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2013年8月22日(木)

【まり探】『逆転裁判5』開発者ロングインタビュー前編! ファンの要望に応えた6年ぶりのナンバリング最新作はどのように生まれたか?

文:まり蔵

 まり蔵探偵事務所

 新作旧作問わず、さまざまなミステリー・ホラー・サスペンス系のアドベンチャーゲームを紹介していく“まり蔵探偵事務所”。7月25日にカプコンから発売された3DS用ソフト『逆転裁判5』の開発陣に、所長のまり蔵がインタビューを行いました。

『逆転裁判5』

 『逆転裁判5』は、シリーズ累計440万本を売り上げるカプコンの人気ADV『逆転裁判』のナンバリング最新作。前作『逆転裁判4』から1年後を舞台に、“法廷崩壊”をテーマとした物語がつづられます。今作では、主人公に返り咲いた“ナルホドくん”こと成歩堂龍一が、“ココネ”こと新米弁護士の希月心音とともに、数々の事件と法廷に挑んでいくことに。また、御剣怜侍や王泥喜法介、牙琉響也など、おなじみのキャラクターたちも登場します。

 本作の開発陣にインタビューをするため、大阪のカプコン研究開発ビルにお邪魔してきました。お話を伺ったのは、プロデューサーの江城元秀さん、シナリオディレクターの山﨑剛さん、アートディレクターの布施拓郎さん。インタビュー前編では、本作の制作経緯やシナリオについて伺いました。

 発売から1カ月がたち、そろそろゲームをクリアした方も増えてきたころだと思いますので、ちょっぴりツッコんだ話を聞いております。ただ、トリックにかかわるネタバレはありませんので、未プレイの方も安心して読んでください!(※インタビュー中は敬称略)

『逆転裁判5』 『逆転裁判5』 『逆転裁判5』
▲江城元秀プロデューサー▲山﨑剛シナリオディレクター▲布施拓郎アートディレクター

■6年越しのナンバリング最新作はファンの要望から誕生

――本作を手掛けることになった経緯を教えてください。

江城:カプコンでは、ユーザーさんからのお便りや意見がまとめて送られてくるのですが、その中にずっと『逆転裁判5』に対する要望がありました。「『逆転検事』がおもしろかったです。で、『逆転裁判5』はまだですか?」っていう。

山﨑:ありましたね(笑)。「ナルホドくんは? オドロキくんは?」っていうのが。

――『逆転検事』シリーズが『1』『2』とリリースされ、次は『逆転検事3』だと思っていたのですが、なぜ『逆転裁判5』になったのかを教えていただけますか?

江城:やはりユーザーさんからの要望が多かったからですね。『逆転検事』の制作を発表した時、発売した時、『逆転検事2』を出した後、そのつど『逆転裁判5』への要望をいただきまして。『逆転検事2』を出した後、次の展開を考えた時に「さすがにこれ以上、待たせるわけにはいかないのでは」と。

山﨑:ちゃんと告げられたわけではないのですが、江城さんから「次は『逆転裁判』かも」となんとなく言われていました。

江城:ただ、巧(『逆転裁判』シリーズのディレクター・巧 舟さん)は3DS『レイトン教授VS逆転裁判』を制作していたため動けない。そこで『逆転検事2』チームがベースになるだろうと。ナンバリングタイトルを作るのに、ベースがわかっていないとさすがに話にならないので、中心メンバーは『逆転検事2』のスタッフにしました。それを踏まえて、改めて山﨑に「次は『逆転裁判』の新作を作ってほしい」と伝えました。シナリオの次は、イラストを誰にするかです。

――『逆転検事』シリーズは、『逆転裁判』シリーズにもかかわっていた岩元辰郎さんでしたね。

江城:そうです。ただ、今回は久々のナンバリングであるうえに、デザインを変えるということもあり、内部のスタッフでやりたいと考えました。そこで、布施(布施拓郎さん)にお願いしたんです。元々絵がものすごくうまくて、『逆転検事2』や『ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3』などにかかわっていた人物です。

 大変なプロジェクトになることは最初からわかっていましたが、毎回いただくナンバリングへの要望には答えなくてはいけないと思ったことが、この企画を動かした最大の理由ですね。

――主人公を成歩堂龍一に戻した意図は?

江城:『逆転裁判4』のラストでナルホドくんが、「弁護士バッジを取り戻してもいいかな」って言っていたので、「じゃあ、取り戻してもらいましょう!」と。

山﨑:そうですね。取り戻してもらわないとつながらないので。

――本作では成歩堂龍一だけでなく、王泥喜法介や希月心音も弁護士として法廷に立ちますよね。

江城:主役を3人立てるというコンセプトだったわけではないんです。“主人公はナルホドくん”という太い柱があったうえで、他の2人もいるというイメージですね。オドロキくんはストーリーのキーパーソンで、新キャラとして新米弁護士の希月心音を当てました。山﨑は、それぞれのキャラにちゃんとドラマを描きたいと思っていたため、一見すると主人公が3人いるように見えますが、今回の主人公はナルホドくんです。

