2013年11月5日(火)
『ドラッグ オン ドラグーン3』鬼束ちひろさんインタビュー。歌詞や曲に込めた想い&『ニーア』の岡部さんと作る新たな世界とは?【電撃DOD3】
スクウェア・エニックスが12月19日に発売するPS3用ARPG『ドラッグ オン ドラグーン3』。今回は、そのテーマソング『This Silence Is Mine』を手掛けるアーティスト・鬼束ちひろさんと岡部啓一さん、プロデューサーである柴貴正さんへのインタビューをお届けします。
▲右から柴さん、鬼束さん、岡部さん。 |
楽曲のイメージは5分で生まれた!? 鬼束さんの目に咲く花は真紅のバラ!? など、直撃インタビューで明らかになる数々のエピソードをお楽しみください。
●【動画】ドラッグ オン ドラグーン3:セカンドPV●
【インタビュー参加者のプロフィール】
●鬼束ちひろ シンガー・ソング・ライター。2000年2月に『シャイン』でデビュー。TVドラマ『TRICK』の主題歌『月光』を収録したアルバムで、ゴールド・ディスク大賞を受賞した。2014年には初のバンドで全国ツアー開催が決定。
・鬼束ちひろオフィシャルホームページ:http://www.onitsuka-chihiro.jp
●岡部啓一 サウンドクリエイター集団・MONACAの代表。本作のクリエイティブ・ディレクターであるヨコオタロウ氏とは大学時代からの盟友。氏とともに作り上げた『ニーア』のサウンドは、多くのファンから高い評価を受けている。
●柴貴正 スクウェア・エニックス所属のプロデューサー。『DOD』シリーズすべてのプロデュースを務めている。その他の代表作に『ロード・オブ・ヴァーミリオン』シリーズなどがあり、ダークファンタジー作品に縁が深い。
●松下忠嗣(TDB) 今回のインタビューの聞き手。電撃PlayStation、電撃オンライン所属の編集。本作はもちろん、『DOD1』『DOD2』『ニーア』の記事を担当してきた、生粋の紅い瞳の信者。
■ゼロの持つ“白”のイメージが盛り込まれた『This Silence Is Mine』
――さて、“電撃DOD3”ではおなじみとも言える『DOD3』スタッフロングインタビューです。今回は、本作のテーマソング『This Silence Is Mine』を歌う鬼束ちひろさん、アレンジを手掛けた岡部啓一さん、そして柴プロデューサーにお話をお聞かせいただきます。
まずは、鬼束さんと『DOD3』のコラボレーションが実現した経緯を、柴さんから教えてもらっていいですか?
柴:最も大きな理由は、鬼束さんであれば、今の時代にぴったり即した楽曲を作ってくださると感じたからです。今回のテーマソングは、タイアップで相乗効果を狙うというマーケティング的な部分は抜きにして、“しっかりと『DOD』の世界観を描いてくれるアーティスト”にお願いしたいと思いました。
ちゃんと『DOD』の世界観にあった人は誰だろうと考えた時、作り上げる楽曲の雰囲気や、昨今の活動の方向性を見て、鬼束さんしかいないと感じたんですよね。
――真っ先に浮かんだ、という感じですか?
柴:ええ。実は以前、『DOD』ファンの方が既存の音声や映像などを再構成して作った、いわゆるMADムービーを、ニコニコ動画で見たことがあるんです。その中で、鬼束さんの『私とワルツを』という曲を使った映像が、『DOD』の世界観にとてもマッチしていると感じまして。もう、ぜひお願いしたいと頭を下げました。
――僕も、その映像は拝見したことがあります。あれはファンの皆さんからの評価も高かったですよね。
柴:そのようですね。作品とも、ファンとも親和性が高いというのは、実はすごいことなんですよ。
――では、鬼束さんがコラボのお話を聞いた時の印象はいかがでしたか?
鬼束:来たか、と。ついにやって来られましたか、と。こんな感じですね(頭上にグッと拳を握る)。
柴:それ、完全に今からしかられそうな感じなんだけど(笑)。
――かなり気合が入った感じ、ってことですかね。ちなみにこの『This Silence Is Mine』ですが、セカンドPVを拝見した感じでは、とても静謐(せいひつ)な曲に思えました。曲全体を通して、このイメージなんでしょうか?
岡部:セカンドPVに使われた部分だけを切り取って聴くと、そういう印象を抱くかもしれませんね。でも、実際は少し違うと思います。曲自体は7分以上ありますから、いろいろな表情が盛り込まれていますよ。
――7分以上? 超大作なんですね!
