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2013年9月12日(木)

『龍が如く 維新!』プロデューサーの横山昌義氏に独占インタビュー! キャラクターの魅力を最大限に引き出した新たな方向性とは!?

文:チョロ松

■斎藤一というのは“偽名っぽさ”が満載の名前!?

――坂本龍馬と斎藤一が同一人物という奇抜な設定ですが、その着想はどこから得たものなのでしょうか?

 奇をてらった設定にしたつもりはないんです。あくまでも私たちが作り出す坂本龍馬だったら、こう生きただろうという1つの形です。

 実際の龍馬は当時、剣の腕が一流で強いと言われていた(らしい)。で、『龍が如く 維新!』に登場する龍馬は、さらに強い(笑)。そうなると、後は自然と、強い男は強い男のところに導かれていくんじゃないかと。その終着点が“新選組”だったというわけです。新選組は当時最強と言われていた人斬り集団ですしね。後は、その新選組を敵に回して戦うのか、それとも別の形でかかわっていくのか……。

『龍が如く 維新!』 『龍が如く 維新!』

 そう考えた時、彼なら新選組に潜入しちゃうんじゃないかと思ったんですね。そして「組に入るんだったらどういう名前で入るんだろう?」と考えた時、「あ、斎藤一が一番それっぽいかな?」と。着想はそんな感じです。

――横山さんがイメージする斎藤一って、どんな人物ですか?

 それも、確たるイメージがあまりないんです(笑)。すごく詳しいわけではないのですが、斎藤一ってミステリアスなところがあって、強いんだけれど寡黙で、生い立ちもよくわからない。どちらかと言えば、桐生一馬のパーソナリティだけで言えば、坂本龍馬よりも斎藤一のほうが合いそうですよね。

 斎藤一は、坂本龍馬と同一人物という立ち位置ではなく、どちらかと言うとただの“偽名”ですしね。なんか“斎藤一”って、偽名っぽくないですか(笑)。これまでの『龍が如く』だと、桐生も冴島も自分の素性を隠す時は“鈴木”って名乗っていますし、私の中で偽名は“よくある苗字”が鉄則ですので、そういう意味で“斎藤一”というのはまさに“偽名っぽさ”満載の素晴らしい名前だと。全国の斎藤さん、申し訳ない(笑)。

『龍が如く 維新!』

 これは余談ですが、龍馬と斎藤が同一人物ということに、皆さんビックリしているみたいですけど、当の名越はまったく驚いていませんでした。名越は当初、斎藤一を史実の人物ではなく、オリジナルの偽名だと思っていたようです(笑)。近藤勇とか土方歳三、沖田総司あたりまでは知っていたらしいのですが、斎藤に至っては、途中で“実際にいた人物”だったと気づいたみたいです。

――面白いエピソードですね。

 私は逆にそれを聞いて安心しました。シナリオは名越の細かなチェックを経て書き上げていくのですが、歴史をそれほど詳しく知らない名越が、話として飲み込めて、心から面白いと思える本に仕上がったということですし。想像に難くないとは思いますが、名越稔洋という人は、絶対に自分が面白くないと思うものを許可するような人ではありませんからね。

 『龍が如く』の看板を背負う商品である以上、歴史ファンではなく“龍が如くファン”を訴求対象の中心と考えていますから、歴史モノに疎く、ややこしい設定や言葉が嫌いな人でも、純粋に“熱い男たちの人間ドラマ”としてワクワクドキドキ楽しめる脚本を目指しました。

――坂本龍馬が名を変え、素性を隠して京都に来たのは、父と慕う恩人を殺した犯人を見つけるためとのことですが。

 そうですね。その点もあまりひねっていません。序盤から終盤まで、ずっと龍馬が個人的な動機で動き続ける、ストレートなストーリー展開になってます。

 これは今作における私個人のテーマなんですが、“龍が如くを愛する人間による、龍が如くを愛する方たちのための最高の1本”にしたいという想いがあります。

 テーマというよりは信念に近いですかね。100%を越える“120%の龍が如く”を作りたい。そこを目指すにはどうしたらいいんだろうと考えた時、第1作の『龍が如く』のように、主人公が誰のためでもない、主人公の自身の欲望のために動く物語にしたかったんです。

 そういう意味で、風間のオヤっさんの顔をした吉田東洋が殺され、それが原因で龍馬の人生が激変するという流れが、『龍が如く』の第1作をプレイした方であれば、より共感していただけるのではないかと思い、そう仕立てました。

 龍馬は物語の序盤、親殺しの汚名を着せられて脱藩します。当然、命を狙われているので名前は変えて、となるわけです。ありきたりなんですけれど、すごくストレートな動機を軸に話を展開させています。

――今までの『龍が如く』を遊んだ人であれば、過去の作品での出来事を思い浮かべつつ、「今回はこうなんだ」と思えるような感じになるわけですね。

 おそらく、そうなると思いますよ。演出やシーンの作り方も、わざと過去の作品に似せているところもあります。意識的に過去作に寄せて、セルフオマージュ的にこれまでのシーンを連想させるポイントをたくさん入れています。各キャラクターの登場の仕方などにも注目してほしいですね。

――――プレイしていると、自然にニヤリとしてしまう感じですね。かなり魅力的な坂本龍馬になりそうですが、歴史的なエピソードは史実に沿ったものになるのでしょうか?

 時間軸的に細かく見れば、近すぎたり遠すぎたりする事件などもありますが、歴史で起こった大きなトピックは劇中でもしっかり扱っています。大政奉還や薩長同盟とかもちゃんと起こります。ただ普通には起こりませんが(笑)。「ストーリーの結末はどこになるんだろう?」と皆さんも話題にされているようですが、それはまだご想像にお任せします。

――なるほど。ということは坂本龍馬は“あの事件”で死んだりするのでしょうか?

 あまりにも有名なエピソードですし、実際起こるものは起こりますので、いきなり答えを用意してます。もちろん独自の解釈をしてのものですが、その点を楽しんでいただければと。「こういう解釈できたか!」とか、「全然関係ないと思ってたこの事件が、いわゆる歴史上でこれって言われている事件だったのか!」とか、さまざまな仕掛けを用意していますよ。

『龍が如く 維新!』

――それは歴史好きな人にはたまらない仕掛けですね。

 歴史を良くご存知の方なら、色々な反応をしていただけるでしょうね。今作は、脚本を読まれたキャストの皆さんの反応をみるのがとても面白かったです(笑)。

 幕末とか歴史ものに縁がない方でも「純粋にミステリーものとして面白かった!」とおっしゃっていただけましたし、歴史に詳しい方、例えば近藤勇役の船越英一郎さんなどは、こちらが舌を巻くくらい幕末史や新選組のことに詳しいのですが、そんな船越さんが興奮して「これが史実だったとしても不思議じゃない!」とおっしゃって下さったのは、うれしかったですね。

――歴史に詳しい人だと逆に思いつかないような、驚きの展開になっているということですね。

 詳しい方ほど、そういう感想を言ってくださいますね。そういう方いわく「歴史を調べれば調べるほど、史実など分からないものだ」と(笑)。言われてみれば、その通りですよね。今起こっている出来事ですら、当事者でもなければその真相など分かるはずもありません。

 要は、歴史ものを描く際で重要なのはリアルな時代・人物設定ではく、「リアリティを感じられる物語が描けているか?」ということなのだと思います。そういう意味では、現代劇の『龍が如く』を描く時となんら変わりません。

→“深い京都”を多彩なエリアで再現! 新たな“遊びも”?(3ページ目へ)

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