2013年7月20日(土)
電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。第85回となる今回は、『ミス・ファーブルの蟲ノ荒園(アルマス・ギヴル)』を執筆した物草純平先生のインタビューを掲載する。
▲藤ちょこ先生が描く『ミス・ファーブルの蟲ノ荒園』の表紙イラスト。 |
本作は、謎の巨大生物〈蟲(ギヴル)〉が闊歩するもうひとつの近代で幕開く、蒸気と蟲と恋が彩るスチームパンク・ファンタジー。18世紀に発生し、瞬く間に世界中に広がった謎の巨大生物・蟲。甚大な被害と引き替えにもたらされた化石燃料によって、世界は大きく変貌した。
時は“明治”と呼ばれるはずだった時代の少し前。異国への航路で蟲を操る男たちに襲われた少年・秋津慧太郎はある海岸に流れ着く。その右目に奇妙な力を得て――。
そしてたどり付いた荒地で、慧太郎は蟲たちを愛し、その研究と対処とを生業とする美少女アンリ・ファーブルと出会ったのだが……。
物草先生には、本作のセールスポイントや小説を書く時にこだわっているところなどを語っていただいた。また、電撃文庫 新作紹介ページでは、本作の内容を少しだけ立ち読みできるようになっている。まだ読んでいない人はこちらもあわせてご覧あれ。
――この作品を書いたキッカケを教えてください。
割と歴史が好きなんですよ。ええ、不勉強であちこち知識が穴だらけなくせに、好きなんです。だから、前から架空史っぽいものを一本やりたいなぁと思ってました。で、差し当たって歴史上の偉人を主人公orヒロインにしよう! と考えたわけですが、ここで“戦争で名を馳せた英雄”とか持ってくると、なんだかありきたりになってしまう。そういうのとは別ジャンルから、でも誰もが知ってる有名人はいないかな? そうやっていろいろ悩んで出てきたのが、『ファーブル昆虫記』の作者様だったわけです、はい。
え、アンリ・ファーブルを少女化した理由ですか? 虫が好きな女の子って萌えますよね! うん、反論は受けつけねー。
――作品の特徴やセールスポイントはどんな部分ですか?
まず、史実との相違点。かつて実在した人物やら、その子孫やらが何人か本作には登場してるわけですが、彼らの生い立ちや今後の行動によって、作中の歴史の歪みが見え隠れすると思います。なので、歴史が好きな方はそのあたりにご注目ください。
次に、ちょっと重めのストーリー展開。前作(『スクリューマン&フェアリーロリポップス』)は割とライトでしたが、今回はややヘヴィー。“ままならないもの”をままならないままにできない真っ直ぐな奴らの物語。“ま”が多いな。逆境が好きな方とかにお勧めです。
最後に、虫ッ! むしろ苦手な人にこそ、ぜひ読んでいただきたいのです。
――作品を書くうえで悩んだところは?
当初からわかっていたことではありますが……やはり古い時代の物語を書くのは難しかったですね。現代物であれば、例えキャラたちが遠くにいてもケータイで一発! なのですが、こっちだとそうもいかない。キャラたちの動かし方を上手く把握してないと、ほとんど絡まずに終わる子たちとかが出てきちゃうもんで。
これはあれだ。もういっそ胡散臭い通信アイテムとか勝手に作りますか。“スチームパンク・ファンタジー”なんて銘打っているワケですし。携帯伝書鳩とかどうよ? 機械仕掛けの、くるっぽー。
――執筆にかかった期間はどれくらいですか?
およそ4カ月くらい……だったと思います。もしかしたら、もっとかも……。
――執筆中に起きた印象的な出来事はありますか?
びっくりするくらい何も。それでも無理して探せば、うちの“けったマシーン”が壊れました。カゴがぺしゃんこ。
――主人公やヒロインについて、生まれた経緯や思うところをお聞かせください。
ヒロインのアンリに関しては、こいつありきの小説なので、プロット段階からちゃきちゃき決まっていきました。すげーわかりやすいキャラだと思います。
問題だったのは、主人公の慧太郎のほう。前作の主人公が、ちょっと万能選手すぎたので、今回は人間として当たり前に“弱さ”を持っている子にしよう、そーだヒロインの子に手を引っ張っていってもらえるような感じにしようそーしよう……と、ここまで考えたのはよかったのですが、なんかいろいろと困ったオプションが付いてしまったと言いましょうか……(汗)。
倒錯的だわ土下座が趣味だわ頭固いわヒロインよりヒロインっぽいわ……ええいっ、メンドくさいなこいつ! 駄目な子ほどかわいいよ! ほんとだよ!
――小説を書く時に、特にこだわっているところはどこですか?
文体のリズム。テンポじゃありません、あくまでリズム。
――アイデアを出したり、集中力を高めたりするためにやっていることは?
主に散歩。歩いてると、脳が活性化します。
――高校生くらいのころに影響を受けた人物・作品は?
たくさんあり過ぎて困るなぁ。う~ん……実写の洋画が多かったような。
――現在注目している作家・作品は?
特に誰、というのはありませんね今は。強いて言えば、あらゆるレーベルの新人さん全員でしょうか? ほら、何しろラノベ業界って今、すごく盛り上がってるから。生き馬の目を抜くような闘いを経て、この中から生き残れる人とそうでない人が篩いにかけられるんだなー、とか思うと…………が、頑張りますよ!?
――今熱中しているものはなんですか?
小説の執筆です! HAHAHA、どーですかこの模範解答!
――ゲームで熱中しているものがあれば教えてください。
ないッス! ってか、ゲームやる時間がないッス! 遅筆なんで自業自得ッス! 部屋の中には、買うだけ買って積んであるゲームがわんさかと。いつかはやりたい。特に『サモンナイト5』。
――ペンネームの由来は?
面倒くさがり、という意味の“ものぐさ”からです。……いえ、僕自身は決してそこまで“ものぐさ”なわけではないのですが。せいぜい冬のコタツから出ずにいろいろと用が済ませられるよう、腕をマジックハンドに改造するくらいですし。うん、フツーだ。
ちなみに“純平”は、“純粋に助平”の略です。
――それでは最後に、電撃オンライン読者へメッセージをお願いします。
いいコメントが思いつかなかったので、主演のお2人にご登場願いましょう。どうぞ。
アンリ「あは、あはははははは! け、慧太郎っ……あんたそのカッコ、すっごく似合ってるわよ! あははははははははははははは!」
慧太郎「くっ……自分でこんなモノ僕に着せておいて、その反応はないだろ!?」
アンリ「だってあんた、ハマり過ぎてるんだもん。男の素質ゼロね」
慧太郎「ひ、ひどっ……!」
アンリ「ほらほら、良いではないか~良いではないか~♪」
慧太郎「うわ、うわわわわ! 馬鹿、よせっ……スカートめくるな!」
アンリ「あははははは──って、あれ? ひょっとして、カメラもう回ってる?」
気づくの遅ぇよ! イチャイチャすんなよ! ……こんな2人が主人公の物語ですが、気になった方はぜひ。
(C)物草純平/アスキー・メディアワークス
イラスト:藤ちょこ
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