番号54(キセノン)の元素記号なんです。54という数字は、6×9と作品のキーワードを掛け合わせた数字なので、なんて運命的な言葉だろうと非常に気に入っています。

『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー 『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー
▲本作には、“閉じ込められた人間が9人”、“6人しか生き残れない”、“9時間の脱出劇”などなど、“6と9”に関係するキーワードが複数存在する。

――サブタイトルと同じく、2つのパッケージイラストにもいろいろ意図がありそうに思えます。イラストを見て1つ思ったのは、渡瀬がとてもカッコいいということです(笑)。

 これは僕らも線画があがってきた時に驚いたんですよ。メインキャラクターデザインを手掛けたみけおうさんは、『ルートダブル』という作品を経て、これまで以上に考えて描くようになったとおっしゃっていました。今までは見栄えよく、かわいく、カッコよく、絵としてのまとまりのみを考えていたそうですが、今では「この人物はなぜ、こういうことをしているのか?」とシチュエーションへの理解を深めたり、その絵で何を伝えたいのかというコンセプトを一層深く考えるそうです。個人的には、そういった考えの変化が今回のパッケージに表れていると感じます。彩色してくださったeco*さんも、みけおうさんの思いを汲み取って、すごく美麗に、迫力たっぷりに仕上げてくださいました。

『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー 『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー
▲Aルート主人公・笠鷺渡瀬と橘風見が描かれた初回限定版のパッケージイラスト。▲Bルート主人公・天川夏彦と琴乃悠里が描かれた通常版のパッケージイラスト。

――もう1つ気になったのですが、風見が初めてメインで登場していますね。

 そうなんです! 元々、渡瀬と夏彦と悠里で1枚と考えていましたが、それではワンパターンなので2枚にしようとなりました。渡瀬と夏彦を分けて、両方に悠里を入れることも考えましたが、やっぱり渡瀬の隣に立たせるのは風見だろうと、初めてパッケージ絵に彼女を採用しています。

『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー 『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー 『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー
▲Xbox 360版の通常版パッケージイラスト。▲Xbox 360版の初回限定版パッケージイラスト。▲PC版のパッケージイラスト。

 例によって、パッケージにはいろいろな思いや意味を込めています。ちょうど人物の話題になっていたので、人物に込められた意味を紹介しますと、まず夏彦は悠里を抱きかかえて、身を挺して守っているように見えます。これには、“悠里を全力で守る”、“大切な人は身を挺して守るべき”という夏彦の価値観が表れています。

 それに対して、渡瀬はパートナーである風見に後ろでフォローしてもらっているんですね。つまり、“大切な人とは支え合う”という価値観です。1枚の絵1つ取っても、“価値観の違い”が表れていて、作品的に大変おもしろいなと思います。

 余談ですが、絵描きさんは描けば描くほどこなれて絵が変化していくものです。だから、渡瀬はカッコよくなりすぎて、しかも若返ってしまったんですよ(笑)。この絵は、だいぶ本来のデザインに近づけてもらったのですが、みけおうさんの中で気持ちが盛り上がってしまったんでしょうね。夏彦も元々のデザインよりも男前に描かれていて、何度か調整した結果、現在のイラストになっています。

――今回、エニアグラム(※)の光点が2つしかありませんよね。

 本作の“拡張要素に絡めた意味”が、その光点には込められています。どこの点が光っているか。よく見ると、点と点の間の線が強くつながっている。それらを読み解くと、どのように“拡張”されているのか推理できるんじゃないかと思います。

※エニアグラム……人間の本質は9種類に分類され、誰もがその1つを持っているという考えにもとづいた性格論とあわせて用いられるシンボル。9種類の本質は、批評家、援助者、遂行者、芸術家、観察者、忠実家、情熱家、挑戦者、調停者で、ラボに閉じ込められている9人は、いずれかの本質に割り当てられている。

――その拡張要素の1つ“エクステンドルート”について話せる範囲で教えてください。

 公式発表の通り、ゲーム終盤で発生する新しい分岐です。センシズの分岐条件を満たすことで“エクステンドルート”に入ることができ、その条件を満たせない場合は、Xbox 360版と同じ展開に入ります。

 “エクステンドルート”は、キャラの話す内容や考え方、動き方、立ち振る舞い、人間関係が微妙に違うルートで、大きな話の流れは何も変わりません。まったく同一の展開も多々ありますし、根本的なレベル(例えば、いつ停電が起きるとか、いつ誰々と遭遇するとか)では起こる出来事は変わっていません。ですが、キャラの心情が変化したことによって、ユーザーさんが感じ取れる印象が変わると思います。まったく新しい話ではなく、人間関係の変化によって生じた少し異なる展開を楽しんでもらうものですね。『ルートダブル』という物語の別の楽しみ方と捉えてもらうのがいいと思います。

――“エクステンドルート”へは、どの辺りで分岐するのでしょう。

 分岐点は、最終ルートの序盤の終わりごろです。中盤に達する前に分岐します。その結果として、別のエンディングに到達する可能性が生まれます。

――そのエンディングの内容は……教えられないですよね(笑)。

 大まかにご説明しましょうか。最後ラボに何が起きて、キャラがどんな葛藤と決断をするのかは、ほぼ変わらないです。従来のエンディングと視点者が変わったものもありますし、最終的に起こす行動に違いも出ていますが、一般的に思い描くような、全然違う結末というと語弊があると思います。キャラたちの人間関係が変わった結果、自然と着地するエンディングになっています。

 あくまで個人的な感想ですが、今回追加されたエンディングは結構好きです。「この終わり方も、いいな」と思えるような内容になっていると思いますよ。

『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー 『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』インタビュー

――イベントCGは追加されているのでしょうか?

 終着点やキャラの立ち振る舞いが違いますので、“エクステンドルート”のエンディング用に新しくイベントCGを用意しています。当初イベントCGを追加する予定はなかったのですが、そういったエンディングが生まれてしまった以上、用意せざるを得ないと無理を言って追加させてもらいました。

 元々は、エンディングを追加する予定すらありませんでした。最終ルートでは“エクステンドルート”と、従来のルートどちらの分岐からもグランドエンディングに到達できるのかそれとも片方からしか到達できないのか、グランド以外の既存のエンディングに着地するのか、などを調整していくうちに、従来のルートにも、“エクステンドルート”にも、どちらにもプレイする価値や意味を作りたくなったんです。

 弊社のスタッフやシナリオを担当したチーム月島の月島総記さんと話し合った結果、新しいエンディングを追加したほうが構造的に合理的だという考えにいたり、制作スタッフ全員が一番納得できるような形にしたのが、今の状態です。

→PS3版は物語がさらにテンポアップ。Bルートにも調整が?(3ページ目)

(C)イエティ/Regista

データ

▼ダウンロード版『ルートダブル -Before Crime * After Days- Xtend edition』
■メーカー:イエティ
■対応機種:PS3
■ジャンル:AVG
■発売日:2013年9月19日
■希望小売価格:未定
▼『ルートダブル』クロスポスター
■メーカー:アスキー・メディアワークス
■発売日:2012年7月14日
■希望小売価格:4,500円(税込)
 
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