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2013年9月21日(土)

『タイタンフォール』開発インタビュー! 80年代SF映画と日本のアニメに影響を受けた巨大ロボット“タイタン”のディテール【TGS2013】

文:イトヤン

 千葉・幕張メッセで開催中の東京ゲームショウ2013(TGS2013)には、数多くの素晴らしいゲームがプレイアブル出展されている。その中でも特に、今年の“目玉”の1つだと断言できる作品が、マイクロソフトブースに出展されており、エレクトロニック・アーツが発売を予定しているXbox One/Xbox 360/PC用ソフト『タイタンフォール』だ。

東京ゲームショウ2013

 日本でも2014年に発売される最新ハード、Xbox One用のソフトという話題性もあるが、実際に試遊してみると、なによりそのゲームプレイがおもしろい! 具体的なプレイレポートは、こちらの記事をぜひ参考にしてほしいが、試遊してみてまず感じるのは、その操作感覚の気持ちよさだ。ダブルジャンプで建物の屋上に駆け上がったり、壁を蹴ってピョンピョンと飛び跳ねながら移動したりするスピード感は、これまでのFPSに対する既成概念をガラッと覆してくれる。

 このように、パイロットを操作しているだけでも十分に楽しいのだが、本作の醍醐味といえばなんといっても、身長10メートル近い巨大ロボット“タイタン”に乗り込んでのプレイだ。こちらはパイロットのような軽快さこそないが、代わりに圧倒的なパワーを堪能できる。足元にいる敵パイロットに向かって重火器の連射を浴びせたり、敵のタイタンに向かってダッシュで体当たりをぶちかましたりと、日本のロボットアニメさながらの、大暴れを繰り広げることができる。かといって、タイタンが無敵かというとそんなことはなく、巨大なボディが大きな的となり、敵パイロットからの集中攻撃を浴びると意外にあっさり爆発炎上してしまうといった具合に、そのゲームバランスも絶妙だ。

 本作に対する注目度は高く、ゲーム業界人の集まるビジネスデイでも、試遊の待ち時間が1時間を超える行列ができるほど。それだけでなく、筆者のようなゲームライターや、ゲーム雑誌の編集者といった、ふだんから発売前のゲームに接している人々の間で、「『タイタンフォール』はもうプレイした?」といった会話が交わされていることからも、そのインパクトの強さが感じられる。

 この『タイタンフォール』を開発しているのは、かつて『コール オブ デューティ』を制作した中核スタッフの一部が独立して立ち上げた新スタジオ“リスポーン・エンターテインメント”だ。ここでは、同社のコミュニケーション・マネージャーであるアビー・ヘップさんを直撃取材。ゲームの開発秘話から、日本のアニメに対するリスペクトまで、興味深いお話を聞くことができた。

■日本のアニメのロボットに負けないように、ディテールにはこだわっています

東京ゲームショウ2013
▲アビー・ヘップさん。

──リスポーン・エンターテインメントのみなさんは、これまでに『コール オブ デューティ』で第二次世界大戦の戦いを、また『モダン・ウォーフェア』で現代の戦闘を描かれてきました。ところが今回の『タイタンフォール』ではガラッと変わって、巨大ロボットが活躍する未来の世界が舞台になっています。いったいなぜ、未来の戦場という設定を選んだのでしょうか?

 私たちとしては最初から、未来を舞台にしたゲームを作ろうとしたわけではないんです。何か今までとは違うもの、誰も体験したことがないようなゲームプレイを味わえるものを作りたくて、さまざまな実験を繰り返していました。そうしていろいろなアイデアを試しているうちに、だんだんと未来的な要素が入ってきたんです。

──『タイタンフォール』でいちばん特徴的なのが、巨大ロボット“タイタン”の存在です。巨大ロボットは日本でこそおなじみのものですが、海外でこうしたものが登場するゲームが作られるというのは非常に驚きました。いったいなぜ、巨大ロボットを登場させようと考えたのでしょうか?