鬼束:でも、私が作る曲はそれくらい長い曲ばかりですよ。
▲鬼束さんの楽曲『This Silence Is Mine』は、セカンドPVのBGMとして採用されている。 |
岡部:今回の楽曲では、僕はアレンジとして参加させてもらいました。今回、僕が『DOD3』の曲を手掛けるにあたって、すごく大事にしているのは“コントラスト感”なんですよ。楽曲ごとのメリハリというか、同じ楽曲でもアレンジが変わったり、使われるシーンが変わることによって印象が変わるように作っています。
鬼束さんの曲も、全体の流れの中で、1コーラス目と2コーラス目以降でコントラストが付くよう、意識してアレンジさせてもらったつもりです。
――コントラストを意識……それだけメリハリが重要だってことなんですかね。
岡部:そういう言い方もできますね。あとは、鬼束さんからいただいたデモはシンプルというか、あまり色づけがされていない状態だったので、僕としてはそこから鬼束さんのイメージを残しつつ、どうやって『DOD』の世界観に近づけるかを意識しました。
この『DOD3』の世界観と、鬼束さんが生み出す世界観を近づけることこそが、僕がこのお仕事を任された最大の理由だと思ったので、全力を注ぎました。
鬼束:私的には、ちょっと言い方は変ですけど、心が寒い感じがする曲になってると思ってます。
岡部:そうですね。寒いというか、空虚というか。少しネタバレになりますが、この楽曲は2コーラス目に入ると一気に動きが出てくるんですけど、それなのにどこか退廃的なんですよね。“激しいけど空虚”ってイメージになっていると思います。
――それこそが、岡部さんが思い描く『DOD3』のイメージであり、鬼束さんの生み出す世界のイメージでもある、ってことなんですね。
柴:鬼束さんから出た“寒い”って言葉は、今初めて聞かされた単語だったりするんですが、僕的にはものすごく納得ですね。7分ある楽曲の中で、いろいろな寒さが描かれています。
PVに使われている部分は、静謐な寒さ。対して、2コーラス目以降は激しい寒さというか。日本語的にはおかしいけど、“熱い寒さ”を感じられると思いますよ。
――動きのある寒さ、ってところでしょうか。
柴:そう。岡部さんの言う通り、『DOD3』にもそういう側面はあるので、まさにピッタリなテーマソングに仕上がってます。
▲7分以上にも及ぶという『This Silence Is Mine』。セカンドPVに使用されている1コーラス目は静かなイメージだが、2コーラス目に入ると、楽曲に大きなうねりが生まれるとのこと。 |
――たしかに、セカンドPVにも異常なほどマッチしていましたからね。そんなこの『This Silence Is Mine』ですが、楽曲を色でイメージすると、どんな色が浮かんできますか?
鬼束:(ゼロのイラストを指さして)この色。
――ゼロの色……白系ってことですかね?
鬼束:そう、白とかシルバー。この子を映像で見た時、髪が透き通るように真っ白で、すごく印象に残ったから、そういうイメージなのかなって思った。
――事前にシナリオやキャラの設定などはご覧になられていたのでしょうか?
柴:そうですね。まだプロットレベルのものではありましたが、説明はさせてもらっています。
――なるほど、そのうえで、モチーフとしてゼロの存在は大きかったと?
鬼束:はい。映像を見た時は、「この子は心が死んでいる」って思った。
柴:心が死んでいる……なるほど。そう解釈されたんですね。とても興味深いです。
――妹たちと戦うために、心を殺しているという側面もあるということですかね。
岡部:ちなみ僕も、基本的には白系の色をイメージしています。モノトーンだけどコントラストが高いというか。ただ、鬼束さんの歌は単色ではとても表現できませんし、僕としても、同じ白でも場所によって彩度が違うなど、要所要所でアレンジを入れたつもりではあります。
鬼束:あと、面積が広いですね、この曲は。
――面積……ですか?
鬼束:そう。面積。
岡部:あぁ、ちょっと抽象的かもしれませんが、僕は鬼束さんがおっしゃっていること、すごくわかります。僕は楽曲を作る時に、風景的なものというか、ビジュアルイメージを頭に思い描きながら作業していくことがあるんですよ。
そういう意味では、今回の曲はものすごく面積が広い、開けた荒野のイメージが浮かぶんですよね。地平線まで見渡せるような大地が、言葉通りに荒涼としている印象だったんです。
――なるほど。それは岡部さんと鬼束さんの共通認識ってことなんですね。
柴:実は、僕も楽曲を聴いた時、同じような印象を抱きました。色に例えると、まさしく白。個人的には、ここで言う“白”と“面積の広さ”って、まったく同義だと思います。
漠然と広い白があるんだけど、よく見るとその上にはさまざまな色が重ねられている。それでも全体の色は白なんだけど、分厚さはものすごい。そういうイメージです。
――油絵で、白の上に多数の色を重ねていくとか……そんなイメージですか?
柴:多数の色というよりは、カテゴリ的には同じ“白”という色なんだけど、受ける印象がまったく違う色が重なっている印象です。ひとくくりに白と言っても、少し血を浴びて赤が混じった白とか、いろいろあるわけじゃないですか。
そういう意味で、岡部さんが言った“コントラスト感”という言葉は、ものすごくしっくりきますね。
→『This Silence Is Mine』に込めた想い(2ページ目へ)
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