山﨑:そうですね。主役はナルホドくんで、オドロキくんはキーパーソンとして登場。この2人は既存のユーザーに対してのアピールです。ただ、本作から遊んでくれるような新たなユーザーに向けて、新たなキャラと一緒の視点でこの世界に入ってほしいという気持ちからココネを作りました。新鮮みがほしかったという思いも込められています。

――“逆転裁判10周年特別法廷”で本作を発表されましたが、あの時のインパクトはすごかったですね。

江城:イベントを行うことが決まった時から、『逆転裁判5』の制作発表はあそこしかないと決めていました! タイトルとしては、“逆転裁判10周年特別法廷”の約半年前から動いていました。シナリオや設定を考えつつ、発表に欠かせないロゴを決めました。今回のロゴには、いろいろな意味が込められています。ゲームは3Dポリゴンになり、すべてゴージャスに見えるのがポイントです。“5”の最後がはねている部分や、星十字が立体的になっている部分のシャープな感じは外せませんでした。

山﨑:江城がロゴにこだわっていたので、リテイクが大変でした(笑)。“5”は形的にデザインするのが大変なんですよ。

江城:映像でロゴを出す手法は、山﨑が「“『逆・転・裁・判・5』制作決定!”と1文字ずつ出すのをやりたい!」と言っていたので、それにしました。

山﨑:僕としては、“逆転裁判”のロゴが青いのはナルホドくんで、“5”が赤いのはオドロキくんをイメージしています。「どっちが出るの?」、「両方出るの?」と考えてほしいという思いがありました。その後、キャラが発表された時に、「黄色のキラリンはココネじゃないか?」と言われていましたが、それはまったくの偶然です(笑)。

江城:最初のロゴでは、ナルホドくんのシルエットがないんですよ。誰が主人公なのか、いろいろ考えてもらいたかったので、あえて入れませんでした。

『逆転裁判5』
▲“逆転裁判10周年特別法廷”で発表されたロゴ。

――発表された時は、会場が歓声と拍手で揺れましたね。

江城:我々が予想していた会場の盛り上がりは、静かな感じで終わると思っていました。皆が喜んで「うわ~、よかったね」とか、「ようやく来た! ヒューヒュー」くらい、ちょっとアメリカ的な。

――な、なるほど(笑)。でも全然違いましたね。

江城:発表した直後、怒号が飛び交っているのかと思ったくらいの反響でした。

山﨑:いや、本当にすごかったですね。会場にいたスタッフは、「やばかった!」って言っていました。ファンの圧力、熱気がすごかったと。

江城:僕らは舞台そでにいたんですが、我々がすごいと思うくらいの歓声だったので、会場にいたらものすごかったでしょうね。あとは、感極まって泣いているファンもいらっしゃったと。それを聞いた時に、「ああ、これはまずい!」と思いました。ただ普通に作ったら、マズイことになると。

――同じようなセリフを、『逆転検事』のインタビュー時にも話されていましたね。

江城:ああ、ありましたね。ただ、それの数十倍のプレッシャーで、「これは本当ににマズいな」ということを感じました。「こういう座組みで、こういうクオリティを目指そう」とスタッフに話していたんですが、本当の意味でスタッフに火がついたのは、あのイベントの反響でしたね。

山﨑:あの発表会でさらにエンジンがかかりましたね。江城さんも「死ぬ気でやらないとヤバイ!」って連呼していました。

江城:6年越しの続編ですからね。6年越しに新作が出るタイトルって、あまりないですから。

――『逆転検事』シリーズがあったので、そこまで懐かしさを感じたわけではないのですが、感慨深かったです。

江城:ナンバリングですからね。そこは『逆転検事』とは違うプレッシャーがあり、クオリティ的にもセールス的にも外せないという命題がありました。

山﨑:武者ぶるいするほどのプレッシャーでした。最初に『逆転裁判5』をやると決まった時点から、プレッシャーはあったんですが、そこに上乗せされましたね(苦笑)。

『逆転裁判5』

→本作のテーマについて伺いました。(2ページ目へ)

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データ

▼『逆転裁判5』(ダウンロード版)
■メーカー:カプコン
■対応機種:3DS
■ジャンル:AVG
■配信日:2013年7月25日
■価格:5,990円(税込)
▼『逆転裁判5 LIMITED EDITION』(イーカプコン限定版)
■メーカー:カプコン
■対応機種:3DS
■ジャンル:AVG
■発売日:2013年7月25日
■希望小売価格:9,990円(税込)
▼『逆転裁判5 FIGURE EDITION』(イーカプコン限定版)
■メーカー:カプコン
■対応機種:3DS
■ジャンル:AVG
■発売日:2013年7月25日
■希望小売価格:8,990円(税込)
▼『逆転裁判5 EXTENDED EDITION』(イーカプコン限定版)
■メーカー:カプコン
■対応機種:3DS
■ジャンル:AVG
■発売日:2013年7月25日
■希望小売価格:7,590円(税込)

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