 タイタンも、最初は巨大ロボットではなく、兵士が身につける外骨格のアーマーのようなものとして、あくまで人間と同じ大きさで考えていたんです。そうした形でデザインを進めて、アーティストチームではその模型を作っていました。ところがある日、チームの1人がたまたま、その模型の隣に小さな人形を置いたんです。その人形との対比で、アーマーがまるで巨大なロボットのように見えた瞬間、「これだ! これでいこう!」とひらめいたんです。

 スタジオの人間はみんな、日本のアニメが大好きなんです。日本のアニメのように巨大なロボットに乗り込んで戦うというのは、他のどんな乗り物を操縦するよりもクールな体験だろうと考えました。そこから、巨大なメカと人間が入り乱れて戦うという、現在のアイデアが誕生したんです。

 実は、今年6月のE3で『タイタンフォール』を正式発表する前に、私たちが未来を舞台にして、巨大なロボットの出てくるゲームを作っているという情報が漏れてしまったんです。その情報が流れたときに、アメリカのゲーマーは「なんでそんなものを作ってるんだ」といった感じで、すごくネガティブな反応を見せていたんですよ。でもE3で実際にゲームを発表したら、アメリカのゲーマーからもすごく評判がよくて、逆に自分たちが驚いているんです。

──僕ら日本人の目から見ると、これまでに欧米でデザインされた巨大ロボットは正直言って、カッコ悪いと思っていたんです。でもこのゲームのタイタンは、すごく洗練されたデザインでカッコイイですよね!

 それは開発スタッフとして、本当に嬉しい言葉です。ありがとうございます。私たちの優秀なアーティストが、がんばってデザインしてくれたおかげですね。

 『タイタンフォール』のビジュアルに影響を与えたものは2つあって、1つは1970~80年代のSF映画です。そしてもう1つは、日本のアニメに登場するメカです。日本のアニメに登場するメカは、デザインのディテールがすごく細かいですよね。私たちのアーティストも、なんとかそれに近づきたいと思って、タイタンのディテールを徹底的にこだわってデザインしているんです。

──そういえば、今回の試遊で登場したパイロットの名前の中にも、日本風の名前になっているキャラがいますよね。あとプレイしている際に気がついたのですが、ステージのところどころに、キレイなピンク色の花が咲いている木がありますよね? あれはひょっとして、桜の木ですか?

 その通りです! パイロットの名前や桜の木だけではなく、このゲームの中には日本をリスペクトしたものがいくつも採り入れられています。街のあちこちには日本の文字が書かれた看板がありますし、このゲームに出てくる武器のメーカーは、日本の実在する企業のロゴを使わせてもらっているんです。

■人間とロボットが戦っても楽しめるゲームバランスになるよう調整しています

──巨大ロボットが登場するゲームというのは普通、ロボットはすごく強くて、人間が立ち向かっても一方的にやられるというイメージがあります。でもこのゲームでは、タイタンはもちろん強いんだけど、パイロットでも上手に立ち回って戦えばなんとか倒せるという、その強さの関係が絶妙ですよね。

 マルチプレイヤーゲームでは、ゲームバランスはなによりも重要なカギになります。私たち開発スタッフは毎日ゲームをプレイして、バランスの調整を続けています。もしロボットが圧倒的に強くて、人間がただ弱いだけなら、誰も人間で遊ぼうとは思わないですよね? タイタンvsタイタン、パイロットvsタイタン、パイロットvsパイロット、どの組み合わせで戦っても楽しめるようなバランスを取ることは、すごく大事なことだと思います。たとえばマップの作りにしても、巨大なメカでも自由に動き回れるような広さを持たせつつ、でも人間がうまく隠れて逃げられるように、複雑に入り組んだ部分も用意するといった具合に、細部まで考えながら作っています。

──今回の試遊では、一定時間パイロットでプレイすると、タイタンに乗り込んで戦うことができるようになっていて、双方のプレイをバランス良く楽しむことができました。実際の製品版でも、こうした形でタイタンに乗ることができるのでしょうか?

 正直なところ、最終的に完成するまでは毎日改良を繰り返していて、時には重要な部分まで大きく変更されることもあるので、最終的なバージョンがどうなるのかというのは、なんともお答えできないんです。でもタイタンとパイロットの双方を、今回試遊してもらったバージョンと同じぐらい、バランス良く遊べるような形にはしたいと思っています。

──『タイタンフォール』には通常のゲームのようなシングルプレイのキャンペーンは存在せず、“キャンペーンマルチプレイ”という形式になっているそうですが、これについてもう少し詳しく教えてください。

 “キャンペーンマルチプレイ”は、通常のマルチプレイよりもストーリー性の強いもので、ただ単に対戦を繰り広げるのではなく、それぞれのサイドに対してストーリーに沿ったミッションが与えられています。たとえば今回試遊できるミッションでは、一方の側は地上にいる1人のパイロットを救出することが目的となっていて、もう一方の側はそれを阻止することが目的です。

 こんなふうに、どちらのサイドでプレイしても、それに合わせたストーリーが用意されていて、それぞれに関わるNPCなども登場してきます。ですからマルチプレイといっても、シングルプレイが好きな人でも十分に楽しめる内容になっていますよ。キャンペーンマルチプレイに関しては、まだあまり詳しいことはお話しできませんが、今後少しずつ、情報を公開していこうと思っています。

──なるほど。登場するメカやステージのデザインを見ていると、このゲームの背景には非常に壮大なストーリーが存在しているように感じられるのですが、今後ゲーム以外のメディアで、そうしたストーリーを展開していく計画はありますか? 日本のアニメの影響を受けているとのことですが、たとえば日本でアニメ化やマンガ化するというのは?

 今のところはゲームを作ったり、ゲームに出てくる世界観を構築したりすることが忙しくて、それ以外の展開を考える余裕はないですね。実際のところ、そういった展開のオファーもいくつか来ていますが、まだ具体的な予定はありません。自分たちが作り上げてきたゲームの世界観を大事にするというのが最も重要なことですから、それを尊重してくれるような素晴らしいパートナーと出会うことができたら、その時はぜひ、ゲーム以外の展開にも挑戦してみたいですね。

 アニメ化やマンガ化といえば、こんなエピソードがあるんです。実は日本のファンが、『タイタンフォール』の世界を日本のアニメ風に描いたイラストを、私たちのところへ送ってきてくれたんです。この絵を描いてくれた人は、一般公開日にTGSの会場まで来てくれるそうなので、開発スタッフを代表して、ぜひお礼を言いたいと思っているんですよ。

──それはスゴイですね! もう1つお聞きしますが、ゲームに登場するタイタンのプラモデルや、アクションフィギュアを発売する予定はありますか?

 それについては“ぜひ、お楽しみに”とだけお答えしておきます(笑)。

──了解しました(笑)。では最後に、日本のゲームファンに向けて、メッセージをお願いします。

 『タイタンフォール』をTGSの会場に出展することができて、本当に嬉しく思っています。なんといっても日本は巨大ロボットの国ですから、もしこの地でゲームの評判が悪かったら、それはすごく恥ずかしいことだと思うので、スタジオのみんなも非常に心配していました。ところが、こうやって大勢の人たちに注目してもらえて、心から喜んでいます。1人でも多くの日本のみなさんに『タイタンフォール』を遊んでもらって、その感想をぜひお聞きしたいと思っています。

──ありがとうございました。

■東京ゲームショウ2013 開催概要
【開催期間】
 ビジネスデイ……2013年9月19日~20日 各日10:00~17:00
 一般公開日……2013年9月21日~22日 各日10:00~17:00
【会場】幕張メッセ
【入場料】一般(中学生以上)1,200円(税込)/前売1,000円(税込)
※小学生以下は無料

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